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5話 朝六時
朝六時。
アラームは鳴らさない。
目が覚める理由は、だいたい同じだ。
眠りが浅くなる時間が、いつもそこにある。
カーテンの隙間から、まだ冷たい光が入ってくる。
昼とは違う色だ。
水を飲む。
朝ごはんは食べない。
胃に何も入れない方が、
考えが奥まで潜れる。
机に向かう。
椅子を引く音が、部屋の中で浮く。
ノートを開く。
今日やることは、もう決まっている。
読む。
考える。
書く。
それ以上はやらない。
以前は、ここに欲張りが混ざっていた。
もっとやれる。
まだ足りない。
他の人はもう先に行っている。
全部、本当だった。
だから、止めた。
ページをめくる。
ペンが止まる。
ふと、
「この時間を誰かに見られたらどう思うだろう」
と考える。
きっと、無駄だと言われる。
効率が悪いと言われる。
普通じゃないと言われる。
それでもいい。
この時間は、
評価されるための時間じゃない。
壊れないための時間だ。
時計は見ない。
見たら、比べてしまう。
外で鳥の声がする。
まだ、人の声じゃない。
しばらくして、布団に戻る。
二度寝だ。
逃げだと思われてもいい。
逃げた先で、ちゃんと戻ってきている。
次に起きるのは、正午。
そこから、今日が始まる。




