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太陽☆目覚め

お盆休みが終わり怒涛のようなバイトが始まり夏休みの課題をやり終えると2学期が始まった。

「おはよう、晶ちゃん、星羅ちゃん、それに隆斗」

「おはようです、美春姉様」

「ういーす」

「学校が始まると途端にこうなんだから」

「だりぃもんは、だりぃんだよ。大体美春は勉強好きなのか?」

「好きじゃないけど、将来の為じゃん」

「将来の為かぁ、そうだな」

「隆斗は将来どんな事をしたいの?」

「さぁな、魔法だってろくに使えないしな。普通が1番じゃないのか」

「魔族の王様になってたりして」

「はぁ?」

「だって晶ちゃんと結婚したらそう言う事になるんでしょ?」

「まだ、先の事じゃないのか」

「私は相手が隆斗ならいつでも良いけどなぁ」

「だって、隆斗はどうするの?」

「何とかなるだろ。急がないと遅れるぞ」

「早く学園に行くです」

「星羅ちゃんは楽しそうだね」

「はいです、お友達がいっぱい居るです」

「そうだな」

そんな、何も変わりの無い毎日が始まろうとしていた。

しかし、フローティングアイランドでは人知れず不穏分子が行動を起こそうとしていた。


学園ではしばらくすると文化祭の話題がのぼる様になってきていた。

「兄様、文化祭って何ですか?」

「学園のお祭りみたいな物かな、模擬店が出たりクラスごとにテーマを決めて発表したり」

「楽しみです。兄様は昨年は何をしたです?」

「屋上で空を見てたかなぁ」

「美春姉様、兄様が言ってる事は本当ですか?」

「そうだね、隆斗は行事には殆ど参加しないからね。今年は晶ちゃんも星羅ちゃんも居るから参加するんでしょ」

「そうだな、気が向いたらだな」

その時、園内放送が聞こえた。

「2年A組の星 晶さん、至急事務室まで」

「晶の事じゃないのか」

「そうみたい、ちょっと行って来るね」

晶が教室を出て事務室に向かった。

しばらくすると教室に戻ってきた。

「晶、何だったんだ?」

「お爺ちゃんから電話だった。帰りに道場に寄る様にって」

「爺から?」

「うん」

「師範、何の用事だろうね」

「姉様、文化祭の後にダンスパーティーがあるそうです。星羅は凄く楽しみです」

「そうなんだ、楽しそうだね」


帰りに皆で道場に寄る事になり、下駄箱で待ち合わせして道場に行くとそこには見慣れない紳士が爺さんと一緒に晶の帰りを待っていた。

「セラン、どうしたの?」

「晶の知り合いか?」

「うん、私の世話係をしてくれているセランだよ」

「執事みたいなもんじゃな」

「その執事さんが晶に何の用で?」

「実は、姫をお迎えに上がったのでございます。レオン様が大事なお話があるそうです」

「お父様が私に?」

「はい、将来のことについてとだけ伺っております」

「そうなんだ、隆斗。少し行って来るね」

「そうだな、大事な話があるんじゃ仕方が無いよな」

「それじゃ、星羅も行くです」

「あのう、アキュラ様だけと……」

「セラン、何か問題でもあるのか? このセーラが一緒じゃ」

「滅相も御座いません。それではご一緒に」

2人がセランに付き添われて宮殿に戻ろうとしていた。

「星羅、待ってくれ」

「何ですか? 兄様」

隆斗が星羅に近づき耳元で何かを囁いた。

「判ったです。星羅にお任せです」

「頼んだぞ」

隆斗が3人から離れるとアキュラ達の足元に魔方陣が現れて3人の体を光が包み込んで宮殿に転移した。

