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太陽☆願い

美春と里美そして誠司が道場に着くと縁側で爺さんに抱きしめられながら星羅が泣いていた。

「星羅ちゃん? どうしたの?」

美春が星羅に声を掛けると星羅が美春に向かい駆け出してきて美春に抱きついた。

「ウワァーン! アアアーーー」

「そんなに泣いていたら判らないでしょ? 心配して里美ちゃんもとうもろこしの人も来てくれたんだよ」

「み、美春姉様。あ、あんな姉様見ていられないです。ヒック、ヒック……まるで兄様の事何もかも忘れてしまった見たいで。嫌だぁぁぁぁぁぁぁ……苦しいよぉ……」

「美春さん、大丈夫だら?」

里美が美春の顔を心配そうに覗き込んだ。

「少ししたら落ち着くと思う」

「あまりにも大きな喪失感は時に痛みさえ失わせるからな」

「誠司も大人みたいな事言うじゃんね」

「星羅ちゃんは隆君を信じてるだら?」

「うん。兄様が教えてくれた。信じることが大切だって、でも姉様は……今の姉様は……」

「星羅ちゃん。私を晶の所に連れて行って」

星羅が美春の顔を見上げると真っ直ぐに星羅の目を迷い無く見つめた。

「人を魔法の国に連れて行くのは禁止されているです。見つかれば唯じゃ済まないです」

「連れて行ってお願い。晶は私の大事な友達なの隆斗が私達を命がけで守ってくれた。その隆斗が愛した晶が目を覚まさないのなら私が目を覚まさせてやる」

「判ったです。美春姉様は覚悟決めたですね。星羅も決めたです。兄様は諦めが悪いて最後に言ってました。必ず帰ってくるです、星羅は信じるです兄様の事を」

「師範、2人をお願い」

「判ったわい、好きなようにするんじゃな」

星羅と美春が晶の居る宮殿に向かった。


「やれやれ、2人はこれからどうするかの?」

「もしかしてお爺さんが学園の代表ですか?」

「そうじゃが」

「お願いです、学園の生徒を集めてください。皆と話がしたいんです」

「里美、どうする気だ?」

「隆君が星羅ちゃん達に教えたじゃんね。魔法は信じる気持ちだって願う心だって。なら私も願うじゃんね。隆君は帰ってくるって、約束しただら……また会うって……私の力は小さいけれど皆の力を合わせれば大きな力になるじゃんね」

「そうだな、俺達も死神に助けられて更生しようと決めたんだ。行こう学園に」

「そうじゃな、わしらにはわしらにしか出来ない事を今するしか無いの」

爺さんが学園に連絡を居れ、里美と誠司は学園に生徒を説得しに向かった。


晶は自分の部屋でうな垂れていた。

自分が連れてきた白い鼬のせいで公爵は怒り出し滅茶苦茶になってしまったのだ。

そこに魔方陣が現れ星羅と美春が現れた。

「あれ? 美春ちん。ここは人は来ちゃいけない場所だよ」

「晶ちゃん、本当に腑抜けになってるんだね」

「私はいつも通りだよ」

「本当に? それじゃ隆斗の事をどう思っているの?」

「どうって、もう居ないんだよ隆斗は」

美春がありったけの力で晶の頬を打ち抜いた。

「そんな程度だったっんだ。晶の隆斗に対する気持ちは! 隆斗の心をこじ開けたのは誰? 隆斗が命より大切に思うのは誰? 隆斗がこの世界で一番愛したのは誰なの? 隆斗は今まで約束を破った事があるの? 誰の為に自分の気持ちに整理を付けて応援していると思うの、私は隆斗と晶ちゃんが大好きだから……2人に幸せになって欲しいから……」

