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買い物・謀☆1

爺の提案で週末、美春に買い物に付き合ってもらう事になった。

最寄の駅から大きな街に電車で向かう。

「美春、悪いな洋服まで借りて」

「いいよ気にしなくって、着ていない服だから」

アキュラは美春が持って来てくれた生成り風の青のピンストラップのワンピースを着ていた。

「美春も、もう少し女の子らしい格好したらどうなんだ?」

「大きなお世話だよ。パンツの方が動きやすいんだから」

「ジーンズにシャツかよ。まるで俺の格好と一緒だな」

「そ、そんな事無いよ。いつもと同じ格好だよ」

何故か美春が赤くなり照れていた。

「まぁ、いいや。降りるぞ」


大きな街の駅で降り駅ビルの百貨店に来ていた。

アキュラは物珍しそうにキョロキョロして居るが隆斗のシャツの裾を掴んで離さなかった。

「彼女、アキュラちゃんって言ったけ。隆斗にべったりだね」

「仕方が無いだろ、事情が事情なんだから」

「事情ねぇ」

「それじゃ、美春。もしお前が子どもの頃から習い修得した古武術がある日突然使えなくなり暴漢に襲われたらどうする?」

「う~ん、怖くって逃げ回って助けを呼ぶかなぁ」

「そうだろ、これは美春だから話すけれどアキュラは魔族なんだ。そして魔法力を失って普通の人間の様になってしまい誰かに襲われかけたんだ」

「ええ、魔族って? 襲われたって? それじゃ、今も危険なんじゃ」

「たぶんな」

「たぶんて、襲われた事を師範には?」

「言ってない。言えば大騒ぎになるからな」

「でも、また襲われたら」

「何とかなるだろ」

「本当に隆斗って暢気なんだか頼りになるんだか判らないよね」

「ほら、着いたぞ。こいつの着替えを買って来てくれ、俺はここで待って居るから」

「それじゃ行こう、アキュラちゃん」

美春がアキュラの手を握り洋服売り場に向かう、アキュラが今にも泣きそうな顔で隆斗を見た。

「そんなに不安がるな。大丈夫だから」


美春が直ぐにUターンしてきた。

「隆斗! お金」

「ああ、そうだったな。これで支払ってくれ」

隆斗が美春に黒いカードを渡す。

「何? この黒いカード」

「日本政府御用達のブラックカードだよ。毎月有り得ないほど振り込まれて来るから、この百貨店の商品全部買ってもお釣りが来るぞ」

「また、冗談ばっかり。本当にこのカードで支払えるんでしょうね」

「当たり前だ。良いからとっとと買い物して来い」

「信用出来ないから、隆斗も一緒に来てよ」

「だりぃなぁ、判ったからそんな顔するな」

美春が、隆斗を睨みつけていた。


渋々隆斗が2人に着いて行く。

「うわぁ、可愛い洋服がいっぱい。これなんかどうかな?」

アキュラは隆斗の方ばかりを見て返事もしなかった。

「もう、誰の為に買い物に来ているかなぁ。隆斗、何とかして」

「何とかしろと言われてもなぁ、仕方が無い。アキュラ、良く聞くんだ。いいか、俺とお前は契約で結ばれている。

離れていても繋がっているんだ。だからお前に何かあれば必ず助けてやるからそんなに不安がるな。この間はお前が呼んだからお前の居場所が判ったんだ。自分の力を信じるんだ、そして俺の事も少しは信じてくれ」

