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クラスメイト☆

順応力が高いと言うか適応性が凄いのか……

アキュラはあっという間に地上の生活にも慣れてきている様だった。

隆斗が側に居なくても怖がる事もなく、クラスメイトとも仲良くなってきたのは良いのだが完全に隆斗が巻き込まてしまう。

その為、学校での隆斗は今まで以上に不機嫌になり何も話さなくなっていった。

昼休みに晶はいつも美春と晶の2人で過ごしていた。

「美春ちん、隆斗はいつも昼休み何処に居るのかなぁ」

「屋上じゃない。あいつ高い所好きだから」

「そうなんだ」

「そう言えば、晶ちゃん。今度の休みに友達を家に連れて行くって本当なの?」

「うん、皆が遊びに行きたいって」

「よく隆斗がOKしたね」

「う、うん。勝手にしろって言われた」

晶が少ししょんぼりとした。

「相変わらずなんだね」

「美春ちん、隆斗は何であんななの?」

「う~ん、あの事故のせいかな」

「あの事故?」

「そう、10年前に起きた隆斗の家族を巻き込んだ事故」


それは隆斗が7歳の時に起きた。

強い魔法力を持つ魔法使いは国に登録されていて有事の際には緊急招集される。

隆斗の母・茉莉亜まりあも例外ではなかった。

家族との旅行中に政府に呼び出されてしまう。

どこの国が発した物かはわからない強大な魔法の力が東都に接近していた。

それを打ち消す為に多くの魔法使いが対応を迫られていた。

そして何とか打ち消す事に成功したものの現場に居た隆斗と数人の魔法使い以外は帰らぬ人となってしまった。


「その魔力って、何処から来たのか判らなかったの?」

「調べたらしいけれど何処の国もそんな魔力を持っていなかったらしいの。噂では宇宙からじゃないかなんて話が出たくらいだから」

「宇宙って……」

「どうしたの?晶ちゃん」

晶が驚いた様な顔をしていた。

「何でもないよ」

「あれからかなぁ、隆斗があまり人と係わらなくなったの。魔法の力を毛嫌いする様になったんだけど。お母さんが凄い魔法使いだったから強制的に今の学園に入れられて適正検査では魔法力ゼロって結果が出て。悪戯半分で周りが魔法で隆斗にちょっかいを出すと必ず本人に魔法が返ってくるもんだから、ゼロの呪いなんて言われる様になっちゃたしね」

「それじゃ、隆斗は魔法嫌いなんだ」

晶が悲しそうな目をした。

「あっ、晶ちゃんは魔族だったよね。でも晶ちゃんの事を嫌いな訳じゃないでしょ」

「そうかなぁ。成り行きで一緒に居るだけじゃないのかなぁ」

「晶ちゃんは本当にそんな風に思っているの?」

「そんな事はないけど、直ぐ怒るし時々嫌々一緒に居るような気がする時がある」

「晶ちゃんは出会ったばかりでよく判らないかもしれないけれど、あいつはそんな奴じゃないよ。素直じゃなくて取っ付き難いけれど凄く優しい奴だよ。私が知っている隆斗は中途半端な気持ちで誰かを家に住まわせる様な事は決してしない人だもん」

