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ごめん☆2

その日、遅い時間に隆斗は家に戻って来た。

外は雨が降り出し雷が鳴り始めて雨脚が段々強くなっていた。

深夜、大きな雷が鳴り響いた。

その音に驚いて星羅は目を覚ましてしまった。

隣では晶が気持ち良さそうに寝息を立てていた。

「こ、怖いよ。これが本物の雷なんだ……おトイレに行きたくなっちゃった」

星羅が部屋を出ると隆斗の部屋から明かりが漏れる。

「兄様、帰って来たんだ!」

部屋に戻って慌てて晶を起こした。

「姉様、姉様! 起きて」

「う、ううんん……何時だと思っているの星羅は」

「姉様、兄様が帰ってきてるです」

「えっ、本当に?」

「うん」

2人で隆斗の部屋を覗くと机で眠ってしまっている隆斗の姿が見えた。

静かに部屋に入り星羅が隆斗に毛布をかけた。

「兄様、風邪ひいちゃうよ」

「星羅、これって……」

「兄様、こんな時間に勉強していたんですね。それは兄様に頼まれて持ってきた魔法の本です」

「隆斗、私……」

晶はそれ以上何も言わずに自分の部屋に戻ってしまった。


翌朝、目が覚めると隆斗の姿は部屋に無かった。

ダイニングに下りると2人分の朝食が用意されていて隆斗が朝食をとっていた。

「兄様、おはよう」

「おはよう」

「隆斗、おはよう」

「おはよう」

挨拶は交わすが隆斗は黙々と朝食を食べている。晶とは目を合わす事すらしなかった。

「隆斗、あのね……」

晶が隆斗に話しかけようとすると隆斗が立ち上がり自分の食器を片し何も言わずに家を出て行った。

「姉様、大丈夫です?」

「うん、星羅。平気だよ、私がいけないのだから」

隆斗が用意してくれた朝食を食べて晶と星羅が学園に向かう。


学園に着き教室に入ると隆斗は机で眠っていた。

授業が始まり先生が出席をとり始める。

「星、星 隆斗」

「…………」

「おい、星。居るなら返事せんか」

「だりぃなぁ」

隆斗が立ち上がり教室を出て行こうとする。

「おい、星。どこに行くんだ、授業中だぞ」

「レポート出せば良いんだろうが!」

そう言い残して隆斗は教室を出て行ってしまった。

するとクラスがざわついた。

「静かに! 授業を始めるぞ」

休み時間になると数人のクラスメイトが晶の所にやって来た。

「晶ちゃん、星君と何かあったの?」

「別に何も無いよ」

「本当に? 元に戻っちゃったね。星君」

「元に戻ったって?」

「晶ちゃんは知らないんだよね。前まではあんなだったんだよ、授業にもまともに出ないで誰とも話さなかったの」

「そうだったよね。でも晶ちゃんが来てから変わってきたのになぁ」

「えっ? 私が来てから」

「そうそう、明るくなったし皆とも少しだけど話すようになってきていたのにどうしたんだろう」

「そ、そうなんだ」

晶はすぐ近くに居るのにとても隆斗を遠くに感じた。

すると少しずつ体から力が抜けていくのを感じた。

「あれ、変だな。どうしたんだろう」

次の授業にも隆斗は戻って来なかった。


昼休みになると心配して美春と星羅が教室にやって来ると晶は力なく机に突っ伏していた。

「晶ちゃん、隆斗は?」

「判らない、1時間目に出て行ったきり戻って来ないの」

「姉様、何だか様子がおかしいです。大丈夫ですか?」

「何だか体に力が入らないんだよね」

「それって魔法力が減ってきているんじゃ」

「星羅ちゃん、それってもしかしてこのままじゃ」

「よく判らないです。契約の事は私にはまだ判らなくって、でも魔法力が無くなれば姉様は消えてしまうです」

「消えちゃうって、隆斗を探してくる。星羅ちゃんは晶ちゃんを保健室に連れて行って」

