復讐するは我にあり(※誤用されることが多いですが、聖書では神のセリフです)
ギャグ回。マジでただのギャグ回。
第一印象がかなり陰気だった氏家先輩ですが、話してみると中々どうして、明るくてさっぱりした人でした。というかもう、多田先輩と話してる時とは、別人です。表情が。
こんな優しい人にあんな形相をさせるなんて、多田先輩は一体何をやったんでしょう?二、三回襲いでもしないと、私が垂れ目を釣り目と誤認するような大事故は、起きないはずなんですが。
「遠藤ちゃん、おはよー」
何か砕けてますし。
「おはようござ……って、十一時ですけど、どうすれば?」
「ふふ、細かいのね」
「早くないから『お早う』はどうなのか、と」
「ああ、そっち」
何ですかこれ。私が突っかかってるみたいじゃないですか。ああヤダヤダ、こんなやたらな淑女と一緒にいると態度がデカくなっちゃいます。メンタルヘルスに悪いです。
「まあ、そういう風な、言葉に対して謙虚な態度は嫌いじゃないけれど」
そう来たか!その手があったか!あなたは……天使か何かですか?それとも私に気でもあるんですか?
いや、ほざき過ぎましたね。多田先輩向きにだけ、キツいんでしょう。大体分かります。
ところが。
はい、ビックリしましたよ、あれには。
「おはよう、多田くん」
「おお、おはよう」
廊下では普通に挨拶してます。
「あのね、多田くん。課題というのは『提出するもの』なのよ。来年物理を選択しないからと言って、今年捨てていいという理由にはならないわ」
「俺は説教が聞きたい訳じゃない」
「あら、そう。ごめんなさいね」
主文。被告、多田一郎を死刑に処す。過去の仕打ちにもかかわらず忠言してくれる同級生女子をなんだと思っているのか。
私が想像してたのとは、若干違う関係性みたいですね。これは気がかりです。
私たちの退屈も勤勉も、眠気も覇気もぜんぶ無視して、あっという間に三時間が過ぎました。放課後です。
前述したようにコの字型の校舎ですが、南側に開かれているので、私たちの「部活」が行われる「コの字の上の棒」部分は、「西棟」と通称されています。
……映画を見るだけなのに「部活」とは、おこがましいでしょうか。しかも……
「俺が見るのは日常モノだけだ、従って俺がアニメを見ていたとしても、俺は断じて萌え豚ではない」
「でも多田くん、逆に日常モノこそ、豚向け作品が多いんじゃない?」
「な、何を言うか……ひい、ふう、みい、いや待て、話し合おう」
「具体名を出すと筆者が垢BANされるかも知れないから、伏せ字でね?」
「はいそこ、メタ発言禁止―」
「あら谷山くん、あなた突っ込みのつもり?」
なんでしょうか、この地獄絵図は……。
「そして何故、お前までアニヲタ……」
「ふふふ、からかってあげようと思って、私なりに勉強したのよ」
「しまった、まつがった、俺はヲタクではない!」
「手遅れね」
「手遅れですね」
「手遅れです」
「お前ら、三人で一句詠むな……ッ!」
「字余り失礼しました」
「いいのよ、遠藤さん」
多田先輩、PCを開けてイヤホンをセット、『スター・ウォーズ3』を見始めました。「ノオオオオオオ」のヤツです。
背中こっち向けて、拗ねちゃってーヤダ可愛いんだからー、と、氏家先輩と一緒に、ひとしきり大声でからかってやりました。イヤホン越しでも聞こえたはずです。ちょっと申し訳ない気もしてきたので、背中に貼り紙したげましょう。めいざふぉーす、うぃずゆー。
体育祭実行委員会をキッカケにつるんでいた多田先輩と谷山君ですが、谷山君が入った映画研究会が廃部の危機とかで、無理矢理引きずりこまれそうになったそうです。
で、どんな風な騙され方をされたか、氏家先輩が犠牲者に。多田先輩にそれとなく水を向けたら、
「ああ、入部届の受理って、結構ザルなんだよな。珍しい名字だから、ハンコ屋で『氏家』探すときは苦労したけど」
想像以上のゲスでした……。
しかし!はっはっは、多田一郎、観念するがいい、です!お前が手口をゲロった以上、逃げ道はありません!あえて見逃してあげる優しい私でも、ありません!死なばもろとも、ミイラ取りは呪い殺してミイラにする、これミイラの掟。先週見た『ハムナプトラ』より酷いこと言ってますね、私。
「と、いうことで敗北者の守護聖人先輩、入部した感想をどうぞ」
「勘弁してくれ……」
むしろ永遠にギャグ回?