「隆斗、星羅ちゃんに何をお願いしたの?」

「何かあったら直ぐに知らせるようにだよ、念の為にブレスレットを外したんだ」

隆斗の手には魔法を抑える銀色のブレスが握られていた。

「どうしてそんな事を?」

「直感かな、何か少し嫌な感じがしたんだ」

「でも晶ちゃんの執事さんなんでしょ」

「気のせいかも知れないけどな出会った頃に襲われているし、星羅と出会った時も爺が陰謀のきな臭い匂いがしたと後から聞いたからな」

「隆斗の言う通りじゃな。アキュラは魔族の姫君じゃ魔族の将来に係わる事じゃからな」

「隆斗と晶ちゃんの未来にもね」

「魔族の国じゃ手も足も出ないからな」


晶と星羅が宮殿に戻って数日が過ぎた。

隆斗は毎日道場に顔を出すようになっていた。

「師範。最近、隆斗はこの頃道場に入り浸りですね」

「家に居ても詰まらんのじゃろう。話し相手が居らんと」

「羨ましいなぁ、晶ちゃん」

「ここなら誰かが必ず居るからの」

その日も隆斗は学園から道場に向かっていた。

道場の近くまで来たときに通り沿いの公園の広場の上で魔方陣がバリバリと音を立てて現れた。

その魔方陣はとても不安定でその中から何かが現れて落ちていくのが見えた。

「何だあれ?」

隆斗がそう思った瞬間に体が動き出していた。

落ちてくる物に向かって走り出していた。直感だった。

「クソ! 間に合え」

隆斗がダイビングキャッチをして体をひねり落ちてきた物を抱え込む。

隆斗が背中で着地すると砂埃が舞い上がった。

隆斗がダイビングキャッチした物は小柄な女の子だった。

「星羅? 星羅じゃないのか、しっかりしろ」

「兄様……ですか?……姉様が……結婚させ……ちゃうです……」

「星羅、しっかりしろ」

「助けてください……お願です……」

星羅が気を失った。

隆斗は星羅を抱きかかえたまま道場に駆け込んだ。

「爺! 大変だ。星羅が」

「なんじゃ、騒がしい。どうしたんじゃ?」

爺さんがボロボロになっている星羅を見て驚いた。

「急いで寝かせるんじゃ」

奥の座敷に布団を敷いて星羅を寝かせる。

「隆斗は少し席を外すんじゃ。星羅の体を拭いてやるでの」

「判った」

隆斗が障子を閉めて庭に出る。

そこに騒ぎを聞きつけた美春がやった来た。

「隆斗、何があったの?」

「晶の身に何かがあったんだ、それを星羅が知らせに来たんだ」

「隆斗やもう良いぞ」

「師範?」

爺さんが障子を開けるとそこには綺麗に体を拭いてパジャマに着替えさせられた星羅が寝ていた。

「星羅ちゃん、傷だらけじゃない」

「恐らく、命がけで隆斗に知らせる為に逃げ出して来たんじゃろう。隆斗、星羅ちゃんは何か言っておらんかったか」

「晶が結婚させられると助けてくれとだけ。爺! どう言う事だ。晶は俺と契約を」

「落ち着くんじゃ」

「これが落ち着いていられるか!」

「落ち着かんか! こんな時こそ肝を据えんか!」

爺さんに一括され隆斗は少しだけ落ち着きを取り戻した。

「良く聞くんじゃ、隆斗。契約は本人同士の意思で行うもじゃ。しかし1つだけそれを破棄させる方法があるんじゃ。それは強く深い催眠による方法じゃこの方法を使う事により契約を違う者と結ぶ事が出来るんじゃ」

「催眠がもし解けた時はどうなる?」

「今までの記憶もそのままじゃ。しかし契約者が違う。記憶を操作しない限り晶は生きてはいまい。それに隆斗との契約は本人同士の合意の上で行われた物ではなく事故のようなもんじゃからな。晶も隆斗に話せなかったんじゃろう」

