期末試験☆1
少しだけ? 2人の距離が近づいて来ている様だった。
「朝です! 2人とも起きて下さいです」
「…………」
「…………」
「う、うう……エッチです」
隆斗と晶が向かい合って抱き合うように眠っていた。
「姉様、ズルイです」
星羅が隆斗と晶の間に潜り込もうとすると2人が目を覚ました。
「おはよー 隆斗」
「おはよう 晶」
「エッチです! 2人ともエッチ過ぎです」
「朝から何をわけの判らない事を言ってるんだ星羅は? 準備して学園に行くぞ」
「はいです」
学園では夏休み前の最大難関の期末試験が近づいてきていた。
教室ではクラスメイト達が皆、休み時間も無駄にせず試験勉強をしていた。
もし単位を落とそうものなら情け容赦ない補習が夏休み中待ち受けて居るからだ。
「ねぇ、隆斗。ここはどうなるの?」
「ふぁ~ 晶。寝かせてくれよ」
隆斗が眠そうに伸びをする。
「だって、判らないんだもん」
「ここは、Ⅹがこれだからこの公式に当て嵌めれば良いんだよ」
「あっ、そうか。ありがとう」
「兄様。これを教えて下さいです」
「はぁ? 星羅までもかよ。クラスメイトに教われば良いだろ」
「だって、兄様の方が判りやすく教えてくれるから兄様が良いです」
晶や星羅も例外ではなかった。
魔法の試験は隆斗と共に免除されるが他の通常教科に対しての免除は無かった。
隆斗がいつも寝ている休み時間も殆どこの有様だった。
「ああ、眠い……」
昼休みになると隆斗の周りには晶、星羅そして美春までもが集まっていた。
「美春もかよ。まぁ、美春には迷惑かけぱなしだし、しょうがないか」
「少しは自覚があるんだ」
「当たり前だろ」
「それじゃ、今度の週末は隆斗の家で試験勉強ね」
「はぁ? だりぃ……」
「バイトも試験休みなんでしょ」
「それはそうだけどなぁ」
「その方が、晶ちゃんも星羅ちゃんも助かるんじゃない?」
晶と星羅がキラキラした目で隆斗を見つめている。
「は~ぁ、やれば良いんだろ。2人ともそんな目で見るな、判ったから」
そして週末。隆斗の家では試験勉強会が開かれた。
リビングでテーブルを囲んで勉強を開始する。
「とりあえずだな、得意な教科は教えあってくれよ。判らない所だけ俺に聞くようにな」
「判らない所だらけです」
「星羅はしょうがないなぁ。自分の力で出来るだけ判るようにしないと自分の為にならないだろ」
「はいです」
3人は必死になって勉強している。
隆斗は判らない所は判るまで優しく教えた。
「はぁ~ 道場で修練してたほうが楽だわ」
「美春らしいな」
「でも、晶ちゃんと星羅ちゃんは勉強ってどうしてたの?」
「それは魔族の国でですか?」
「うん、まぁそうかなぁ」
「してたです、マンツーマンで。ねぇ、姉様」
「うん。でも、こんなに必死にはしてなかったから大変だよ。話を聞く程度しか勉強なんてしなかしなかったもん」
「確かに社会に出てから役に立つかと言えば難しいもんな。ほら、これが今回の期末試験の傾向と対策だ。この要点だけを抑えておけば補習は受けなくて済むはずだからな。後は努力あるのみか運次第だな」
隆斗が差し出したのは綺麗にレポート用紙に纏められた各教科の山だった。
怒涛の期末試験が始まった。
試験期間中も休み時間には隆斗の周りには晶、星羅、美春が集まりギリギリまで隆斗に質問攻めをしていた。
「お、終わった……」
隆斗が机に倒れこんだ。
「隆斗、珍しいな。いつも余裕のお前が」
「これで休み時間にやっと寝れる」
「って、そっちかよ」
「隆斗、ありがとうね」
「晶ちゃんはご機嫌だね」
「うん、だって完璧だもん」
「完璧って、何が?」
「ほらこれ」
晶が隆斗が作ったレポート用紙をクラスメイトに見せた。
「何これ? うわ凄い! テストと殆ど同じ内容じゃん」
「隆斗! 何でこんな事が判るんだよ」
「授業をキチンと聞いておけば何てこと無いだろ。それに先生の癖みたいなのが判れば簡単だろ」
「授業中、居眠りばかりのお前が言うか」
「ちゃんと授業を聞いているお前達が何で判らないのかの方が俺にしてみれば不思議だよ」
「くぅ……嫌味な奴だなまったく。俺らにも今度は教えろよ」
「だりぃし。そんな事したら先生はもっと難しい問題出してくるぞ、それでも良いのか?」
「それは、それで困るけど」
「赤点さえ取らなければ良いことだろう」
「そうだな」
そこに星羅と美春が現れた。
「星羅も大丈夫だったんだな」
「うん、兄様のおかげで良い点が取れそうです」
「美春はどうだったんだ? 浮かない顔しているけれど」
「う、うん。今回はそこそこ良い点取れそうだけど……」
「はっきりしない奴だな」
「次回はこうはいかないからね」
「それは、美春の努力次第だろ。判らない所はまた教えてやるよ」
「本当に?」
「ああ、本当だ」
「約束だよ」
「判ったよ」