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(5)下鴨警察にて

千丘寺を後にして、叡電で出町柳に戻った後、オレたちは「ふたば」で豆餅やらおこわやらお赤飯を買った。ハナちゃんにみんなをデルタに連れて行くようお願いして、オレは飲み物を買いにコンビニに寄った。去年は面白がってコーラとか買ったけど、今日は素直にお茶にしておいた。


そしてデルタでは車座になってみんなで食べた。

シュークリームが美味しかったです、と言って懐かしがる千早に、源太が溺れたのはあの辺でしたぞ、と笑う正孝。

「四手井殿、今度コーラなるものを飲んでみてください」

といたずらっぽく笑う源太。

みんなこういう時はフツーの若者なんだなぁ、としみじみオレは思った。


しかし、彼らの格好は相変わらず目立つ。みんながじろじろ見ながら通り過ぎる。観光客と思しき外国人は、オー、サムライ!と言って写真を撮っていた。

「して、八瀬殿。これからいかがいたす」

と一年が聞くので、

「うん、それなんだけど、まずはご神体盗難の情報を教えてもらいに下鴨警察の四手井さんに会ってみようと思う」

「ケイサツ?」

と佐平太が聞くので、

「あ、あぇ、えぇっと…侍所?みたいなところ」

とオレは答えた。

「その後は、佐平太さんが仏像を見た、と言ってたから薬師堂まで登るよ! もしまだ仏像があれば取り返すチャンスだし」

「でも健太郎、もしかしたら窃盗団がいるかも」

「その時は、某たちの出番でござるな」

「頼りにしてるよ、源太!」

そうしてオレたちは下鴨警察に向かった。


下鴨警察に着く前、オレは一年と正孝と源太には、何があっても刀は抜くな、弓も引くな、顔に笑顔だ、忘れるな!と口酸っぱく言って聞かせた。


警察署では、まず入り口で止められた。そりゃそうだ。矢筒を背負い、刀を差したサムライ風情の若者が四人。止めない方がおかしい。オレは、

「侍の映画をデルタ周辺で撮るので、道路使用の許可申請に来ました」

と言ったら、あっさりと入り口は突破できた。


署内に入ったら、中にいた人がみんなオレたちを見たが、オレは素知らぬふりで受付に行き、じー様にもらった名刺を見せ、

「千丘寺のご神体盗難の件で、四手井警部補にお話があってきました」

と言ったら、受付の女性は、オレたちを見まわしてから、

「お名前は?」

と聞いた。

オレは咄嗟に、

「四手井佐平太です」

と言った。


するとその女性は、あら弟さん、というような表情で、

「少しお待ちくださいね」

と言って、内線で四手井警部補に電話し、

「弟さんがお見えですよ」

と言った。


いやそう来たか。会議室にでも通してくれると思ったのに、ここに四手井さんが来て、こんな弟はいないとか言って騒ぎになったらまずいな、と思ったら、

「はい? 第2ですか? はい、わかりました」

と言って電話を切った。

「そこを右手に行って、第2会議室と言うのがありますから、そこでお待ちくださいって」

なんと、ここも突破した!


第2会議室で待っていると、数分もしないうちに二人の刑事さんが入ってきた。四手井警部補と、もう一人は、おそらく高野警部補だろう。

部屋に入りオレたちを見るなり、後ろ手にドアを閉める手が止まり、眉間に深いしわが寄る。

おれは極力平静を装って、

「四手井警部補でしょうか?」

と尋ねた。

「四手井だが…そちらは?」

オレは佐平太に顎で合図を送る。

「某は、山科は音羽村の四手井佐平太と申す。此度の千丘寺のご神体盗難、並びに当家毘沙門木像の盗難について、子細を伺いたく馳せ参じ仕った」

と言った。続けて、四手井さんの顔を見ながら、

「そこもとのお国はどちらであるか」

と聞いた。


四手井さんと高野さんは顔を見合わせ、いかにもヘンなのが来ちゃったな、と言う顔をしながら、まぁ座ってと手で合図してくれた。

座るなり高野さんが、

「映画?」

とオレに聞く。

「ですよね、そう見えますもんね」

と答える。

「お二人もお時間ないでしょうし、我々もこれから窃盗団をやっつけに行くので、単刀直入にぶっちゃけて言います。彼らは700年前から来た本物の侍です!」


面談書か何かだろうか、オレの言葉を聞いてメモをしていた四手井さんのボールペンを持つ手が止まる。そして、ふざけてんの?と言う顔でオレを見る。

「いやいやいや、マジですよ! 彼らと一緒に窃盗団をやっつけに行くところです。でもその前に、千丘寺の和尚様にお二人がご神体盗難の捜査の担当をされていると聞いたので伺った次第です」

「うん、担当はしてるけど、捜査の内容は教えられないよ」

「そこを何とかお願いします! 千丘寺から盗まれた祠の中のご神体のババ様が私の夢枕にまで立って急を知らせてくれたんです!」

とハナちゃんも懇願した。

しかし、

「夢枕って…」

四手井さんと高野さんは、ますます面倒くさい連中の相手をする羽目になっちゃった的な顔でため息をついた。

オレが続ける。

「では、我々から有力、かどうかはわかりませんが、捜査協力の一環として情報提供します。こちらの四手井佐平太さんが、大文字山から毘沙門堂に向かう途中にある薬師堂と言うお堂の中で、そこにあるはずのない仏像を何体か見掛けたそうです」

と言って佐平太を見る。


「そこは薬師堂故、本来は薬師如来様が鎮座すべきお堂。しかし数日前に某が見たのは、阿弥陀如来様や大日如来様、弥勒菩薩様など、本来そこにあるはずのない仏様ばかりでござった。もしや千丘寺のご神体の盗難と関りがあるのではないかと」

と説明してくれた。

「そんなわけで、我々はこれから薬師堂に向かうところです。薬師如来様以外の仏像があれば、全部持って帰ってお届けに来ますね。きっとどれもこれも盗難届の出ている仏像ばかりでしょうから。あ、文化財だから文化庁に持って行った方がいいですかね」

と、情報は伝えましたからね、後で窃盗団逮捕に民間人のお手柄、とかニュースになって責任問題になっても知りませんよ、という皮肉を込めて、オレは言った。


そして、思い出したようにスマホを取り出し、佐平太と出会った時に、ここが700年後の未来であることを信じてもらうために撮った写真を開いた。背景をズームすると、案の定、仏像が何体か写っている。

「ここに写っている仏像で、盗難届の出ているものがないですか?」

高野さんと四手井さんが顔を寄せてくる。メガネを指で持ち上げながら、じーっと見つめる高野さん。やがて、

「おい、これとこれ。被害届の出てた仏像に似てないか?」と言った。

「そうですね、見た感じだとそっくりですね」

と四手井さん。


しばらく顔を見合わせたまま黙りこくる二人。そして高野さんが言う。

「お前、薬師堂…知ってるか?」

「いえ、わかりません…」

「では、我々が案内しましょう。仏像があっても触ったりしませんから、それならいいでしょう?」


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