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第8話:大規模討伐戦へ!そして、思惑と真意。

 バルドとの決闘から数日後。

 響夜(きょうや)のギルドでの評価は、噂となって冒険者の間で囁かれ始めていた。

 ギルド長の瑠華(るか)も彼の能力を正式に認めたものの、その真価を知るのはまだ一部の者に限られていた。

 特にバルドは、響夜の圧倒的な力に純粋な戦士としての興奮と尊敬を抱き、良き戦友となった。


 そんな折、ギルド本部に、普段はあまり表に出ない特別な依頼が舞い込んだ。

 それは、街の北に広がる広大な『聖なる森(サンクトス)』の守護者からの緊急の要請だった。



 * * *



 ギルド本部の大会議室。

 そこに集まっていたのは、バルド率いる『緋色(ひいろ)(つるぎ)』の精鋭たち。

 そして先の響夜(きょうや)とバルドの決闘に立ち会い、箝口令(かんこうれい)を敷かれたギルド幹部や、ごく一部の上級冒険者たちだけだった。

 重苦しい沈黙が漂う中、ギルド長の瑠華(るか)の隣に立つカインズが、前に一歩進み出た。

 彼のいつも冷静な声には、微かな緊張が混じっていた。


「ここ数ヶ月、北の山脈に根を張る魔族が異常なまでにその数を増やしている。『森の守護者』からの報告によると、魔族は森の深部へと侵食を始め、聖なる水源にまで影響が出始めているとのことだ。このままでは、街への脅威となるのは時間の問題だろう」


 カインズの説明を聞きながら、バルドが腕を組み、唸るように問いかける。


「ちっ、マジかよォ。そんなに増えてんのかァ、アイツら。『森の守護者』ってのは……あの隠居ジジイ共か?」

「『守護者』からの正式な依頼だ、バルド。軽んじるな」


 カインズがぴしゃりと返し、バルドは「はいはい」とでも言うように片手を振って流した。

 瑠華(るか)は扇で口元を隠し、静かに状況を見守っている。


「今回の討伐には、王都からも精鋭の騎士が十二名派遣される。指揮は私が執る」


 カインズは響夜(きょうや)にまっすぐ視線を向けた。


「お前には、この討伐戦に同行してもらう。だが、一つ条件がある。王国の騎士たちの前で、お前の持つ『魔法剣』を決して見せるな。代わりとして、この剣を貸し与える」


 そう言って、カインズは無骨だが使い込まれた片手剣を響夜に差し出した。

 その剣は、騎士たちが普段使用している制式なものだった。

 響夜は困惑しつつも、差し出された剣を受け取る。


「どうして、俺の剣では駄目なんです?」


 響夜の問いに、カインズは冷徹な瞳の奥に、何かを探るような光を宿らせた。


「お前の力は、まだ世間一般では伏せられている。そのような異質な力、まだ周囲に知られるわけにはいかない。そして……」


 カインズは間を置き、警戒心を込めた視線で響夜を見据える。


「この戦で……お前自身の真意を見極めさせてもらう」


 その言葉の裏に隠された意味を察しきれず、響夜はただ頷くしかなかった。


「キョウヤ!カインズの言う事聞いておけよ!コイツは堅物だが、言う事は的を射てる。聞いてて損は無えってな!」


 バルドが響夜の肩を叩き、豪快に笑う。


「バルド、騒がしい」


 カインズが低い声で(たしな)めるが、バルドは全く気にする様子がない。

 今回の討伐戦には、響夜はもちろんのこと、バルド率いる冒険者チーム『緋色(ひいろ)(つるぎ)』の精鋭たち、そして他の複数のパーティーも参加を表明し、文字通りの大規模討伐戦となった。

 ティアも響夜(きょうや)を心配し、自身のCランク冒険者としての務めを果たすべく、討伐隊に同行を志願した。


 会議が終わり、部屋を出た響夜とティア。

 ギルド本部の長い通路を歩きながら話す。


「キョウヤさん、私もご一緒します! 足手まといにならないよう、頑張りますから!」


 ティアが少し緊張した面持ちで響夜に告げる。

 響夜は、軽くティアの肩を叩く。


「うん。一緒に頑張ろう、ティアさん。でも、無理はしないで」

「……はい」

「それと……」

「?」

「俺の事は呼び捨てでいいですから」


 少し照れながら笑みを零す響夜。

 ティアも微笑みながら言い返す。


「なら…キョウヤ…!私の事も呼び捨てで呼んで…ください!」

「わ…わかった。て…ティア」


 ティアは嬉しそうに、そして少し照れ気味に俯く。

 響夜は照れ隠しのためか、後頭部を掻いて明後日の方を向いた。

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