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第33話:夜明けの思索、心通わせる邂逅。

 脅威が去り、張り詰めていた一同の緊張の糸は、プツリと切れたかのように緩んだ。

 その夜は皆、宿のベッドで泥のように深く眠りについた。

 夜明け近くまで戦っていたはずなのに、響夜は早朝、独り静かに目が覚めた。

 まだ薄暗い街の通りを、ふらりと独り散歩する。

 人の気配がほとんどない中、彼は陽の光が差し始めようとする見晴らしのいい公園のベンチに腰を下ろした。

 彼は、自らの力について考えていた。


 『力の使い方の難しさ』


 『聖魔法剣』という光の力と、暴走した闇の力。

 二つの相反する力を持ちながら、それをどう制御し、どう使うべきか。

 まだまだ、上手く制御出来ていない面もある。

 その重さに、時折、息苦しさを感じる。


「『清濁併せ呑む』か……。本当に難しい」


 響夜はぽつりと呟いた。

 その時、背後から陽気な声と共に、ひょっこりと顔が覗く。


「なにがー?」

「うわ!びっくりした!!」


 思わぬ声に、響夜は飛び上がらんばかりに驚く。

 ラジアナは、その反応に悪びれる様子もなく、コロコロと楽しそうに笑った。


「あはははは!!」


 彼女は身軽にベンチの背もたれを乗り越え、響夜の隣にストンと座る。


「脇腹の傷はもう大丈夫なのかー? 抉られてただろ?」

「あ……うん。掠り傷だったから、ほとんど自分の回復力で治ったよ」

「へえー! 人間なのに凄いな! 僕ら竜族も頑丈だけが取り柄だから、回復力はめちゃくちゃ高いぞ!」

「まあ……俺の場合、ちょっと特殊って言うか、他の人間とはまた違うんだけどね」


 響夜が曖昧に答えると、ラジアナは響夜の目を真っ直ぐに見つめ、屈託のない笑顔で頷いた。


「うん! そうだな! キョウヤは特別だ。一緒に過ごしてきて、凄く良く判った!」


 その言葉には、一切の打算や偏見がない。

 ただ純粋な、響夜への好奇心と好意が込められていた。

 だからだろうか、響夜にとって、ラジアナの言葉は決して嫌な気はしなかった。

 むしろ、少しばかり胸の奥が温かくなるのを感じる。

 ラジアナは、朝日を背に浴びせながら、何かを決意したように、突然宣言した。


「決めた! 僕、キョウヤ達と一緒に行く!」

「えっ?!」


 あまりにも唐突な申し出に、響夜は思わず素っ頓固な声を出してしまった。


「なんか楽しそうだ! 一緒に行きたい!」

「…………」


 響夜は困惑し、言葉が出ない。

 彼の沈黙に、ラジアナが少しだけ不安そうな表情を浮かべる。


「イヤか?」


 縋るように見詰めるラジアナの瞳に、響夜はゆっくりと首を横に振った。


「……でも、なんでまた……」


 戸惑いながらも問いかける響夜に、ラジアナはベンチに座り直しながら、真剣な表情で語り始めた。


「キョウヤ達と一緒なら、まだまだたくさん色んなことを学べそうな気がしたんだ! こうして毎日、この街で鉱石掘って、魔導具作って、また掘って……そんな生活も楽しいけど、まだまだたくさん色んな世界を見たい!」

「…………」

「本当なら僕、丁度この地を出て旅をしようと考えてた所だったんだ。まさか、こんなタイミングでキョウヤと出会えるなんてね!」


 彼女の瞳は、未来への期待に満ちている。


「なあ? ダメか?」


 再び、縋るように響夜を見詰めるラジアナ。その純粋な瞳を見て、響夜は優しく微笑んだ。


「……俺、また迷惑かけちゃうかもしれないけど、ラジアナが嫌じゃないなら、一緒に来てくれると嬉しいな」


 その言葉を聞いた瞬間、ラジアナの表情が、パアッと歓喜に変わった。

 まるで幼い子供のように無邪気に、彼女は響夜に勢いよく抱き付く。


「ありがとう! キョウヤ!! 僕、とっても嬉しいよ!!」


 予想外の突撃抱擁に、響夜は少し戸惑いながらも、その温かさに、彼もまた心が満たされていくのを感じていた。


 そして、ハプニングこそあったものの、その後は武具の製作も滞りなく進み、今はもう最終仕上げの段階に入っていた。

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