「そうなんだ、もしかして美春ちんって隆斗の事……」

「ち、違うよ。ただの腐れ縁だよ幼馴染の。午後の授業が始まるから行こう」

「うん、そうだね」

晶は考えていた。

もしあの事故の魔法の力が宇宙からの物だとしたら、それは幼い頃に起きた事が関係するのではないかと。

だとしたら隆斗の家族を奪ったのは……

心の中に引っかかるモノがあった。


週末の土曜日、晶は朝からご機嫌で歌を口ずさみながら部屋を掃除していた。

「隆斗、これで平気かなぁ?」

「良いんじゃないか」

素っ気無い返事だった。

「ああ、まだ怒っているんだ」

「怒ってなんかない」

「それじゃ、ご機嫌斜め!」

晶が隆斗を睨んだ。

「好きにしろと言ったはずだぞ」

「それじゃ、お友達迎えに行って来ようと」

「はいはい、ご自由に」

隆斗は2階の自分の部屋に向かい階段を上がっていく。

「ベーだ。隆斗の意地悪」

隆斗は自分の部屋でベッドに寝転んで晶の事を考えていた。

襲われて怯えきっていた頃に比べるとかなり自由に過ごす様になったのはとても良い事だと思っている。

でも、人と係わるのを極力避けてきた隆斗にとって戸惑う事が多すぎた。

それにアクシデントとは言え契約と自分の特異体質のせいで一緒に居なければならない状態になってしまった事に責任を感じていた。


その頃、晶は数人のクラスメイトと学校の校門で待ち合わせをして家に向かっていた。

「ねぇねぇ、晶ちゃん。星君は今何をしているの?」

「たぶん、自分の部屋で寝ていると思う」

「あいつは授業中も居眠りか余所見しかしてないもんなぁ」

「でも、成績は良いんだよね」

「そうそう、不思議な奴だよな」

「人付き合い悪いしな」

「でも、何で晶ちゃんは星君の家に?」

「それは、両親の都合で私だけこっちに帰らなくちゃいけなくなってそれで」

「晶ちゃんのご両親ってどこに居るの?」

「今はイギリスだよ」

「へぇ、そうなんだ。そりゃそうだよな義理の妹だもんなぁ」

それは隆斗の爺さんから教わった事だった。

もし誰かに両親の事を聞かれたらイギリスに居ると、そして両親の都合で隆斗の家に住んでいると言えば納得するはずだと。

「着いたよ、ここがお家だよ」

「えっ! ここって、この大きな家が星君の家なの」

「うん、そうだよ」

「でっかい家だな、こんな家にあいつ1人で暮らしてたのか? 寂しくねえのかなぁ」


晶が門を開けて玄関に入る。

「ただいま。隆斗、連れて来たよ」

しかし、返事は無かった。

「どこ行ったんだろう?」

「お邪魔しまーす」

クラスメイトが家にあがる。

「うわ、綺麗なお家だね」

「凄いな。あいつが掃除してるのか本当に?」

家の中は白で統一され清潔感があってとても明るく綺麗だった。

「へぇ、ここがリビングか」

「晶ちゃん。あっちは何があるの?」

「ダイニングとキッチンそれにお風呂とその奥に使ってない部屋が物置になってるんだけど」

「晶ちゃんの部屋が見たいなぁ」

「2階だよ。普通だと思うけど」

「見せてもらえるかなぁ」

「うん、良いよ」

皆で2階に上がり晶の部屋に入る。

「シンプルな部屋だね。あっ洋服がいっぱいだぁ」

「恥ずかしいよ。あんまり見ないでね」

「あれ、どれも新品だね」

「うん、隆斗に買ってもらったの。あまり荷物持たないで戻ってきたから」

「ええ、星君が選んだの?」

「違う、違う、買い物に一緒に行っただけで美春ちゃんが選んでくれたんだよ」

「美春ちゃんって隣のクラスの?」

「うん」

「日向美春だろ隆斗の幼馴染だよ」

「そう言えば、星君の部屋はどこなの?」

「向かいの部屋がそうだけど」

晶が少し困った顔をした。

「べ、別に見せてなんて言わないよ。安心して晶ちゃん」

「ちょっと居るか覗いてみるね」

晶が隆斗の部屋のドアをノックする。

返事は無かった。

「あれ、寝てるのかなぁ。開けるよ隆斗」

ドアを開けると隆斗の姿はなかった。

「うわ、この部屋も整理整頓されていて綺麗だね」

「あっ、駄目だよ。怒られちゃうから」

「大きなベッドだね。ここで2人で寝てたりするのかなぁ」

「そ、そんな事しないよう」

晶が真っ赤になった。

その時、玄関から声がした。

「おーい。隆斗居らんのか?」

「あっ、お爺ちゃんだ」

「えっ、お爺ちゃんって誰?」

「隆斗のお爺ちゃんだよ」


