智也のものがたり
「快晴の空!溢れる熱気!まさに夏…で、誘ったあんたが開始10分で日陰IN、その後も手伝う気すらないとはどういう了見ですかねー紫藤先輩…」
少年…智也は汗をダラダラとかいた暑苦しい格好のまま日陰で涼む裏切りものをジト目で見つつそう言った
「ん?私は元々お前をこき使いつつ内申点を上げるのが目的だから…監視がなければサボるに決まってるだろ?」
日陰にて涼む少女…というよりは女性に分類されるであろう彼女、紫藤美月は明らかに間違ってると周囲からツッコミがくるであろう発言をする。が、しかし今この場にいるのは紫藤及び智也のみなので智也賛同を得られるはずもない
「いやいや、今一瞬あんたならそうだろうね?とか思ったけど明らかにおかしいから!?」
「えー、智也・えっち・ストレイジャック君ならできる!元気があればーなんで」
「それ以上はなんかいけない気がします。あとミドルネームは福田であってえっちではないですしおすし…」
美月の発言に顔を若干赤くして智也が反論する。と言っても力なき反論はからかう側を過熱させるだけなのは古今東西変わることがないのもまた事実、故に…
「あっれー?智也君はえっちじゃなかったかー?それはごっみーん☆でもえっちなことも興味あるよね?ね?」
「ッ~!?」
智也に急接近する美月、当然のことながら茶化しているだけだがまぁウブなピュアボーイであるともなりくんじゅうごさいにそのようなことわかるわけもなく翻弄される…が、そのとき…
「義姉さん、また智也を弄ってるの?今はボランティア中なんだからしっかりしないとダメなのに…」
校舎の角から美月を義姉さんと呼ぶ少女、紫藤アイリス(しどう あいりす)が呆れ顔でこちらへ歩いてくる
智也は咄嗟に「ヘルプミー!」と叫ぶも凄くさげすんだ顔で見られたので押し黙った。ちょっと視線が気持ちよかったのは内緒である
「あれ?アイリスちゃんだー!どしたのー?」
「どしたのー…じゃないわよまったく、義姉さんが担当分の量の割りに戻ってくるの遅いって聞いたから何かあったのかと思って様子見に来たのよ」
「なるほどー…智也君とお姉ちゃんがラブってないか心p「ア゛…?」ヒッ…」
美月の言葉はアイリスの視線+ドス声によって遮られる
「とまぁ冗談はともかく…こっちも早いとこ終らせましょう。来る途中で見た感じだともう数十分で全体が終りそうだったわ」
「いえっさー♪」
「OK,やるとしますかねっと…」
アイリスの参加で2人もやる気を取り戻した(片方はやる気以前の問題だったが)ことで清掃活動は思ったよりも早く終った
「と…これで最後か…」
智也が空き缶をポイっと袋に放り込む、そして彼ら3人は集合場所へと移動。清掃のまとめ役のありがた迷惑なお話(5分程度)を参加者全員で受けた後でお弁当の配給と同時に解散となった
そして公園にて、ささやかなお疲れ様会となるはずだったが…
「そういえばさ、智也ってなんで名前そんなに厨二っぽいんだ?」
というクラスメイトAからの凄くアバウトかつ失礼な質問から再び智也ピンチな状況へと追い込まれ始める…結果…
「智也の家族って多分外人に殺されたんだよ。それでその殺した外人に引き取られたとか…」
「いや、やっぱここは養子だろ。実は智也の本当の親の愛弟子が引き取ってくれたとかさ」
「えー?でもそれ面白くなくない?」
「おま…面白いとかで智也の人生きめんなよー」
「だからさ、実は智也はいいとこの息子さんでー」
「え…?いや、別に対した理由じゃ…」
まぁ当然のごとく智也は混乱した。大いに混乱した。その結果さらに収拾がつかなくなり…
「智也は死神のハーフ」
「智也は実は亡国の王族で反乱を企んでる」
「智也と紫藤はデキてる(確信)」
「智也爆発しろ」
などなどの根も歯もないことが飛び交う謎の空間へと公園は変わっていた
「ちょっと待って、今私の名前出たわよね?わたしがなんですって…?」
その状態に希望をもたらすで可能性のあるアイリスの出現に智也はまたも期待に満ちた目でアイリスを見るもさっき同様さげすんだ目で見られ俯く。べ、別に蔑んだ目で見てほしいって思ってるわけじゃないんだからね!