「判ったです。姉様行きましょう」

「大丈夫だからね、星羅」

「大丈夫じゃないです!」

星羅が晶を保健室に連れて行きベッドに寝かせる。

保健室の先生は見当たらなかった。


その時、美春は屋上に居た。

「隆斗! 居るんでしょ」

「何だ、うるせえなぁ」

隆斗は屋上の出入り口の上で寝ていた。

「降りて来い! 隆斗!」

「だりぃなぁ」

隆斗が美春に言われて渋々飛び降りる。

「隆斗、晶ちゃんに何をした?」

「何もしてねえよ」

「ふざけるな! 晶ちゃんの魔法力が減って倒れたんだぞ」

「で? 何の用なんだ」

「いつからそんな腑抜けになったんだよ」

「俺は何も変わっちゃいねえよ」

「隆斗の馬鹿野朗!」

美春が本気で突きや蹴りを繰り出す。

隆斗はズボンのポケットに両手を入れたまま難なく突きや蹴りをかわした。

「はぁ、はぁ、何で当たらない」

「気は済んだか?」

「そんな死んだ様な目をした奴に何で!」

美春が渾身の突きを放つ、隆斗が軽く片手で止めた。

「じゃな、授業に遅れるぞ」

「晶ちゃんが消えちゃうかもしれないんだぞ」

「魔法力を渡せば良いんだろ」


隆斗が保健室に入ると晶の呼吸がとても苦しそうだった。

「兄様」

隆斗は返事もせずに晶の頭に左手を当てる、すると見る見るうちに晶の顔に精気が戻った。

そこに美春が駆け込んできた。

「隆斗?」

「これで良いんだろ。こうなったのも総て俺の責任だからな」

「隆斗、何処に?」

「構うな!」

隆斗は学園をでてバイクでどこかに行ってしまった。

入れ違いで隆盛がやって来た。

「晶は大丈夫かの?」

「えっ、どうして師範が?」

「星羅に連絡を貰ったんじゃよ。晶の様子はどうなんじゃ?」

「今、兄様が魔法力を……」

「そうか、しかしそう長くは持たんじゃろう」

「師範、何で急に魔法力が?」

「恐らく、絆が関係しとるんじゃろう。絆が強く結ばれている時には魔法力も強く流れ、絆が希薄になれば魔法力の流れも弱くなるということじゃな」

「そんな曖昧な事なの契約って」

「心と心の繋がりなんじゃろう。今は2人の心が離れてしまっておるからの、その為に魔法力の流れが希薄になってしまたんじゃな」

少しすると晶が目を覚ました。

「今、隆斗が……」

「姉様、兄様は直ぐにどこかに行ってしまいました」

「隆斗に謝らなきゃ」

晶が起き上がりベッドから降りようとした。

「止めんか晶。自分の体の事を考えとるんかの?」

「お爺ちゃん、でも……」

「晶ちゃん、隆斗は私たちが探すからね」

晶はうな垂れて何も返事をしなかった。

しばらくすると晶がベッドから起き上がった。

「晶ちゃん、何処に行くの?」

「ちょっと、おトイレに」

「晶、とりあえず道場に戻ろうな。良いか?」

「うん、わかった」

晶が1人で保健室を出て行った。


その頃、隆斗は取って置きの場所でベンチに横になり空を眺めていた。

しばらくすると温かい日差しに心地よい風が吹いておりいつの間にか眠ってしまった。


「師範、どうやって隆斗を探せば……」

「そうじゃな、魔法では難しいじゃろなぁ。隆斗は魔法に感知されにくいからのう。わしの陰陽師の力でも難しいのう」

「これからは隆斗のも携帯持たせなきゃ」

「しかし、晶はちと遅くないかの」

「私が見てくるです」

星羅が保健室を飛び出してトイレに向かう、直ぐに星羅が保健室に駆け込んできた。

「姉様が居ないです!」

「いかん。隆斗を探しに行ったんじゃろ、探すんじゃ晶は動き回って体力を消耗してしまったら危険じゃ。晶なら魔法でも探知出来るはずじゃ」

「師範。でも、ここにはそんなに魔法を使える人が……」

「星羅はどうじゃ?」

「駄目です。これがあったら魔法使えないです」