晶が階段を駆け下りると追いかけるようにクラスメイトも1階に下りてきた。

「お、晶。お友達が来とったんか。すまんのう」

「隆斗に何か用なの?」

「用と言うほどでもないんじゃが。居らんのか?」

「うん。居ないみたい」

「おかしいの。さては上におるんかな」

「上って部屋には居なかったよ」

「部屋の上じゃよ」

「部屋の上?」

爺さんが晶に耳打ちをする。

すると晶が階段を駆け上がった。

「晶ちゃん、何処に行くの?」

「ゴメン、下で待ってて」

「ふぉふぉふぉ、晶は相変わらず元気じゃのう。さぁさぁ、そんな所に突っ立て無いでこっちで座ったらどうじゃ。隆斗の学園での様子でも聞かせてくれんかのう」

「は、はい」

爺さんに促されてクラスメイトはリビングのソファーに腰掛けた。


晶は2階に駆け上がり隆斗の部屋に入りベランダに出て辺りを見回した。

するとベランダの隅に梯子があるのに気が付いた。

梯子をゆっくり登り屋根の上に顔を出すとそこで寝転んでいる隆斗を見つけた。

「隆……」

名前を呼ぼうとして止めた、止めたと言うより隆斗が口笛で吹いている曲に聞き覚えがあった。

すると隆斗の方が晶に気が付いた。

「何だ、晶。友達と一緒じゃないのか?」

「隆斗。今、吹いてた曲って」

「何の事だ。それより何か用事じゃないのか」

「お爺ちゃんが呼んでる」

「後で連絡すると伝えてくれ」

「降りて来ないの?」

「俺の勝手だろ」

「そう、判った」

隆斗が寝返りをうって晶に背中を向けた。

「晶」

「何? 隆斗」

「キッチンのポットにコーヒーがあるから皆で飲んでくれ」

「うん、ありがとう」


晶が下に降りてキッチンにあるポットからコーヒーを入れて皆に出した。

「はい、コーヒーしかないけど」

「あっ、ありがとう」

「お、美味いな。このコーヒー」

「えっ、本当だ。晶ちゃんが入れてくれたの?」

「ううん。隆斗が準備してくれたみたい」

「隆斗の奴はしょうもないのう。わしがきつく言っておくからこれからも隆斗の事を宜しくの」

「いいえ、私達こそ無理矢理遊びに来ちゃったからね」

「そうだな、隆斗には悪い事したな」

それからしばらく色んな話をして、あまり長居も悪いからと皆帰って行った。


外が暗くなっても隆斗は降りて来なかった。

心配になり梯子を登り様子を見ると隆斗は気持ち良さそうに眠っていた。

「隆斗! そんな所で寝てたら風邪ひくよ。それに危ないよ」

「ふぁ~良く寝た」

隆斗が伸びをして起き上がった。

「危なくなんて無いよ」

「バーカ、バーカ」

「はいはい、馬鹿ですよ」

晶の側まで来た隆斗がいきなり屋根から飛び降りた。

「えっ、駄目!」

隆斗を見るとベランダに着地するのが見えた。

「うわぁ!」

晶がバランスを崩して梯子から落ちる、それを隆斗が難なく受け止めた。

「晶こそ危ないぞ」

「隆斗の馬鹿! 危ないから飛び降りたりしないで」

「ここは俺の家だぞ。目を瞑っていたってこんな芸当出来るよ」

隆斗が晶を降ろす。

「もう一寝入りするから、起こすなよ」

「ええ、お腹すいたよ」

「爺が晩飯のおかずか何か持って来ただろう」

「ええ、何で判るの?」

「俺に用事があったんじゃなくて、晶の様子を見に来たんだよ。それじゃ、おやすみ」

隆斗がベッドに潜り込んだ。

「一緒に食べようよ」

「俺は眠いんだ」

「それじゃ、私も寝る」

晶がベッドに潜り込んで来きて、しばらくすると クゥゥゥゥゥと可愛らしい音がした。

「腹が鳴っているぞ」

「鳴ってないもん」

「腹が減ったんじゃないのか?」

「大丈夫だもん。隆斗を食べるから、いただきまーす」

隆斗の肩に晶が噛り付いた。

「ん? いたきゅにゃいにょ(痛くないの?)」

「どうぞ焼くなり煮るなりしてくれ。俺が居なくなれば魔法力も戻って自分の家に帰れるかも知れないだろ」

「……」

晶が体を起こした気がしたが反応がまったく無かった。

「んん? どうしたんだ?」

隆斗が起きて晶を見ると肩を震わせて声を押し殺して泣いていた。

ヒック ヒック ウウウ…… ヒック ヒック ウウウ……

「晶、悪かった。俺が言いすぎた」

「隆斗の馬鹿!」

晶が隆斗の頬を思いっきり叩いて部屋を飛び出して行った。

「痛っ……やっちまった」

隆斗が部屋を出てリビングに向かうがそこには晶は居なかった。

「部屋か?」

