ヒーローが私を新天地へ連れて行く妄想
パワーは、僕たちの革命軍で最も強い。
こいつ個人で日本は壊滅するだろう。
だが、戦力は相手側にもいる。
いくらパワーといえど軍を相手にすれば刃が立たない。
そのための僕たちだ。
「パワー。最低限、アイツとアイツとアイツは殺せ。時間に余裕があれば右の方のやつだ」
「ナイス!ま、できるだけ頑張るわ」
警備員は侵入する前にパワーが対処しているとして、財閥が持っている私兵軍が到着するまでに効率よく日本を混乱に陥れなくてはならない。
一学期という期間は学園全体の情報を入れるために十分だ。
財閥の御曹司や総理の息子など、日本に打撃が大きいやつを始末する。
「世界を広げた者」がくる前に。
「ジャスティス。それそろ、変身を解いてもいいんじゃないか」
「そうだね。じゃあ、これからは任務に戻る。また会おう」
そういうと、ジャスティスの体の表面が溶けた。
そこには、もう無垢な少女はいない。
温度を失ったかのような冷徹な表情を浮かべた軍服の女性がいるだけだ。
ジャスティスは氷の能力を持っている。
一般的な女子高生の模様がついた氷を纏っていたのだ。
彼女はエンペラーの護衛に向かっただろう。
本来の彼女の任務だ。
スパイ作戦に参加していたのは僕のわがままを通しただけだからな。
おっと、もう時間だ。
三石財閥の軍が来た。
軍だけは真っ当だからな、アイツらは。
上が腐っているのがかわいそうだ。
「パワー。時間だ。引き上げるぞ」
「了解した!」
最後にこの学園を見ておこうか。
と言っても、我先に逃げようと走り回っている姿しか見えないが。
いや、違う。
一人だけ、こちらを見ている少女がいる。
いい目だ。
困惑でも恐怖でもない、澄んだ目だ。
純粋な羨望の目だ。
あいつは確か、図書委員の夏目 朝。
いつも教室で本ばかり読んでいる根暗だ。
まあ、平民でこの学校に来たらこうなるだろうなという典型だ。
こんな目をできるやつだとは思わなかった。
あの頃の少年少女のような目をしている。
面白い。
これからどうなるのか見るのもまた一興。
*
学校にテロリストがやってきた。
ほんとは、私があっち側にいるはずだった。
平民の私が、テロリストと内通しているはずだった。
そして、学校を我が物顔で闊歩しているアイツらを殺すはずだった。
特に、平民の私を見下してパシリにする皇太子。
暎仁のクソ野郎をこの手で殺すはずだったのに。
でも、私はそんな妄想をしていただけだ。
実現させようなんてことは毛ほども思っていなかった。
すごい。
クラスで二軍の、一軍に従ってヘラヘラしているだけのアイツが、こんなことをするなんて。
羨ましい。
私もあっち側に行きたい。
え?
アイツの姿が変わった?
黒い短髪が白くなった。
ところどころ黄緑色やピンク色が混じっている。
日焼けしていた肌が白くなって、目尻のあたりにも黄緑とピンク。
ヨーロッパのパーティーで使われてそうな高そうな帽子が出てきた。
臙脂色の燕尾服。
なんだあれは。
風がアイツの足に集まる。
アイツが飛ぶ。
足元に竜巻を起こしながら。
そして、こっちに向かってくる。
コッチニムカッテクル。
ナンデ?
ワタシヲオヒメサマダッコスル。
ナンデ?
「お前、こっち側につけ」
*
「おいハーミット!聞いてねえぞ!」
「あはは!ごめんごめん!」
足元の竜巻の形を変える。
とても大きなドラゴンに。
僕とパワーとパワーの軍全員が乗れるくらい大きなドラゴンに。
「帰るぞ!俺たちの基地に!」




