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学園☆1

翌朝、隆斗はソファーの上で目を覚ました。

「ふぁ~、体がゴワゴワだ。体のあっちこっちが痛いぜ、喧嘩ばかりしやがって」

隆斗が2階に上がり晶を起こす。

部屋のドアを開けると隆斗のベッドの上で2人はあられもない姿をして寝ていた。

「どんだけ寝相が悪いんだ」

「おい、起きろよ。遅刻するぞ」

2人は起きなかった。

「起きろ!」

隆斗が大声で叫んだ。

「ふへ……」

「ふぁい……」

2人が起き上がると、隆斗が赤くなり目を逸らしていた。

「おはよー、隆斗」

「おはよーございます。兄様」

「隆斗、何を赤く……ひや!」

晶がいち早く気付いて胸元を押さえた。

「ああ、見たですね。兄様、もうセーラはお嫁に行けません責任を取ってください」

「見えるような格好をして居るのが悪いんだろうが。それに晶の責任を取るだけで精一杯だ」

「ああ、逃げるですね」

「わ、私の責任って」

晶が真っ赤になっていた。

「あのな、俺も着替えるから部屋に戻れ」

「だ、駄目!見ちゃ」

徐に隆斗がシャツを脱ぎ始めると晶がセーラの目を塞いだ。

「姉様、何故ですか?」

「隆斗は私の物だから」

「朝っぱらから訳分かんない事言ってるなよ。遅刻するぞ」

「うわ、こんな時間だ。急がなきゃ」

晶がセーラを連れて自分の部屋に行き着替えを済ませ、下に降りて簡単な朝食を食べはじめる。

隆斗も降りてきてコーヒーを飲んでいる。

「これから何処に行くですか?」

「学園だ」

「学園って?」

「学校だよ。勉強する所」

「セーラも行きたいです」

「駄目だ、セーラは爺の道場で留守番だ」

「ええ、詰まんないです……」


道場に寄ってセーラを爺さんに預けて学園に向かう。

途中で美春が待っていた。

「おはよー、晶ちゃん」

「おはよー、美春ちん」

「隆斗も、おはよー」

「うーす」

「何だか疲れた顔しているけれど体まだ調子悪いの?」

「何処も悪くないが。2人が喧嘩ばかりするんでな」

「うふふ、喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない」

「はぁ~、面倒見るなんて言うんじゃなかった。1人でさえ大変なのに」

「私は悪く無いもん」

晶がそっぽを向いて剥れる。

「もしかして隆斗の取り合いしているんじゃ。モテモテだね、隆斗は」

「勘弁してくれ、誰とも係わりなんて……」

「えっ、隆斗。今なんて言ったの?」

晶が悲しそうな顔をした。

「もう、隆斗はまたそんな事言って。晶ちゃんに謝りな」

「晶、ゴメンな」

「晶ちゃん、あのね。隆斗は晶ちゃんと出逢うまで誰とも係わろうとしなかったの。私や師範とさえ避けられていたの」

「避けてたんじゃねぇよ。ただ……」

「ただ、何なのよ。私たちが声掛けなければ話もしなかったじゃん」

「ええ、そんな事が」

「あの事故からずーとだよ」

「あの事故って隆斗のお母さんの?」

「う、うんそうなんだけれど。私、子どもの時に隆斗から聞いた事があるのお母さんが最後に隆斗の力を借りるねって言ったって自分が居なければお母さんは死ぬ事なかったんだって」

「そんな……」

「昔の事だ。美春もそんな事言ったら晶がまた気にするだろうが。それに少し母さんの気もちが判ってきた気がするんだ。俺より母さんの方が辛かったんじゃないかって。愛する我が子を残して行かなければならなかったんだからな」

隆斗が空を見上げながら言った。

「隆斗、どうしたの? 隆斗の大人な発言、初めて聞いたよ」

「美春。一応、俺にも大切なモノが出来たんだよ。何を差し置いても守らなければならないモノがな」

「それは自分の命よりも?」

「そうかも知れねえな」

「うわ、そんな台詞よく言えるね」

「美春に言われてみるとかなり寒いな」

隆斗が寒そうに腕を擦った。

「ええ、何が? 美春ちん、教えてよ」

「美春、余計な事言うなよ」

「美春ちん、友達でしょ」

「あのね、自分の命よりも晶ちゃんが大切なんだって」

ボッと音がして火が着くんじゃ無いかと言うくらい晶が真っ赤になった。

「私も命懸けで守ってくれる人探そうと。ねぇ、晶ちゃん」

「美春ちんのバカぁ」

晶は隆斗のブレザーの裾を強く握り締めた。

「急がねえと遅刻するぞ」

「そうだね、行こう。晶ちゃん」

「う、うん」

晶は真っ赤なままだった。


道場ではセーラが暇を持て余していた。

縁側に座って詰まらなそうに空を眺めていた。

「詰まんない、これじゃ宮殿に居た頃と何も変わらないです。そうだ魔法で駄目だ、もし騒ぎを起こしたら宮殿に帰されちゃうんだ。はぁ~宮殿みたいに窮屈じゃないけど退屈だなぁ」

