2話 正午
目を開けると、部屋が明るすぎた。
一瞬、何時か分からない。
カーテンの向こうが完全に昼の色をしているのを見て、ようやく理解する。
起きる。
時計は見ない。
キッチンに行き、水を飲む。
喉の奥に、朝の冷たさとは違う温度が残る。
ブランチを作る。
特別なものじゃない。
簡単で、失敗しようのないもの。
食べながら、今日の予定を思い出す。
予定は一つだけ。
外に出るか、
誰かに会うか。
両方はやらない。
やろうと思えばできるけど、やらない。
以前は、空いている時間が怖かった。
何かしていないと、置いていかれる気がしていた。
今は違う。
空白は、体力みたいなものだと分かった。
皿を洗う。
水の音が、やけに現実的だ。
窓を少し開けると、外の音が入ってくる。
話し声。車。生活。
自分もその中に入っていく予定だ。
でも、急がなくていい。
正午から始まる一日は、
誰かと比べるための一日じゃない。
今日は、身体を動かす日にしようと思う。
それだけで十分だ。
財布と鍵をポケットに入れる。
玄関で靴を履きながら、ふと思う。
この生活を説明しろと言われたら、
うまく言えないだろうな、と。
だからたぶん、
説明するために生きているわけじゃない。
ドアを開ける。
昼の空気が、思ったより優しい。
今日が始まる。
もう半分終わっている時間から。




