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ゴーストノートを消えていく君に  作者: 上村夏樹
TRACK・4 最後だから、すべての想いを込めた曲
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そして君のいない季節がやってくる

 数日が経った、ある日の放課後のことである。


 俺と由依は職員室前の廊下にやってきた。


「三崎くん。同好会のチラシ、どこに貼ればいいかしら?」


 由依は掲示板を前にして俺に尋ねた。


「真ん中にしよう。こういうのは目立ってなんぼだ」

「ふふっ。なんかその言い方、陽葵みたいだわ」

「おい、それは心外だ。俺はあいつと違ってデリカシーあるし、奥ゆかしいだろ。大和撫子と見紛う紳士だと自負して」

「ここにしよっと」

「話聞けよ!」


 くすくす笑いながら、由依は掲示板のど真ん中にチラシを貼った。


「うん。なかなかのデキね」


 由依が掲示板を眺め、満足げに頷いた。

 チラシには、「軽音楽同好会メンバー募集中! ボーカルとギターは大歓迎!」と書かれている。


「新しいメンバーが加入したら、陽葵は嫉妬したりしないかしら?」

「大丈夫だ。しないよ、きっと」


 俺たちの演奏を天国で聞くこと。

 それが陽葵の新しい夢だから。


「三崎くん。これからどうする?」

「チラシを印刷して配りまくろう」

「あら。勧誘活動するの? やる気満々ね」

「……人見知りだから緊張する」

「ダサっ」

「言うな! 自分でもわかってるから!」

「ふふっ。陽葵に笑われるわよ?」

「うっせ。どうせあいつは何してもからかってくるんだ。笑わせておけ」


 悪態をつきながら、二人で廊下を歩く。


 陽葵がいなくなっても、俺たちの話題の中心は彼女だった。まだ亡くなった悲しみが癒えないのだから仕方ない。俺たちは弱虫だから、しばらくは引きずってしまうだろう。


 でも大丈夫。

 ちゃんと前は向いているから。


 なあ、陽葵。

 俺たちの新しい音楽、楽しみにしていてくれよな。


「三崎くん。早くビラを配りに行くわよ。もしや怖気づいたんじゃないでしょうね? 足、震えているんじゃないの?」


 前を歩く由依が振り返り、意地悪な笑みを浮かべている。


「馬鹿言え。これは武者震いだ」


 笑って言い返し、由依を追いかけた。




 夢中で駆け抜けた、青い夏は終わった。


 そして、君のいない新しい季節がやってくる。


(完)

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