美春の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。


隆斗に出会い助けられて初めて行った買い物での約束。

両親が連れ戻しに来た時にはじめて聞いた隆斗の気持ち。

星羅が現れ瀕死の重傷になりながら晶に伝えた言葉。

そして隆斗のつらい過去を知り、裏切らない2度と嘘はつかないと言う約束。

海では確実に隆斗との距離が近くなった。

どこにも行かないと言ってくれた。

そして誓い……


隆斗との再会からの出来事が晶の中で駆け巡り。

晶の目にも涙が溢れ出した。

「隆斗を信じたいよ、でも封印されていた魔力も元に戻ってしまい何度も隆斗の居場所を探してみたけれど。いつも私自身が頭の中に現れて。隆斗の声が聞きたいよ……隆斗に触れたいよ……隆斗を……隆斗を誰よりも……愛してる。優しい隆斗が大好き、でも……どうして良いのか判らないんだもん……胸が苦しくって……押し潰されそうで……」

「晶ちゃん、泣きたい時は思いっきり泣いて良いんだよ。魔族のお姫様なんて関係ない、晶ちゃんは1人の普通の女の子なんだからね」

美春が晶を優しく抱きしめると美春の胸に顔を埋めて晶が泣いた。

泣いて泣いて涙が枯れるくらい泣いたと思っていたのに止め処も無く涙が溢れ出した。

「晶ちゃんが一番辛いんだよね。あの馬鹿隆斗が……」

「美春姉様?」

「何だか無性に腹が立ってきた」

「美春ちん?」

「おい! 隆斗。てめえ晶ちゃんに自分と同じ辛い苦しみを哀しい思いをさせるつもりか! この馬鹿隆斗! 今すぐ出て来い!」

美春が窓の外に向かい叫んだ。

すると晶の胸のロザリオの青い石が不安定に輝いた。

「ええ、どうして」


その頃、エルフのミィーは宮殿の中を歩いていた。

「これこれ、エルフが宮殿の中に入っては……」

「おじさん、大丈夫だよ案内なんか要らないから」

「おじさん? 私はアキュラ様付きのセランでございます」

「あんたの名前なんか聞いてないよ」

クンクンと匂いを嗅ぎながらミィーが歩いていく。

「こっちだ匂いが強くなってきた。リュートとシルフの匂いが混じってる。この部屋かな」

ミィーが部屋のドアをいきなり開けようとした。

「いけません! そこはアキュラ姫のお部屋で御座います」

「やっぱりここからだ」

ミィーがドアを開けた。

そこには晶と星羅そして美春が居た。

「セーラ様? そちらの方はまさか……」

「いけない、見つかったです。美春姉様、戻るです」

「うん、晶ちゃん。隆斗を信じるんだよ」

「判った、目が覚めたありがとう。美春ちん」

星羅と美春が慌てて地上に転移する。

ミィーがアキュラの側に居るシルフを見つけて駆け出した。

「これ、いけませぬ。勝手な事は」

「構わないわ、セラン」

「しかし、私めが叱られます」

「私が良いと言っているの」

「やっぱりここに居たんだシルフ。あなたがアキュラ?」

「ええ、そうよ」

「あなたは? あれ? そのブレスレットは」

「私は、ミィーと呼ばれている。これはリュートに貰った。一緒に来て」

ミィーがアキュラの手を引っ張って部屋から出て行こうとする。

「ねぇ、ミィー。どうして隆斗のブレスをあなたが?」

「良いから一緒に来て。来てくれれば教える」

「姫、どちらへ」

「セラン、私は大丈夫だから。少し散歩をしてくるわ」

「しかし……」

ミィーに連れられアキュラが部屋を出て行くシルフが足元を駆け出し後を付いて行った。

「姫、どちらに」

「セラン、構わん。好きにさせてやれ」

「レオン様」

優しく見つめるレオンとラウラの姿がそこにあった。


ミィーに連れられて歩いていく。

しばらくすると宮殿の外に出てしまった。

「ねぇ、ミィー宮殿の外にはあまり行きたくないの」

