(9)繋ぐ櫛
数日後、オレとハナちゃんは、ババ様とじー様に顛末を報告するために千丘寺に行った。ババ様は、
「そうか、本家の我も取り返してくれたか」
と言って、また茶を入れてくれた。
じー様は、ご神体に二度と災難が降りかからぬよう、守り刀として祠の中に一年の小刀を入れるようしたんじゃと教えてくれた。すると、ハナちゃんはじー様とババ様の前に正座をし、ザックの中から木箱を取り出した。中には櫛が入っていた。
「和尚様。いろいろ考えたのですが、この櫛をお寺でお預かりいただけませんでしょうか」
と言った。
せっかく受継いだ櫛を、どうしてだ、という表情をしながら、じー様は、
「よろしいのか」
と聞いた。
ハナちゃんは、
「はい。元は金色のババ様が礼子さんにお与えになり、それを千早ちゃんが受け継ぎ、千丘寺の元となる修学院のお寺に預けてくれたからこそ、今こうして私の手元にあります」
と言って、朱色のババ様を見つめ、
「ババ様は以前、この櫛は私たちと千早ちゃんたちを繋ぐものだと仰ってくださいました。私たちが繋がれるよう、ババ様と千丘寺の歴代の和尚様がこの櫛をお守りくださったからこそ、千早ちゃんたちと繋がれたんだと思っています。なので、この繋がりをこれからもずっとずっと続けていくには千丘寺さんで、ババ様のそばでお預かりいただくのが一番いいと考えたのです」
ハナちゃんの話を黙って聞いていたじー様は、
「よくわかった、そう言うことなら、お預かりしよう」
と言って、木箱を大事そうに受け取ってくれた。
その後、最澄さんの岩に千姫が彫ったという言葉を見に、比叡山に登った。
そこには「ヤセ ハナへ 皆無事」
とあり、その隣に、
「お二人に幸あれ」
と彫られていた。
「この前、この文字を見た時も思ったけど、私たちから千早ちゃんたちに何かを伝える方法がないのが残念…」
ハナちゃんは、文字を指でなぞりながらそう言った。
オレたちはそのまま千種さんの石碑の丘まで登り、両手を合わせ、そして今回の顛末を話した。ふと見れば、空の上にはヤタガラスがくるくると飛んでいた。千種さんがよくやったと褒めてくれているような気がした。
そのカラスを見ながらハナちゃんが、
「ねぇ健太郎。千早ちゃんたちとコミュニケーション取る方法って、本当にないかしら」
と聞いた。
オレもカラスを見上げ、
「そうだなぁ…今度ダメ元でババ様に相談してみるか!」
次の週末、オレとハナちゃんはまた寺を訪ねた。




