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ゼロ☆2

「アキュラ姫、なりません。地上に降りるなど、私が叱られます」

「うるさい、私に指図するな。セラン」

「しかし、私は姫のお目付け役ですから」

地球と月の間にあると言うフローティングアイランドには魔族が住んでいた。

魔族といっても、悪魔などではなく高度な魔法を使う半獣人の種族で人類の敵ではないにしろ畏怖する者に違いは無い。

そのフローティングアイランドの中のサヴォイア宮殿には王族が暮らし魔族を統治していた。

「良いではないか、セラン。人がどんな種族であるか知るのも大切だろう。滅びの種族には変わりが無いがな。アキュラ程の力が在れば問題は無いであろう」

「しかし、レオン様」

「あなた、本当に人は滅びの種族なのでしょうか?」

「ラウラ、何を今さら。欲望の為に争いを繰り返し、今や自分達の終の住み処でさえ滅ぼそうとしている種族だぞ」

「そんな所に大切な娘を……」

「少し力を持ちすぎた人間の力を抑制するのも我々の務めだ。アキュラ行って来るがいい。このクリスタルは魔法力を感知し青く光る。強い光ほど強い魔法力を持っている証だ。お前の力で魔法力を消しさってしまいなさい」

アキュラがクリスタルが付いたネックレスを受けとった。

「お父様、地上に降りて良いんですね」

「許可しよう。ただし務めを忘れるなよ、くれぐれもリフレクターには気を付けるようにな」

「そんな黒い伝説にしか出てこないような人間が居るもんですか。それじゃお母様行って参ります」

「アキュラ、気を付けてね」

アキュラが呪文を唱える。

「我、ステラ アレーシア アキュラの名において地上へ!」

足元に魔方陣が現れ光がアキュラを包み込み地上に転移した。

「キールは居るか?」

「はっ、御用でございますか」

目つきの鋭い銀髪の長身の男が現れる。

「アキュラを影から守る命をお前に与える。良いな」

「畏まりました」

深々と頭を下げ男が王室を後にする。

「ふふふ。やっと我々影にもチャンスがやって来たか」

銀髪のキールが不敵な笑みを浮かべた。


仕事が一段落してキッチンで賄いを食べているとオーナーが声を掛けてきた。

「星、今日はもう上がって良いぞ。バイクが動かないんじゃ帰るの大変だろう。お前の家は隣町だしな」

「ありがとうございます。それじゃお先に失礼します」

着替えを済ませて店を出るとまん丸の満月が夜の街を照らしていた。

「明るいな、仕方が無いバイク押して帰るか」

月明かりの中をバイクを押しながら帰る。

30分も歩くと家の近所の公園までたどり着いた。

「ここを抜けた方が近道だな」

公園を通り抜けようとバイクを押しながら歩き出した。

流石に夜の11時前の公園には人影は無かった。

その時何処からか声がした。

「そこの者、退きなさい!」

辺りを見渡すが誰も居る訳が無かった。

「退け! 聞こえんのか!」

「はぁ?」

ふと上を見上げると満月の中に黒い影が見えそれが急激に近づいてくるのが見えた。

「何だ?」

そう思った瞬間、体に激しい衝撃を受け後頭部を地面に打ちつけ気を失ってしまった。

「あちゃ、また着地に失敗したかぁ。でも、今回は怪我も無くって……」

体の下に何かがあるのを感じた。

静かに立ち上がると男が気を失って倒れていた。

「しまった。人に怪我などをさせてしまったら連れ戻されるに違いない」

近くの水道に走り、ハンカチを濡らし男の額に当てる。

しばらくすると男が呻き声を上げた。

「おい、大丈夫か?」

アキュラが男の顔を覗きこんだ。

「痛たたた、何だったんだいったい?」

隆斗が後頭部を擦りながら徐に体を起こすと唇に何か柔らかい物が触れた。