「大丈夫だよ、もう魔族を誰も悪く思っていないから」

「でも、あの森はもう」

「リュートが元に戻してくれた。そして私の目も治してくれた」

「隆斗が?」

「ここからじゃ遠いいなぁ。私じゃ無理だし。そうだアキュラこの子の名前知ってる?」

ミィーがシルフを手に乗せアキュラに聞いた。

「この子の名前? あれ? この首についた紐見たいのって隆斗がいつもしていたミサンガだ、今まで気づかなかった」

アキュラがシルフを優しく撫でる

「クックックックッ」とシルフが鳴いた。

するとアキュラの頭の中に隆斗が呼んでいる言葉が浮かんできた。

「シルフィード」

アキュラが呟くと白い鼬が大きな真っ白い龍になった。

「我が名はシルフィード。我が主はソーレ アーク リュート。アキュラ姫を守護する命を受けた」

「やったー、思った通りだ」

ミィーが嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねた。

「ミィーよ、長くはこのままで居られん」

「魔法樹まで連れて行って」

「判った」

「早く、シルフに乗って」

「う、うん」

アキュラが恐る恐るシルフに乗り鬣に掴まるミィーが乗るとシルフが空を駆け出した。

「アキュラ、怖い?」

「平気、隆斗の優しい匂いがする。この子は私を守ってくれていたんだ」

「私はミルフィー。私もリュートに仕えるの。森と目を治してくれた恩に報いるために」

「それで2人にブレスとミサンガを」


丘の上にある大きな樹の下に着くとシルフは2人を降ろす。

するとまた小さな体になってしまった。

「アキュラは少しここで待っていて」

「それは良いけれど、この子は大丈夫なの?」

「平気だよ、直ぐに元の体に戻るから」

「そうなんだ」

ミィーがシルフを連れて丘の先に広がる森の中に入っていった。

丘には爽やかな風が吹きぬけ魔法樹の葉がシャラシャラと音を立てていた。

「なんだか、久しぶりだな外に出たの。風が気持ちが良い。不思議な樹、綺麗な音がする」

「そう言えば、隆斗っていつも高い所で空を眺めて居たっけ」

アキュラが草の上に仰向けになって空を見上げた。

「ここは地上から見上げる空とは違うからな」

青いドームの天井には太陽が射し白い大きな月が見えた。

「あれ? あの小さな光は何だろう。だんだん増えてきた」

空から小さな光が降ってきて魔法樹に集まる蛍の様に見えた。

「綺麗だな、隆斗にも見せてあげたいな」

アキュラが胸のロザリオを見るとまだ不安定に光輝いていた。

小さな光が魔法樹に集まりだすとシャラシャラと風のリズムで鳴っていたものがあるリズムを奏でているかの様に聴こえた。

自然とアキュラがそのリズムを口ずさんだ。

「ラ ララ ラララ ラ ララ ラララ ララ ラ」

それは隆斗が口笛で良く吹いていたリズムだった。

晶が起き上がりロザリオを見つめる。

「隆斗に会いたい。隆斗愛してる。今すぐに私を抱きしめて」

晶の瞳から1粒の涙がロザリオに落ちた。

すると、魔法樹が光輝きそしてロザリオから一筋の光が放たれ。

その光が宙に黒い魔方陣を書き上げた。

「あの黒い魔方陣は隆斗の……」

そう晶が呟くと魔方陣が黒く光り輝いた。

その輝く魔方陣から1人の男が現れた。

「呼んだか? 晶」

「隆斗なの? でもなんで? まさかここが伝説の希望の丘? あれが昔話に出てくる魔法樹なの?」

「遅くなってごめんな」

「隆斗! 隆斗! 会いたかったよ」

晶が両手を空に向かい広げると隆斗が優しく晶を抱きしめた。

そして晶にそっとキスをする、するとロザリオが輝き優しい光がフローティングアイランドを包み込んだ。


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