「え…いや、誰だよさっき言ったの…」
「いや…俺じゃないって…多分あの辺から…」
「はぁ?なんで俺らなんだよ、というか紫藤目が怖いって…ちょっと落ち着こうぜ?」
「私は冷静、ただ誰が言ったか知りたいだけ…OK?」
「「「OK…(震え声」」」
もうこれなんてアイリス無双だよ、って感じの状況である。その後はアイリスが1人ずつお話(尋問)して言った松林君を言葉で弄り倒したことでこの事件は解決した。その後数日松林君は学校を休んだけど…
「と、いうことが学校であったんだよ…」
家に帰り義父…マイケル・ストレイジャックに晩御飯のついで感覚で今日あったことを告げる智也
「それはワタシのせいじゃないのかい智也?」
「ん?マイケル叔父が悪いわけではないし…俺は気にしてないから笑話だよ。というか改めてアイリス凄いなーって思った話的な?」
こともなさげにそう答える智也、マイケルは驚いたようなあきれたような表情になり続けて口を開くと「アイリスちゃんがすごい?」と智也へ尋ねる
それに智也は頷くと「ちょっと待ってくれ…まとめるから…」とマイケルに確認をとり頭を捻り、そして目を開き再びマイケルに向かいあった
「そう…なんていうかさ、あいつは俺と違って物怖じしないんだよ。集団が相手だろうが美月さん相手だろうが同じって感じかな?」
その言葉に「あぁ…」とマイケルは得心がいったように手を叩く
「つまりアイリスちゃんにとっての普通に出来ることが周囲、というか今の議論だと智也にはできないことだから凄いと思ったってことかい?」
その言葉に頷く智也にマイケルは「だけど、それならこうも考えられるね」と続け、智也が興味をもったところで語る
「アイリスちゃんから見た君も同じかもしれない。ということさ。例えばだが…キミから見た美月ちゃん。彼女にもきっと何か君が凄いと思える部分があるのではないかな?」
「紫藤先輩に…?あ…」
そのマイケルの言葉で智也は一つ尊敬というか凄いと思える部分があったことを思い出す。紫藤美月先輩のあの図々しさ、アレはきっと自分では真似できないしやろうとも思わないものだったからだ
「ほらね?そしてだ、そこから踏まえて考えていくと…人は誰しも己だけ…ではないにしても周囲とは違う長所をもっているということなんだよ」
「誰しも…でも実際に長所がなくて悩んでいる人もいるぞ?俺もそんな感じだし…」
思いもよらないマイケルの言葉で悩む智也、だがその智也の言葉にマイケルはかぶりを振ると一言「智也はいいとこあるよ」と言った
智也には思いもよらない答えではあり「どんなとこ?」と子供のように…子供だが聞き返す
「そうやって…他の人の長所を認め、受け入れれるところ」
「それは長所なのか…叔父…」
「ふふふ…コレが案外自分にないものを相手の中に認めるというのは難しいものなんだよ智也、だから誇っていい。それはきっとキミの長所だ」
「そっか…俺の長所…か…」
嬉しそうにする智也、それを暖かく見守るマイケル。文字にするととても親子にはみえないし本当に家族として血が繋がっているわけでもない。だがたしかな絆を感じられる一日なのであった…
ー完ー
ーあとがきー
書いてみたくなった。書いてみたくなった。大切なことなので二度言いました。
というわけであとがきです。拝読感謝です皆さん。第一作ということでまずは思うまま、筆の乗るままに書いてみました。
なんというか…どうしてこうなったんだろうなという感じです。ただ作ってて楽しかったのでまた作るかと…そのときはまた読んでいただければ幸いです。それではまた…