そう言って隆斗が左手でアキュラの頭を撫でた。

「うん、判った」

すると満面の笑顔でアキュラが返事をした。

「うわ、何だか妬けるなぁ」

「何か言ったか。美春」

「う、ううん。別に」

それからはアキュラは楽しそうに美春と洋服を選びだした。

それでも少し離れると必ず隆斗の居場所を確認していた。

「隆斗、何着くらい買えば良いの?」

「俺にそんな事が分かる訳が無いだろ好きなだけ買えばいい」

「また、そんな曖昧な。まぁいいか、いっぱい買っちゃうよ」

「好きにしろ」

数着の洋服やスカート、パンツなどを選んでいると店員がこちらを伺っていた。

高校生だけで買い物に来てこれだけの買い物をしているのだ、不審に思わない方が変だった。

「隆斗、店員さんがこっちをジロジロ見てるよ」

「気にするな、清算の時に腰を抜かせてやるから」

「何を訳判らない事言ってるの」

「後で判るよ」

「うわぁ、これ可愛い!」

それはマネキンが着ている花柄のショート丈のワンピースで下はジーンズでコーディネートされていた。

「美春も欲しいなら買って良いぞ」

「ええ、でも高いよ」

「遠慮なんかするな。サイズはこれで良いのか」

「うん、でも」

「すいません、これと同じ物が欲しいんですけど」

隆斗が店員を呼ぶ。

「こちらでございますね」

「そう、これも一緒に清算をお願いします」

「か、畏まりました」

レジで会計をしてもらう。

かなりの商品を思いつくままに選んだので美春は不安そうな顔をしていた。

「隆斗、支払い大丈夫なの?」

「心配するなって」

「お会計、こちらになりますが」

美春が目を疑うような金額だった。

「それじゃ、このカードでお願いします」

「畏まりました。しばらくお待ちください」

店員がカードを受け取り何処かに電話している、隆斗は顔色一つ変えずに悠然としていた。

しばらくすると店長らしき人が慌てて対応に出てきた。

「大変お待たせ致しました。星様ですね、お買い上げ頂いた物はご自宅にお届けにあがりますので」

「このワンピースだけ、持ち帰るから」

「はい、畏まりました」

女性の店員が直ぐ包装した服を受け取り店を後にする。


他のフロアーで靴やサンダルなども買い、そして下着売り場にやって来た。

「悪いがここだけは勘弁してくれ。ここで待って居るから2人で行って来てくれないか」

「まぁ。隆斗も一応男の子だしね」

「一応は余計だ。なるべく早く済ませてくれよ」

「もう、仕方が無いなぁ。アキュラちゃん行こう」

美春がアキュラの手を引いて売り場に行こうとすると、少し余裕が出来たのか笑顔で隆斗の手を掴んだ。

「隆斗も一緒に行こう」

「おい、ふざけるな」

「早く! 早く!」

「勘弁してくれよ」

問答無用で売り場に連れ込まれる、覚悟を決めて買い物に付き合うしかなかった。

照れながらも2人の後を着いて行く選択しかない。

それでも少しずつ慣れていくアキュラを見て居るのが何となく嬉しかった。


一通り生活用品などの買い物を済ませる、何処のレジに行っても対応は同じだった。

「ああ、疲れた。上で飯でも食って帰るか」

「賛成! アキュラちゃんは何が食べたい?」

「隆斗と同じ物」

「本当にアキュラちゃんは隆斗、隆斗なんだね」

「嫌味かそれは、自分だって子どもの頃は同じだったじゃねえか」

「えへへ、そうだっけ。でも最近はあまり構ってくれないよね」

「当たり前だ。もう子どもじゃないんだからな」

「そんな事言うんだ。高い物ご馳走になっちゃおうかな」

「どうぞご自由に」

「それじゃ、ここにしよう」

美春が指差したのはイタリアンレストランだった。

「イタリアンかぁ」

「隆斗は嫌なの?」

「別に構わないぞ」

「それじゃ行こう」

レストランに入り各々が食べたい物を頼んで皆で味見をしながら食事をする。

「そう言えば隆斗ってお金持ちだったんだね」

「俺が金持ち? 何で」

「だってあのカード凄いじゃん。星様なんて言われて」

「あれは、あの事故の後で政府のお偉いさんが持って来たんだ。生活に困らないようにてな」

「あの事故って隆斗の両親が亡くなった時の?」

「ああ、そうだ。何でも日本を救ったとか何とか言ってたな。俺はまだ子どもだったから良く判らなかったけれど」

「そうなんだ、隆斗のお母さんって凄い魔法使いだったんでしょ」

「そうらしいな、俺はあまり覚えてないし。俺にはその力はまったく受け継がれてないけどな」

「でも、隆斗の不思議な力は魔法の力だと思うけどなぁ。アキュラちゃんはどう思う」

アキュラはしばらく考えて答えた。

「黒い伝説のリフレクター……」

「伝説だ? そんな大層なもんじゃねえよ。そろそろ帰るぞ」

「そうだね」

隆斗が会計をしている、今度はカードではなく現金で支払いをしていた。

それを見ていた美春が不思議そうに聞いてきた。

「隆斗、カードじゃないの?」

「ああ、あのカードは自分の為には絶対使わないと決めているんだ」

「えっ、どうして」

「男の意地みたいなものかな。美春が気にする事じゃねえよ」

「そうなんだ」

「ほら、今日の礼だ。受け取ってくれ」

「ありがとう、隆斗にプレゼント貰っちゃった」

「プレゼントじゃなくて今日の礼だと言っただろう」

「本当にデリカシーに欠けるよね」

「何とでも言ってくれ。帰るぞ、ほら」

美春に洋服が入った紙袋を渡して、隆斗がアキュラの方に手を出すとアキュラが嬉しそうに隆斗の小指を掴んだ。

「なんだ、隆斗も満更じゃなかったりして」

「爺に面倒を見ろと言われたんだ。もしアキュラに何かあってみろボコボコじゃ済まされないだろうが」

「そう言う事にしておきましょう」

「はぁ? それじゃ美春も手を繋ぐか?」

「えっ」

美春が少し赤くなった。

「赤くなってんじゃねぇよ」

「もう。隆斗の馬鹿!」


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