「ん?」

片目を開けるとそこには真っ赤になった女の子の顔があり。

隆斗の唇に触れた柔らかい物は彼女の唇だった。

女の子がいきなり隆斗を突き飛ばし叫んだ。

「ぶ、無礼者! 我をアキュラ姫と知っての事かぁ」

「アキュラ姫?」

隆斗が見上げるとそこには黒いミニスカートに黒いジャケットを羽織った綺麗な顔立ちで女の子が仁王立ちしていた。

髪型はボブと言うのだろうか月明かりに照らされキラキラと輝いている。

そして良く見ると長い尻尾があり猫の様な耳だった。

「半獣人? 魔族? 誰だお前」

「ふざけるな!」

アキュラが隆斗の胸座をつかみ顔面に鉄拳を叩き込んだ。

殴られた勢いで後ろに倒れて再び後頭部を地面に打ちつける。

流石に限界だった。

「いい加減にしろ!」

隆斗が後頭部を押さえながら立ち上がる。

「ふざけているのはお前だろ! 非常識にも空から降ってきて人にぶつかって来やがって、謝りもしないでいきなり殴り飛ばすか普通!」

「貴様が我の唇を……」

「あれは、事故だ。ただのアクシデントだ。ああ、本当に今日は付いてねえ。美春には捕まるわ、爺には待ち伏せされるわ、バイクは故障するわ。魔族だか何だか知らねえがこれ以上俺に構うな。魔法なんてうんざりなんだよ!」

隆斗がバイクを起こし立ち去ろうとする。

「魔法なんてうんざりだと、魔族の口付けは契約の証だ」

「契約だ? 構うなと言っただろう」

隆斗がアキュラを睨みつけるとアキュラの胸元のクリスタルが光り出した。

「な、何だ。この強い光は今まで見た事が無い。貴様、何者だ?」

「普通の人間だよ。俺は魔法を使う事なんか出来ないからな」

「嘘をつくな! このクリスタルは貴様の魔法力に反応しているんだ。貴様にはかなりの魔法力があるはずだ」

「知るか! 勝手にしろ」

隆斗がバイクを押しながら歩き出した。

「我、ステラ アレーシア アキュラの名において汝の力を封印する」

隆斗が振り向くと呪文を唱えながら右手を隆斗に向けて突き出している。

そして掌から魔方陣が広がりその中心から光が向かってきた。

「詠唱魔法? ば、馬鹿。止めろ! 俺は……」

アキュラに隆斗の声は届かなかった。

アキュラから発せられた光が隆斗に迫る、隆斗の体に光が触れる瞬間に黒い魔方陣が隆斗の体を包み込んだ。

するとアキュラの体が光に包まれた。

「ふぎゃー!」

アキュラが悲鳴とも言えない様な声を上げた。

アキュラの体から青い光の玉が飛び出し隆斗の左胸にぶつかり消えた。

消えたと言うより吸い込まれたの方が正しいかもしれない。

「馬鹿が構うなと言ったのに」

「貴様、何をした?」

「俺は何もしちゃいないよ」

「馬鹿にするのも大概にしろ。雷打て!」

アキュラが魔法で雷を使うが何も起きなかった。

「何故だ?」

アキュラが頭に手をやり何かに気が付いた。

「耳が無い…… ま、魔法力が消えている……」

猫の様な耳も長い尻尾も跡形無く消えていた。

「何度も忠告したはずだぞ、俺に構うなと。これ以上面倒な事は懲り懲りだ」

隆斗がバイクを押しながら立ち去る。


「如何しよう……」

アキュラはその場に座り込み愕然としていた。

それを遠くから見つめる銀色の鋭い瞳があった。

「おやおや、早速チャンス到来ですか? でも楽しくないですね。少し楽しんで見ますか?」

自分の銀色の髪を数本抜くと軽く口で吹き飛ばした。

「さぁ、ショータイムです。行け! 獲物を狩って来なさい」

吹き飛ばされた髪の毛が数匹の黒い獣になり走り出した。

「命令通り影から見守る事にしましょう。ふふふふ」

男が不気味な笑い声を上げる。


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