2階に上がり晶の部屋をノックする。

ドスンと音がしてドアに何かを投げ付けられた。

「仕方が無い。飯でも用意しておくか」

キッチンに行き料理を始める。

しばらくして夕飯が出来上がり晶を呼ぶが返事も無く降りてくる気配も無かった。

晶の分をラップしてテーブルの上に置いて部屋に戻りベッドに体を投げ出した。


気が付くといつの間にか眠ってしまっていて、時計を見ると夜中の1時過ぎだった。

「晶は?」

心配になりドアを開けると廊下で毛布に包まって寝ている晶が居た。

「しょうがないな」

隆斗が晶を抱き上げ部屋に入れベッドに寝かせる。

晶の前髪を撫でながら晶の寝顔を見ていた。

「ごめんな。俺の所為でこんな事になってしまったのに。おやすみ」

晶の額にキスをする。

するとポン!と音がして晶の頭に黒い猫耳が出てきた。

「な、何なんだ? 魔法力が戻ったのか?」

猫耳を見ると器用にピクピクと動いていた。

「ふふふ、面白いな」

猫耳を摘んだり撫でたりして遊んでいると晶が目を覚ましてしまった。

「あっ、起こしちゃったな。ごめん」

「隆斗のバーカ。意地悪」

晶が隆斗を睨んだ。

「ゴメンな」

「もう、こちょばゆいから止めて……ああ!」

自分の頭に手を当てて何かに気付いて飛び起きてベッドの上に立ち上がる。

すると腰の辺りから綺麗な長い尻尾がゆらゆらとしていた。

「へぇ、綺麗な尻尾だな」

隆斗が尻尾を掴んだ。

「ひやぁー。貴様、お父様にさえ触られた事の無い尻尾を貴様如きが触るとは無礼であろう」

晶が変な声を上げて真っ赤になり叫んだ。

「おお、初めて出会った時みたいだな」

「うるさい、隆斗。貴様いったい我に何をした?」

隆斗が晶の耳元で何かを囁いた。

すると晶の顔から湯気が噴き出しこれでもかと言うくらい真っ赤になった。

「は、破廉恥極まりない! そこに直れ」

晶が魔法で隆斗に何かをしようとした。

「冗談だよ。また、痛い目にあいたいのか。物理攻撃じゃないと俺には通じないぞ」

「それなら頭にタライを落としてやる。えい!」

晶がニンマリとした。

音も無くタライが突然現れてそれが頭めがけて落ちてきた。

頭にタライが当たる鈍い音がする。

「ふぎゃ! 痛いよ! 隆斗のバーカ」

タライが当たったのは晶の頭だった。

「馬鹿はどっちだか……あれ?」

晶が目に手を当てて、まるで子どもの様に泣いている。

その姿を見て隆斗は前にこれと同じ様な感じを見た事がある様な気がした。

「大丈夫か?」

晶の頭を撫でると猫耳は無くなっていた。

「猫耳、消えちゃったな。こうしていると普通の泣き虫な女の子なのにな」

「隆斗は魔族が嫌いなの?」

「嫌いも何も魔族と出会ったのはアキュラが初めてだからな」

「そうなんだ。でも何で急に魔法力が戻ったんだろう」

「さぁな」

「ああ、隆斗がやっぱり何かしたんだ。エッチな事」

「してないよ」

「何か隠してるでしょう」

「それより晶。腹減ってないのか?」

「ああ、誤魔化すつもりなんでしょ」

「あのな、下に飯作ってあるからな。腹が減っているのなら食べて来いよ」

晶が隆斗のシャツの裾を掴んで隆斗の顔を見た。

「1人でチンして食べて来い」

「……嫌だ」

「なら喰うな」

「隆斗が苛めた罰として一緒に降りるの」

「だりぃなぁ」

そう言いながら部屋を出て階段を降りる。

キッチンで隆斗がコーヒーメーカーでコーヒーを入れ始める。

そして晶の食事をレンジで温めなおしてダイニングに運び晶に食べさせ、自分はコーヒーを飲みながら晶の食事に付き合った。

「やっぱり隆斗は優しいね」

「横でギュルギュルと腹を鳴らしながら寝られたら俺が眠れないからな」

「そんな音しないもん」

「良いから早く食べてしまえよ。寝るぞもう」

「うん」

食事を済ませ2階に上がる。

「もういい加減、自分の部屋で寝たらどうなんだ?」

「何で?」

「一応、俺は男だしな」

「何かエッチな事するの?」

「何もするか、バーカ」

「なら良いじゃん」

「あのなぁ」

「隆斗が好きなだけここで寝ろって言ったんだからね」

「あれは嘘泣きに騙されたんだ」

「また、隆斗が意地悪言う」

「はぁ~ 好きにしろ」

「勝った」

晶が両手を腰に当てて勝ち誇った様な顔をした。


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