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お悲しみが三つで済むんでしょうか?

色々やっちまった感があります by 長月

疲れます。あれ以来、クラス中の目線がうるさくてですね……。なんか違うのが一つ混じってる気もしますが。

自意識過剰ではないです。それは確か。私が不意打ちで振り返ると、みんな慌てて首を動かすんですから。


 ああもう、イライラします。だいいち湯田くん、聖母マリアとマグダラのマリアは全ての福音書に出てきますけど、それ以外にも二人、いくつかの福音書に「マリア」が登場するって知ってますか?今更言ってもせんないことですけどね。


だって君、ここ一週間学校に来てないでしょう?


 だからみんな、私のことイジメっ子みたいに扱うのやめてくださいよ?ね?


「ねえ、沼田くん」

「な――何でしょうか。い、今はあまり、すいません、持ち合わせがないので、勘弁していただけると――」

わーい。カツアゲだと思われちゃいました。次の授業の科目を聞きたかっただけなのに。めげませんよ。とか言って泣きそうかも。それに、クラスの仕事とかはあるわけで。

「あ、高橋さん。このプリント、誤植が――」

「ひっ!?ご、ごめんなさい、ごめんなさい、今から家に帰って直してきますからあああっ」

「いや、ちょ、ちょっと待って!今二十分休みだから、帰ったら授業に遅刻――」

高橋さんはロクに聞きもせずに、泣きながら逃げていってしまいました。うーん、元から気が弱いとは思ってましたけど、あれ程までとは……。だから止めてくださいってば、私の方を「うわー怖いわー」みたいに見るの。何もしてないのに……。


 しかし、ですよ?このまま高橋さんが、横浜市青葉区にある学校から、東京都は立川市の自宅まで、ホームルーム用のプリントを作り直すために帰ってしまったら?大遅刻です。当然、先生に事情を聞かれます。おそらく、泣きながら素直に答えるでしょう。

 そうなってしまったら――私の存在はクラス委員長をシバいた副委員長として、末代まで、じゃなかった、廃校まで語り継がれることに――。背に腹は代えられません(意味違う)、ここは最後の手段です。うう、これもやりたくない……。

ですが。やるしかありません、校庭に面した窓を開けます。眼下に高橋さんを発見。深呼吸の後、


「オイ、ゴルアアアアアアアア!高橋、戻って来んかあああああああああああ!!」

 自分でもびっくりするくらい、ドスが利いていました……。

 あーあ。私も学校、休んでいいですか?

あ、高橋さん、その場に崩れ落ちちゃった。えーと。私が行っても逃げられるでしょうし。誰かに頼むわけにもいきませんし。


何だ、気絶してますよ。

後ろで誰かが、クスっと笑った気がしました。


しかたないので、高橋さんを保健室まで持っていきます。引きずるのも何ですし、完全に脱力している人間をおぶる事は不可能に近いので、担いでいきます。高橋さんが小柄で助かりました。スカートの丈も相対的に長くなるので、これなら担いでも心配ありませんしね。


そのまま保健室の引き戸を開けると、養護教諭の島田先生が、ぽかんと口を開けていました。綺麗なおねえさんなのに、マヌケ面で台無しです。

「え……遠藤さん、その……とりあえず放課後、私とあなたと担任の橋本先生で、面談しましょうか?――あ、でもカウンセラーの方のほうが、良いかしら――」

 ええええ――?こっちまで話が行ってたんでしょうか?親が候補に入っていないだけマシなものの、酷い誤解を受けていました。

「お気遣いどうもっ!」

島田先生の腕の中に高橋さんを捻じ込み、教室にダッシュで引き返します。


 息を切らして教室に逃げ戻ると、

「あ。遠藤、お前――」

何で?!何で担任の橋本先生、ここにいるんですか?授業さぼって歌舞伎見に行くんじゃなかったんですか?この無精髭ジャージ古文教師!!

そういえば、昨日ニュースでやってましたね、歌舞伎役者が舞台装置の事故で怪我したって。もしかして……。まったく今日の私、ついて無さすぎです。


 テンプレというか余りにもベタですが、屋上行きますか。


 階段を登り切って屋上階のドアを開けると、男子生徒二人が話し込んでいました。ひとりは、私のクラスの谷山君……で、もうひとりは?

「ああ、噂をすれば何とやら、だな、ほら。アイツが来たぞ、谷山」

あの制服は――高等部の人ですね。襟のバッジで、一年生だと分かります。あの顔、見たことが、あるような、ないような……。谷山くんとは親しげな様子です。部活が一緒とか、かもしれません。


「あー、面白いよな、君。いやいや他意はないよ?でも、ホント……うくく」

何ですか馴れ馴れしい。むー、でも、湯田君のときと違って、気持ち悪いと感じない自分が癪です。この先輩、飾りっ気皆無ですからねー。性格ひん曲がってそうなのに、口は素直みたいです。

「一方的に笑われるのは、その……腹が立ちます」

「いきなり辛辣だね。あと、うつむき加減の流し目で恥じらいを見せてれば何言っても許される訳じゃないよ?」

 ばれましたか。

「失礼しました。虫酸が走ります」

 正面切って言ってやりました。

「酷くなってるし……」

なにがし先輩、苦り切っています。


谷山くんの目尻がダダ下がりです。すっかり上気した面持ちで、鼻息も荒く――あ、よだれ――。やだ気持ち悪い。どうしたんでしょう?


正体不明先輩が唐突に、手を差し出してきました。

「俺は、多田。多田一郎ってんだ。よろしく」

 ちょっと待ってくださいね。多田、一郎。ただ、いちろう。タダ……。ヤコブの子?

「あ」

「どうした?」

「違う方の、ユダ……」

 先方も気づいたようです。ゴキブリホイホイに掛かったヤモリの死体でも見るような顔で(見たことあります。そして二度と見たくありません)、やめてくれ、と頭を掻いていました。


そもそもこれ、続くのか、という……金釘、頼んだ

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