6話 夢
夢の中では、時間がはっきりしない。
朝なのか夜なのかも分からない。
ただ、空気だけが重い。
人がいる。
でも、顔はよく見えない。
誰かが言っている。
「まだやれるやろ」
別の声が重なる。
「なんで諦めたん?」
答えようとするけど、
口が動かない。
景色が変わる。
長い机。
並んだ椅子。
白い紙。
どれも見覚えがあるのに、
どこか決定的に違う。
ペンを握らされる。
重い。
書け、と言われている気がする。
でも何を書くのかは、誰も教えてくれない。
背中に視線を感じる。
比較されている感じ。
数字。
順位。
名前。
自分のものだったはずの夢が、
いつの間にか
他人の基準で測られている。
息が苦しくなる。
「一番にならな意味ないやろ」
その言葉だけは、
はっきり聞こえた。
次の瞬間、場所が変わる。
狭い部屋。
夜。
机に向かっている自分がいる。
必死で、何かを積み上げている。
声をかけようとする。
やめろ、
それ以上やるな、
壊れるぞ。
でも、その自分は振り返らない。
――まだ足りない。
そう呟いている。
胸の奥が、鈍く痛む。
次の瞬間、
全部が途切れる。
⸻
目が覚める。
まだ暗い。
正午には早い。
呼吸を整える。
夢の内容は、すぐには言葉にならない。
ただ一つだけ、はっきりしていることがある。
あの場所には、もう戻れない。
それでいい。
体を起こし、
もう一度、目を閉じる。
今の自分には、
正午から始まる生活がある。
それだけで、十分だ。