「クソ! どうしたら」

「星羅の回復を待つしか無かろう。魔族の宮殿に行く唯一の方法は星羅頼みじゃからな」

「時間が無いんだ。また、俺は何も守れず失うのか」

隆斗が握り締めている拳から血が出ているのを美春が気づいた。

「隆斗、そんなに自分を責めないで。隆斗が悪い訳じゃないじゃない」

「…………」

隆斗は何も答えなかった。

「ごめん、命より大切な人だもんね」

隆斗が左腕の文様を見つめていた。


フラフラと庭にある背丈より大きな庭石に向かって隆斗が裸足のまま歩き出し左手を握り締めた。

「いかん! 美春止めるんじゃ。隆斗は本来左利きじゃ、拳が潰れるだけじゃ済まんぞ」

「駄目! 隆斗止めて!」

美春の叫びは隆斗には届かなかった。

「何がルーチェだ! 何が契約の印だ! 何が古の一族の末裔だ! 愛する者も守れねえ、ゼロ(無能)な、ただの役立たずじゃねえか!」

隆斗が心の悲鳴のような叫び声を上げ。

左の拳を大きな庭石に力一杯叩き込んだ。

その瞬間、隆斗の左手首の紋章が光ったかと思うと。

空で星か何かが光り隆斗目掛けて光の大きな矢の様な物が飛んで来て辺り一面を巨大な光が包み込んだ。


その頃、フローティングアイランドの中のサヴォイア宮殿ではキールが着々と準備を進めていた。

そこにキールの配下の者が駆け込んできた。

「キール様、今しがた原因は不明ですが魔法炉が活発に動き出しました」

「ふふふふ。祝福しているんだよ魔法炉も我と姫の婚姻の儀を。構う事はない準備を急ぐんだ」

「は、畏まりました」

そんなキールをレオンとラウラは何も出来ずに見つめていた。

「あなた、何とかなら無いのですか」

「無茶を言うな、アキュラの命がかかっておるのだぞ。唯一の望みはセーラだけなのだ」

「残念ですがその望みも叶いませんよ。あんな無理に転移しようとしたら今頃は異世界で彷徨っている事でしょう」

レオンとラウラを見上げてキールが笑いながら言った。

レオンの顔が苦痛に歪んだ。

「もう直ぐ全てがこの手の中に。ふふふふふ はははははは……」

キールの不敵な笑い声が響いた。 


隆斗を包み込んだ光の中から誰かが歩いてくるのが判った。

美春と爺さんが眼を凝らす、そこには真っ黒な格好をした人影が見え胸元の何かが光り輝いていた。

「えっ、隆斗?」

「ど、どう言うことじゃ。美春」

「海で私達を助けてくれた時に隆斗がしていた黒ずくめの格好と同じに見えるの、違うところは黒いマントをしている所と腰の後ろにある刀の様な物が有る事だけなの」

その時、突風が吹きマントが翻り辺りを包んでいた光が小さくなり男の中に吸い込まれていった。

「まるで八咫烏の様じゃな」

「ヤタガラスって日本の神話に出てくる3本足の鴉の事? そう言えば刀が3本目の足に見えない事も無いけど」

黒ずくめの男がヘルメットの様な物を取り近づいて来る。

紛れも無く隆斗だった。

しかし瞳は黒くなく濃い吸い込まれそうな青い色をしていた。

「隆斗、何があったの?」

「美春、俺にも良く判らないんだ。でも、もの凄い力が湧いて来るんだ」

「恐らく、覚醒したのじゃろう。古の一族として。隆斗や急いで星羅を治癒するんじゃ」

「判ってる」

隆斗が座敷に上がり星羅の額に軽くキスをする、すると星羅がとても優しい光に包まれた。

「う、ううん」

「星羅、気づいたか?」

「兄様? 兄様! 姉様が大変です」

隆斗の顔を見るなり泣き出して抱きついて来た。

「星羅、落ち着いて話をしてくれ」

「わ、判ったです」

星羅が深呼吸をして話し出した。

宮殿に戻るとそこにはキールがいて晶に無理やり怪しげな着け付け耳を着けると、晶の目から光が消えてキールの言う事を全て聞く様になってしまった事。

それを無理に外そうとすると晶の意識が一生元に戻らないか死んでしまう事があると言われ。

そして魔法が使えない牢屋に閉じ込められ。

レオンの指示で何とか助けに来たセランに牢を開けて貰い転移しようとして再び牢に放り込まれ、セランの手助けで無理やり転移したらそこから先は意識が無かったと言うのだ。

「そして気づいたら目の前に兄様がいたです。その格好は何ですか? まるで伝説の黒い騎士みたいです」

「爺さんは古の一族として覚醒したんだろうって」

「でも古の一族はそんな格好じゃないし、剣なんて持たないです。争いが1番嫌いですから」

「星羅、黒い伝説って何なんだ?」

「古い言い伝えです。魔法を跳ね返すリフレクター、そして黒騎士やブラックマジシャンは魔の国が乱れる時に現れるって言い伝えがあります」

「そうなのか」

「師範はまるでヤタガラス見たいだって」

「外れてはいないかも知れんぞ。ソーレ一族の守護は太陽じゃ」

「そうか、ヤタガラスも太陽の使者だったけ」

「星羅、まだ体はきついと思うが頼めないか? 俺を晶の所に連れて行ってほしいんだ」

「婚姻の儀は満月の時に執り行われるです」

「次の満月はちょうど明後日の十五夜じゃな」

「宮殿のあるフローティングアイランドではここと少し時間の流れが違うです。兄様、急ぎましょう」

「そうだな、爺、美春行って来る」

「必ず帰って来てね」

「ああ、必ず晶を連れて戻ってくるよ」

「兄様、行くです。我 ルーナ ミレ セーラの名においてサヴォイア宮殿へ」

星羅が詠唱すると2人の足元に魔方陣が広がり隆斗と星羅が転移した。

「行っちゃった」

「そうじゃな」

「必ず帰って来ますよね。師範」

「どうかのう」

「帰って来ますって。降りかかる運命からは逃げられないけれど運命と戦う事は出来るんです。私は大好きな晶ちゃんを守ろうとしている隆斗を信じます」

「そうじゃたな。わしも信じよう2人をそして皆の愛を」


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