星羅が腕に着いているシルバーのブレスを触った。

「しもた。万事休すじゃな」

「手分けをして皆で探しましょ」

「判ったです」

「そうじゃな」

3人が晶を探すために学園を飛び出した。 


晶は獣道の様な山道をフラフラになりながら歩いていた。

その先に隆斗が居るという確信は何も無かった。

ただ、ここに居るだろうという直感だけを頼りにここまで登って来ていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、もう少しだけ待って頂戴。隆斗に会うまで消える訳にはいかないの、急がないと時間が……はぁ、はぁ、はぁ」


隆斗は夢を見ていた。

それはあの事故の夢だった。

隆斗に向かい茉莉亜が何かを言っている。

「我が名は ソーレ アーク マリア。汝の魔法力を強めよ」

すると茉莉亜の体が輝き出した。

「隆斗、ありがとう。これで皆が助かるわ。でも、ゴメンね。ずっと側に居てあげられなくって。さようなら、隆斗」

茉莉亜の体が光に包まれて段々見えなくなっていく。

「母さん!」

隆斗が左手を伸ばし茉莉亜の手を掴もうとした。

そこで目が覚めた。

隆斗は晶の手を掴んでいた。

しかし、晶の体は宙に浮いていて消えかけていた。

「晶、どうしたんだ?」

「隆斗、ゴメンなさい。信じてあげられなくって」

晶の目から大粒の涙がこぼれて隆斗の顔に涙が落ちる。

とても温かい涙だった。

隆斗が晶の手を引っ張り体を引き寄せてキスをしようとする。

「もう、駄目みたい。お別れだよ」

「もう、誰も失いたくないんだ」

隆斗の目からも涙がこぼれていた。

「隆斗、さよ……」

隆斗が消えかけた晶に優しくキスをした。

するとあのロザリオが光だし2人を包み込んだ。

その光はとても温かく優しい光だった。


晶はとても温かい物に包み込まれていた。

そして懐かしい様な大好きな匂いがして目を覚ました。

「ここは何処? 宮殿なの? それとも天国?」

晶が顔を上げるとそこには優しく見つめる隆斗の顔があった。

晶が目を覚ました場所は隆斗の腕の中だった。

「お目覚めかな? お姫様」

「隆斗? 夢見ているのかなぁ?」

「晶、ゴメンな。嘘なんてついて」

隆斗が晶の頭を撫でて猫耳を優しく触る。

「こちょばゆいから止めて、夢じゃ……隆斗!」

晶が隆斗に抱きついた。

「隆斗! 隆斗! 隆斗! 私、ゴメン……」

隆斗が優しくキスをして晶の言葉を遮った。

そのキスは今までのどのキスとも違いもっと深くそして確かなものだった。

晶も隆斗の顔を両手で支えて離れなかった。

「ねぇ、隆斗。あのね、その……」

「何だ?」

晶の顔が少し赤くなった。

「もう少しだけ隆斗と……」

「でも、あそこで爺の式神が俺たちを見てるけれど……」

「ええ! 何処?」

「晶、そんなに動いたら危ないって」

「キャー」

2人がベンチの上から転げ落ちた。

「痛ったたた……大丈夫か? 晶」

「うん、平気だよ」

「なぁ、晶。晶の気持ちは良く判った。でもな、こう言うものは時と場所を選んでだなもう少しゆっくりと進まないか?」

「えへへ、そうだね。隆斗がそう言うのならそれで良いや」

「ありがとう。俺は晶の事が好きだ、どんな事があっても裏切らないからな」

「それじゃ、もう2度と嘘はつかないでね」

「ああ、判った」

道場に戻ると爺と美春、星羅が心配そうに待っていた。

「間に合ったようじゃな」

「悪かったな、心配かけて」

「ゴメンなさい。私のせいで」

「誰も責めたりはしないよ、仲間じゃんね」


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