表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/26

第23話:鍛冶師見習い少女の意外な正体。

 響夜(きょうや)たちは、新しい武具が完成するまでの一週間、『イーストブルグ』に滞在する事になった。

 その間、ラジアナが快く街を案内してくれる事になった。


「こっちが僕のおすすめの工房だよ!色んな素材を扱ってるんだ!」

「うわぁ、本当にいろんな種類があるんですね!」

「見て!このアクセサリー、すごく可愛い!」


 ラジアナの案内で、響夜たちは工房やアクセサリー店を巡り、この街の多彩な名産品をたくさん見て回った。

 ドワーフたちの職人技が光る品々に、一同は感嘆の声を上げるばかりだ。

 そんな中、武具を制作する際、肝心な一部の材料が不足していることが判明した。


 * * *


「ええっ?……困ったわね。これじゃ、滞在期間までに完成しないわ……」


 新しい武具を一番心待ちにしていたティアは、弓を引く弦が切れたように、残念そうに肩を落とした。

 傍にいたドワーフの職人たちが、顔を見合わせ、声をひそめる。

 

「仕方ないですね。素材を取りに行くにしても、この辺りのオーガの森は魔獣が多くて危ない。私たちで手配するしか……」

「でも、どうすんだよ?だとしても間に合わねぇぜ?親方にこの事を知られたら…」

「う……。ラジアナお嬢の親父さん…めちゃくちゃ怖えからな…」

「いや……この場合、おフクロさんの雷の方が……」


 職人たちは顔面を蒼白にしながら、ラジアナの両親の「雷」の恐ろしさについて、小声でどよめき合っている。


 そんな職人たちの後ろで、リゼッタはチラリと響夜の顔を見た。

 その瞳には、"マスターを危険な目に遭わせたくない“という強い懸念が滲んでいる。

 リゼッタが何か言い出すよりも早く、響夜は一歩前に出て、工房の職人たちに頭を下げ、声をかけた。


「あの、よろしければ、俺が素材集めの手伝いをしますよ?」


 工房のドワーフたちは、一斉に目を見開いて、響夜を振り返った。


「いやいや、客人にそんなことはさせられませんよ!材料不足は私どもの不手際ですから、どうか滞在中はゆっくりとなさって下さい!」


 職人たちは申し訳なさそうに両手を振って拒否する。

 しかし響夜は、彼らの気持ちを理解しつつも、真剣な瞳で再び微笑んだ。


「俺は一応、冒険者です。それに、工房のお世話になっている身ですから。お礼と言ってはなんですが、何かお役に立てればと」


 響夜の真っ直ぐな言葉と優しさに、ドワーフの職人たちは頭を悩ませながらも、何かを察したように、やがて顔に笑みを浮かべ、深く頷いた。

 職人の代表が、大きく息を吐きながら、深々と響夜に頭を下げる。


「わかりました。そこまで言ってくれるなら……どうか、宜しくお願いします」

「でも、どうするんですぅ?こんな事……親父さんに知られたら…」


 再びどよめき始める職人たち。

 そのとき、工房の奥からひょっこり娘であるラジアナが顔を出した。


「OK!父ちゃんには黙ってておくよ!」


 ラジアナの父親が娘に甘いことを知っている職人たちは、一斉に肩を撫で下ろし、この場は丸く収まった。

 そして、素材を取りに行くことになり、ラジアナが自ら同行を申し出た。


「大丈夫!僕が案内するから!」


 そして、素材が採取出来る場所へ向かう途中、ラジアナは突如としてその姿を変えた。

 彼女の体が光に包まれ、驚く響夜たちの目の前で、巨大な竜へと変化したのだ。


「えええーーっ!?」


 響夜とティア、リゼッタは同時に叫んだ。

 あまりの出来事に言葉を失う。


「あれ?言ってなかったっけ?僕、『エンシェント・ドラゴン』なんだー!」


 ラジアナは、全く悪びれる様子もなく、あっさりと自身の正体を明かした。

 呆然とする響夜(きょうや)たちを他所に、ラジアナは楽しそうに尻尾を振る。


「さ、僕の背中に乗って!すぐ着くから!」


 呆気(あっけ)に取られながらも、響夜とティア、リゼッタの三人は、巨大な竜と化したラジアナの背に乗った。

 空を駆ける竜の背からは、『イーストブルグ』の街が宝石のようにきらめいて見えた。


 ラジアナの背に乗って到着したのは、大柄で力強い『オーガ』が生息する森だった。

 高い体力と攻撃力を持つ種族だが、響夜たち四人にかかれば全く問題はない。

 響夜の魔法剣、ティアの治癒魔法と弓術、リゼッタの吸血鬼としての身体能力、そしてラジアナの竜としての圧倒的な力。

 連携の取れた攻撃で、オーガたちはあっという間に倒されていく。


 オーガと戦う響夜を見ていたラジアナは、彼の魔法剣に目を奪われた。

 まるで生きているかのように輝き、状況に応じて変幻自在に形を変えるその剣に、彼女の職人としての魂が揺さぶられたのだ。


「キョウヤ!君のその魔法剣、すごく面白いね!僕に、オーダーメイドの剣を作らせてくれないかな!?」

「えっ…それは、願ったり叶ったりだけど」

「じゃあ決まりだね!」


 「腕が鳴るぅー!」と、興奮気味に喜ぶラジアナ。

 帰還中も、楽しそうに武器の性能の話や、相性の事など、たくさん話をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