「ん? どうしたんじゃ」

「あ、お爺様。退屈で……」

「魔法で遊んだらええじゃろうが」

「魔法を使ったら兄様に怒られちゃうです」

「そう言えば、隆斗に何か頼まれておったようじゃが」

「それはもう準備してあります。あそこに」

朝、別れ際に隆斗がセーラに何かを頼んでいたのだった。

爺さんがセーラが指差す方を見るとそこには数冊の本があった。

「本じゃな」

「はい、魔法の基礎と歴史の本が見たいって。お爺様、兄様は魔法の勉強をしに学園に行ってるんじゃないのですか?」

「うむ、そうなんじゃが。隆斗は元々魔法は使えないからのう、母親のせいで嫌々通っておるんじゃよ」

「魔法が使えないって、それじゃ私を宮殿に追い返すなんて嘘を」

「嘘ではないな。学園に晶の両親が来た時に隆斗は実際に追い返しておるからの」

「えっ、姉様の両親て? レオン様とラウラ様ですか? ありえないレオン様の魔法を返すなんて」

セーラが驚きを隠せなく呆気にとられている。

「セーラちゃんそれはどう言う事じゃな」

「魔法を返すと言う事はその魔法以上の力が無いと返せないんです。だからレオン様は2人の事を認めたんだ」

「2人を認めたとな」

「はい、確かにそう聞きました」

「そうか。そうじゃ、セーラちゃん。これが何だか判るかのう」

爺さんがシルバーのブレスレットの様な物をセーラに渡した。

「お爺様、これは?」

「茉莉亜が隆斗の力が抑えられない時にと残していった物なんじゃが」

「これは古の一族が子どもの頃に使う物でこうして腕に填めておくと魔法力が抑えられるんです。そしてこんな風に少しでも大きな魔法を使おうとすると」

セーラが自分の右の手首にブレスレットを填めて魔法を使おうとするどうなるか爺さんに教えようとしする。

「みぎゃー!!」

セーラがあり得ない様な声をだしてブレスレットをしている右手を押えながらプルプルと震えていた。

「どうしたんじゃ?」

「こ、こんなに痛いなんて思わなかった」

「なるほど、ペットの躾け様の首輪みたいなもんじゃな」

「あれ? お爺様。あのう。外れないですけど」

「そんなはずは……おかしいのう。まぁ隆斗に魔法を禁じられておるんじゃ、着けていても問題なかろう」

爺さんがブレスレットを外そうとするが外れなかった。

「ええ、そんないい加減な」

「大きな魔法を使わなければ問題ないんじゃろ」

「は、はい。確かに……はぁ~こんな事になるなら姉様達に無理矢理ついて学園に行けば良かった」

「おお、その手があったの。わしも何かと忙しいでな」

爺さんが急いでどこかに電話を掛けて書類を作り出した。

「お爺様、何をしているんですか?」

「これで良しと。セーラちゃん出掛けるぞ」

「ええ、何処にですか?」

「楽しい所じゃよ」


学園ではちょうど昼休みの時間になっていた。

隆斗は机に突っ伏して眠ったままで居る。

「隆斗、起きて。お昼だよ」

「ふぁ~、よく寝た」

「寝すぎだよ」

「誰かさん達のせいでソファーで寝たから寝た気がしないんだよ」

「はい、お昼ご飯。購買で隆斗の分も買って来たよ」

「悪いな。今日は美春と一緒じゃないのか?」

「うん、美春ちんは委員会の集まりがあるんだって。だから今日は隆斗と一緒、嬉しいな」

「毎日、一緒に居るだろうが」

「だってこれからはセーラが居るんだもん」

「セーラが居ようが変わらないだろ」

「うん」

周りのクラスメイト達が2人の様子を見て話しかけてきた。

「しかし、ラブラブだね。お熱い事で」

「そんなんじゃねぇよ」

「相変わらずだね星君は」

「簡単に変わるか」

そこに男子生徒が慌てて教室に飛び込んできた。

「ビッグニュースだぞ」

「何がニュースなのよ、またあんたなの? いつも大袈裟だからね」

