校内秘境
遅くなりました!長月です!
私があれ以降、楽になったかというと、そうでもないのですが。逃げ場所くらいは見つかりました。もちろん、谷山くんには一言も話しかけていません。休み時間、廊下で多田先輩と、ふたこと、みこと話す程度です。
それが今日は、ちょっと違いました。多田先輩が、
「放課後、時間とれる?」
と、聞いてきたのです。ここで勘違いするほどオメデタくはありませんし、第一あんまり好みじゃないです。何って、彼が。
南に向かって開いた、コの字型の校舎の、西側の部分。「コ」で言うと上の横棒に当たる部分に、案内されました。
二階の用具室の横に教室があるなんて知りませんでした。すごくカビ臭いです。
美術の小坂先生が片付けを怠っている以外にも、理由はありそうです。日当たりはお世辞にも良いとは言えませんし、通気が悪いせいで埃が舞ってすらいません。試しに壁を人差し指でなぞってみると、あら不思議!意外と白いです。
「ところで先輩」
「どうした後輩」
「ここに来たのは、部活ですか?」
「ノーコメント」
部屋の前で立ち止まり、私は左を、多田先輩は右を見て話しています。向かい合うのではなく、お互いに顔を背ける格好です。何故ってこの部屋、明らかに怪しいというか……扉の脇の小窓に貼り付いてる人影が見えるんですが、曇りガラスだから誰だか分からないし、でもどうやら男子生徒のようだから何となく察しが付くのが余計嫌で……。
ピシャッ!!
木枠が歪んでいてガラガラと音を立てるはずの引き戸から、予想外の背筋が伸びるような音が。それを右手で押さえているのが、目の前に立っている少し背の高い、ポニーテールの女性でした。制服は高等部、バッジは多田先輩と同じ一年です。前パッツンって絶滅したと思ってました。
「さあ多田くん、ここで会ったが百年目!入部届け、書いて貰うわよ!」
「嫌だと言ったら?」
「そのときは」
唾を飲む、私と先輩。
「あなたを殺して――」
ちょっちょっちょっ――と待っ――いやいやいや、マズイですって。何ですかこの、使い所が間違ってるテンプレ――。
「私も――」
おお、予想がドンピシャリのようでお母さんは悲しいです・
「私も――じゃなかった、私が退部して、君が入部よ、多田くん」
「そもそも選択肢がなかった……」
「あら違うわ、私が退部するかどうか、その違い」
「ダメだ遠藤、日本語に訳してくれ」
「綺麗なお姉様、この子は置いていくので私は助けてください」
ふう、と溜め息をつく、その女。
「あのね多田くん」
「何だ」
「また、生け贄にするつもりだったでしょう?」
は?
金釘の行方は誰も知らない。




