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バイト☆1

しばらくすると学園の中は落ち着いてきた。

緊急朝礼の隆斗の一件があり晶を見る目は前よりも親しい感じに変わっていた。

それでも隆斗を見る目は相変わらずだった。

「星君は、相変わらず授業中は殆ど寝ているか窓の外をぼーと見ているかだね。晶ちゃん学校以外でもあんななの?」

「ええ、違うよ。色んな事に凄く気付いてくれるし掃除も料理も上手いし」

「信じられないなぁ。でもバイトをして生活費を稼いでいるんでしょ。それでいて成績はいつもトップクラスだよね、魔法以外は」

「そうなんだ、でも勉強なんかしている所見た事無いなぁ」

「う、嘘でしょ。天才児かなんかなのかなぁ」

「違うと思うけれど。何で隆斗の事を避けているって言うか凄く遠巻きにしているのかなぁ」

「え、だっていつも怒っている様な顔しているし、それに取っ付き難いって言うか俺に近づくなオーラー出しているでしょ」

「ぶっきらぼうなだけで凄く優しいんだよ本当は」

「それは晶ちゃんが特別だからでしょ」

「と、特別って」

晶が赤くなった。

「だって義理の妹だしね」

「えっ、そうだね。うん」

すると、隆斗が教室に入ってきた。

「ねぇ、隆斗。何でそんなに不機嫌そうな顔してるの?」

「あ、晶ちゃん。そんな事聞くかなぁ」

「俺がどんな顔していても俺の勝手だろ。それにこれの顔は生まれつきだ悪いか?」

「星君、もう少し女の子には言い様があるんじゃない」

「悪かったな。これが俺の地だからな」

隆斗は席に着いて机に倒れ込む様にして眠りだした。

「はぁ~本当に皆と仲良くする気あるのかなぁ」

「ゴメンね。私からも言っておくから」

「そんな晶ちゃんが気にする事じゃないよ」

そこに男子生徒が慌てて教室に飛び込んできた。

「ビッグニュースだぞ」

「何がニュースなのよ、あんたはいつも大袈裟だからね」

「あのな、何でも隣町のイタリアンレストランにもの凄く可愛いウエイトレスが居るらしいぞ」

「はぁ、くだらない。またそんなガセネタ」

「ガセじゃねえよ、それにそこのレストランには物静かなイケメンも居るって話だぞ」

「あっ、それ私も聞いたことがある。結構有名な噂だよね」

「今度。探しに行って見ようよ」

また、雲行きが怪しくなってきていた。


ここフローティングアイランドの中のサヴォイア宮殿でも。

「あなた、これからどうなさるんですか?」

「ラウラ、その事なんだが。あの男がマリアの息子なら認めざるえないだろう」

「そうですわね。あの言葉で魔方陣が発動すると言う事は間違いないのでしょうから。それにあなたの魔法を返すなんて認めざるおえないですわね」

「失われた古の一族の末裔が黒い伝説だったとは、運命は皮肉なもんだな」

「あなた、それは考えようですわ。そうでしょ、それより今はあの2人の身の安全を考えなくては。我が魔族の未来に関わる事ですから」

「そうじゃな。キール! キールは居らんか」

「は、御用でございますか? レオン様」

「お前に影から2人の護衛を命ずる。良いか魔族の未来に関わる問題じゃ。もし何かあれば我が魔族には未来は無いと思え。良いか」

「は、御意に」

それを伺っている小さな影があった。

「セーラ、そこで何をまたコソコソと聞いて居るのじゃ。勝手な事は許さんぬからな」

「叔父様、そんな事は判っています。私も王族の身ですから、失礼致します」

小さな影は王室を後にする。

「厄介な子どもに話を聞かれてしまった。何も起こらなければ良いのだが」

「あの子だけは地上に降ろしてはいけない子ですからね」

しかし、2人の不安は的中してしまう事になる。

キールはセーラが初めから王室に居ることを知っていたのだ。

「セーラ様。これからどうなさるおつもりなのですか?」

「私のアキュラ姉様を人間など下等な生き物に渡すわけには行かぬ」

「アキュラ様は人間の男と契約をして一緒に暮らして居ります。その契約も男が死ねば解除され元のアキュラ様に戻るとの事ですが」

「キール、貴様何が言いたいのじゃ」

「これは出すぎた真似をお許しください。これから私は2人の護衛の為に地上に参ります。くれぐれも着いて来られる事の無いようお願いいたします。レオン様にお叱りを受けますので。私はこれで失礼致します」