「何でも1年に凄い可愛い女の子が入ってきたらしいぞ。帰国子女でそれも飛び級凄いよなぁ」

「また、ガセじゃないでしょうね」

「ガセじゃねえよ。この間の話だって本当だったじゃねえか、まぁ隆斗だったけど」

「俺で悪かったな」

「でも、星君。格好良かったよ」

クラスメイトの女子が赤くなった。

「おいおい、何を赤くなってるんだよ。晶ちゃんの前で」

「はぁ~? 勘弁してくれよな」

隆斗は照れ隠しの様にパックのジュースを飲みだした。

すると廊下の方がザワザワと騒がしくなり少しずつざわめきが近づいて来た。

「兄様! 姉様!」

ツインテールの女の子が叫んだ。

その声に隆斗が驚いてジュースを噴き出しジュースが晶に掛かった。

「隆斗、ばっちいよ。もう」

女の子は隆斗を見つけると走り出し隆斗の首に後ろから抱きついた。

「だ、誰だ? こら離れろ。誰なんだ?」

「ひ、酷い。兄様たら」

「そ、その声はセーラ?」

隆斗の声が裏返った。

「はい!」

見るとセーラが学園の制服を着て襟元には1年の黄色いリボンが揺れていた。

「セーラが何でここに居るの?」

「姉様、お爺様が手配してくださったんです」

クラスメイト達の視線が隆斗達に集まった。

「兄様ってもしかして本物じゃないパパと同意語かな」

「でも晶ちゃんとも知り合いみたいだよ」

「おい、隆斗。お前この噂の可愛い女の子とどう言う関係なんだ?」

「どう言うって、そのだな」

「ハッキリしろ・して」

「だりぃな、もう~」

クラスメイトの声が揃った。

するとセーラが自己紹介をし始めた。

「今日からこの学園の1年でお世話になる事になった月見星羅(つきみせいら)です。宜しくお願いいたします」

「セーラ、その名前は?」

「お爺様が書いてくださったんですよ、ほら生徒手帳にも」

隆斗が見ると確かに『月見星羅』と書いてあった。

「星羅ちゃんだっけ、星君とはどう言う関係なの?」

「私は晶姉様の従姉妹ですよ」

「それじゃ星君の親戚なんだ」

「はい、そうなりますね」

「どこに住んでるの?」

「兄様と姉様と一緒です」

「ええ、隆斗がこんな可愛い女の子達に囲まれて……信じられん」

「なんなら変わってやるよ」

「良いのか?」

「バーカ、良い訳無いじゃない。あの晶ちゃんの顔。ほれ」

「ひぃー。怖」

晶が隆斗をもの凄い顔で睨みつけていた。

「晶、冗談だよ。可愛い顔が台無しだぞ」

「へぇ? 隆斗」

晶の顔が真っ赤になった。

「それに星羅は言っておくが魔族だからな。晶の従姉妹だから当たり前だけど」

「でも耳が無いじゃん」

「有るよ。セーラ! 気を付け!」

「ひゃい!」

隆斗が少し大きな声で星羅に言うと星羅が驚いて変な声を上げツインテールの様な耳がピョコンと起き上がった。

「うおぉぉぉ、ウサ耳だぁ!」

「クウ~、萌えるぜ!」

男子生徒が盛り上がった。

「でも晶ちゃんも魔族なんでしょ。何で晶ちゃんには耳が無いの?」

「封印されているだけだよ」

「封印?」

「こうすれば出てくるぞ」

まだ顔を赤くしている晶のおでこに隆斗がキスをした。

ポン!と音がして晶の頭に猫耳が現れて長い尻尾が出てきた。

隆斗の行為に一瞬騒ぎが止まり……

「うおぉぉぉぉぉ」

「ひやぁぁぁぁぁ」

クラスメイトの雄叫びが上がった。

「可愛い!」

「萌え、萌えだ!」

「何だか場違いなコスプレ喫茶みたいだな」

隆斗が立ち上がりどこかに行こうとする。

「何処に」「何処へ」

「トイレだ。トイレくらいゆっくりさせてくれ」

晶と星羅の声が被る。

隆斗は昼休みが終わるまで戻ってこなかった。

クラスでは晶と星羅の話題で持ち切りになっていた。


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