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仲良くするための三つの計画

Side Eve. ~坂崎 唯舞~


 負けるか!

 そんな意気込みで今日一日糸目君に付きまとう。否、糸目君と仲良くなる計画を考えていた。理由? 気になるからっ!

 が、強い! 何これ、思いもしない返事が返ってくる? 本当はさ、気軽にリオなんて呼んでみちゃったりしたいけど、照れるんだもん、しょうがないでしょ。でも、仲良くなれたらリオ君とかリオとか呼び捨てにしてやろう。

 っていうか、名前教えた時に一瞬見せたあの表情はなに? 度のきつい眼鏡かけてても分かるぐらい変わったよ? そんなにも変ですか? いや、確かに変って知ってるよ。だって唯々諾々と舞文曲筆って変だもんね。でもさ、アノ人にそう言われたせいでついこっちを使ってしまうんだよ。だから、あの表情は今後一切やめてほしいです。


 そして第一の計画『教科書を見せてもらってなんだかんだで仲良くなろう』計画。

教科書なんて全部机の中に突っ込んでいるから持っているのだけれでも、授業中に絡むにはこれが最善なのだ。教科書忘れる女とか思われても仕方がない。

 そう決意し、アタックしてみたものの……教科書は見せてもらえず、やってない問題を解け、と先生に怒られる始末。唯一の救いが、糸目君に差し出されたノートだけでした。


 第二の計画『わからない問題を糸目君に聞いて「それぐらい自分で解けよ」「えー、わかんないから無理、教えてー」』計画。

 惨敗。普通すんなり渡す? さっきは名前呼ばないと教科書かさない、って言ってた人が普通渡す?

 辛いよ、もう辛いよ。相手が強すぎる。


 気を取り直して第三の 計画『ハプニングに巻き込まれよう』計画。

 とりあえず、学校の中を案内でもしてみよう。ついでにお昼ご飯を持ってきてないから食堂で食べればいい。これは四時間目に必死になって考えた計画だから、少し自信がある。

 では早速、声をかけよう。


「糸目君、隣の席になったのも何かの縁だよね。その縁にあやかって、学校の中を案内しようと思ったんだけど。……駄目?」


 また沈黙か! ホントこの沈黙だけはやめてほしい。駄目なら駄目って言ってください!


「……まあ、良いけど。昼飯は?」

「えっと、私忘れちゃったから、食堂で食べようかなぁって……」


 そしてまた沈黙。なに、沈黙入れないと喋れない人なの?


「……ん、じゃあ、ちょっと待って。用意する。俺、弁当だからさ」

「え?」

「行こうっつってんの。誘ったのはそっち。おーらい?」

「え? 本当?」

「少なくとも、こんなつまらないウソをつく趣味はない」


 うわ、嬉しい。普通に嬉しい。まさか、一緒に行ってくれるとは全く思っていなかった。てっきり「は? 俺はここで食べるから勝手に食堂に言ってこいよ。つか、学校案内とかいらないし」とか言われると思っていた。なんかごめんなさい。


「じゃあ、いこう!」


 やった!! なんだか仲良くなれる予感がします。糸目な神様ありがとうございます!

 うかれた気分で食堂まで行くまでの間も学校案内をする。


「アレは、四百メートルのトラックが引けるぐらい大きいらしいグラウンド。普段は二百メートルしか使わないんだけど、たまに陸上部が四百メートル引いたりするんだよ。私は普通ぐらいだと思ってたんだけど、陸上部の子が四百メートルひけるグラウンドなんで滅多にないって言ってた」

「へぇー」


 あれ、意外にも反応薄い。


「昼休みは三年生の先輩がサッカーしてたりするんだよ。だからこの道は結構サッカーボールが飛んでくるから危ないんだよ。ほら、今も飛んできて……ぎゃ!」


 痛い。先輩方、コントロールなさすぎです。顔面直撃です。いや、顔面に当ててるから逆にコントロールは良いのかもしれない。……そんなコントロールの良さは求めてませんよ、先輩方。


「おいおい、大丈夫か?」


 おお! 糸目君が心配してくれている!


「うん、大丈夫だよ。よくあたるから」

「うわっ、また唯舞ちゃんに当たった!」


 グランドから先輩方が叫ぶ声が聞こえる。いつも当たるから、先輩方には名前まで覚えられてしまった。これがまた何とも言い難い。


「私、基本的に周り見てないからよく当たるんだよね……ホント痛いよ。まあ、運動神経はいいほうだから当たった後はこけたりしないし、血が出ないようにはしてるけどね」


 本当は運動神経を押さえているせいで反射的なことができないだけで、血が出ないのは全力で血を出さない努力はしているから。痛みを感じた瞬間に身を引けば、いくらか衝撃は吸収出来るもんね。

 でも、そんなことは一般の人は知らなくていいからごまかしておく。


「先輩達、気を付けてくださいよ!」


 そう叫んでその場を後にする。


「えっと、血は出てないみたいだけど……ほんとーに大丈夫なのか?」

「大丈夫だって」


心配されるのがこれほどに嬉しいとは思わなかった。



「食堂についたよ。何食べよっかなー」


 今さっき辿り着いたこの食堂は、小奇麗だけど結構狭い。でも、狭いわりにはメニューが豊富で……あった!  やっぱり、サラダ定食だよね。こんなのもある。

サラダ定食を頼んだ後、先に座って待っていた糸目君の前に座った。


「何だ、そのレタスとトマトと米だけの昼飯は。栄養素的にもナンセンスだな」

「サラダ定食だよ」


 肉はなんか嫌だから食べないようにしている。奇跡的にこの学校にはサラダ定食なるものがあったので、見つけたときは嬉しかったのを覚えている。


「そっちこそ、それ何? ジュース?」


 ペットボトルに入った赤い液体。あんまりおいしくなさそう。


「トマトジュース」

「トマトっておいしいよね。トマトはレタスの次に好き」


 きた、久しぶりの沈黙! やめてとは言っていないけど、やめて! あまりにも長く続きそうなのでレタスを食べることに逃げた。

うん、やっぱりレタスはおいしい。ドレッシングなし最高。トマトは塩をかけたらおいしい。塩トマト最高。

そして、全く会話が思いつかない自分、最悪。こんなことになるなら、テレビでも見て話題収集しとくんだった。

ドンマイ自分、さようなら自分、どうせ自分は能無しです。


 そんな私は無言でレタスを食べることしかできなかった。


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