「キールの奴は相変わらず何を企んで居るのやら。まぁ、今回は話しに乗ってやろうではないか。アキュラ姉様の目を覚まさせてやる」

小さな影は地上に向かった。


隆斗と晶がバイクでバイト先に向かっていた。

「ねぇ、隆斗は何で学園では無愛想なの?」

「はぁ? 別にいいだろ」

「良くないから聞いてるの」

「好きで無愛想な訳じゃねぇよ。小さい頃から自分の訳判らない力で呪いだの言われてきたんだ。俺から寄って行っても直ぐに皆離れて行ったよ」

「でも、今はみんな子どもじゃないんだから話せば判ってもらえるよ」

「長い間に染み付いた物はお互いに中々取れないもんなんだよ。それに俺が冗談言って皆を笑わせている姿なんか想像できるか?」

「う~ん。気持ち悪いかも」

「だから今のままで良いんだよ。晶は側に居てくれるしな」

アクセルを開けるとバイクの排気音が大きくなった。

「えっ、なんかとっても大切な事が聞えなかった気がするんだけど」

「遅れそうだから飛ばすぞ」

出勤時間ギリギリで店に着いて慌ててロッカールームに向かう。

「ねぇ、隆斗。さっき何て言ったの?」

「晶がモタモタしてるいから時間ギリギリなんだぞ」

「そんな事は聞いて無いよぉ」

「晶が側に居てくれるから良いって言ったんだ」

「えっ」

晶が赤くなった。

「ほら、ボヤボヤしない早く着替えないとオーナーに怒られるぞ」

「う、うん!」

2人がそれぞれの持ち場に入り仕事を始める。

隆斗は通り沿いの窓際でドルチェの仕上げをして晶は店の前の掃除を始めていた。


学園では、噂の調査隊が結成されていた。

隣町の可愛いウエイトレスと物静かなイケメンの存在を確かめるべく数人が隣町のイタリアンレストランに向かっていた。

「確か、この辺りなんだけどな」

「ねぇねぇ、あそこじゃない? 通り沿いがオープンキッチン見たくなっているし。あっ女の子が手を振ってる」

店の窓に向かって手を振った女の子達が直ぐ横を通り過ぎた。

「噂どおり格好良いよね」

「うん、今度行ってみようよ」

そんな会話が聞えてきた。

「ビンゴみたいよ。それじゃ行って見ますか」

「よし、少し離れて様子を見てみようぜ」

通りの反対側から窓を覗く。

そこにはパリッとした真っ白いシャツを着てお店のロゴの入った青いキャップを被り黒いサロンをした男の人が手際よくケーキの仕上げや飾り付けをしていた。

「うわぁ、凄い。あんなに綺麗に作っているんだ……て、あれ?」

「どうしたんだよ」

「ねぇ、あれって星君じゃないの?」

「そんな筈ねぇだろ……って隆斗ぉ?」

「ええ!!」

全員が叫んだ。

「でも、学園で見る星君と何だか別人で格好良くない?」

「そうだね、何だか凄く素敵だね」

「おいおい、女子が乙女な顔になっちゃってるぞ。でも隆斗がここに居るって事は、噂の綺麗なウエイトレスって……」

「とりあえず、店に入ってみようぜ。ここまで来たんだ、お茶ぐらい飲んで帰ろう」

「そうだな」

皆で店に入ると「いらっしゃいませ」と晶が笑顔で挨拶をした。

「あ、晶ちゃん?」

「わぁ、皆どうしたの?」

「いや、可愛い子が居るって噂で聞いたから」

そこにオーナーがやってきた。

「いらっしゃいませ。晶ちゃんのお友達かな?」

「はい、クラスメイトです」

「それじゃ、ゆっくりして行ってね」

「ありがとうございます」

晶にテーブルに案内されて飲み物だけを頼んだ。

「隆斗。クラスの友達が来ているぞ」

「そうですか、判りました」

「しょうがない奴だな」

オーナーが気を使い隆斗に声を掛けたが気の無い返事だった。


テーブルでは今度は男子が晶に釘付けになっていた。

「可愛いよなやっぱり」

「う~ん、そうだな猫耳メイドさんの格好もして欲しいな」

「何をお馬鹿な事言ってるのかなぁ。男は本当にしょうがないなぁ」

「あれ? さっき隆斗の姿を見て乙女な瞳をしていたのはどこの誰だっけ?」

「それは、その以外だったから」

そんな話をしていると晶が何かを運んできた。

「これ隆斗からサービスだって」

それはお皿に綺麗に盛り付けされたドルチェだった。

クリームブリュレにティラミス、パンナコッタやカタラーナ、ズッパイングレーゼなど同じ物は1つも無かった。

「晶ちゃん、これって星君が盛り付けしたの?」

「うん、そうだよ。作ったのも大体隆斗だけどね。それと遅くならないうちに帰れって伝えろって言われた」

「そうなんだ。それじゃいただきまーす」

「うわぁ、美味しい!」

「うめー、こんなの食べた事ねぇや」

「それ、味見させて」

「これもメチャ美味しい」

ドルチェを満喫して皆満足そうだった。

そして隆斗の忠告どおり遅くならないうちに帰る事にする。

「ご馳走様でした」

「晶ちゃん、星君に宜しくね」

「うん。また遊びに来てね」

「今度は食事しに来るね」

「ありがとう。バイバイ」

晶が隆斗を見るとディナー前の準備をしているのが見えた。


「おーい、星。悪いが買い物に行ってきてくれないか?」

「判りました。オーナー」

「今日はそんなに忙しくならないはずだから急がなくて良いからな」

「はい」

オーナーからメモを受け取り頼まれた買い物をしに隆斗が出て行った。

「あれ、隆斗は?」

「ああ、晶ちゃん。買い物を頼んだんだよ、心配?」

「そ、そんなんじゃないですよ」

「いや、最近なんだか2人の雰囲気が変わったなって思ったからさ」

「だから、そんなんじゃないですって」

晶は何だか嬉しそうに仕事をしていた。


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