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第44話 『好きなモノ紹介 その3』

「次はどこへ行くんだ?」


「えーっとねぇ……ふふふ?」


「何をもったいぶってるんだ!?」


「えへへ〜」


 コスメショップを出て私たちは次の目的地へと歩を進めていた。

 特に次はここへ行く!ということは柊斗には言ってないので、そんな彼が思う当然の疑問ではあると思うが、なんだか一回もったいぶってしまったし、次はどこへ行くんだろうとなんだか不安とワクワクが入り交じっている柊斗の表情を見るのも楽しい。

 私はそう思えてきた。


 やっぱり柊斗といるのは飽きないなぁ〜。



 


 ******



 

 

「……次は柊斗の服を選ばせてよ!」


 街中のオシャレな服屋さんの前に着いたとき、私は柊斗にそう提案した。


「なるほど、服屋か」


 ふむふむ、と頷く柊斗。

 まぁオシャレ繋がりで行けば妥当な選択肢だとは思う。

 

 しかし彼は少し考えたあと、少し驚いた顔をしてん?となって、立ち止まり、首をかしげる。


「え、でも今日は紗良の好きなことをする日だろ? 俺の服を選ぶなんて……」


 まぁそれは当たり前の疑問なのかもしれない。

 お互いが好きなモノを相手にプロデュースする、簡単に言えば自分の好きな事に付き合って貰う、そんな感じだ。

 なので彼の感覚からしたら今日は紗良の好きなモノ巡りに付き合うってなってたのになんで俺の服なんだぁ?って感じだろう。

 でも、


「これがウチのやりたいこと! 大丈夫、大丈夫!」

 

 そうなのだ。柊斗に自分好みの服を着させてあげたい。どんな柊斗になるのかは分からないが、色々な柊斗の色を見てみたい、そう思ったのだ。

 私そう言って軽く手を引くと、柊斗はため息をつきながらも笑顔を見せてくれた。


「紗良がそう言うなら……分かったよ。でも、期待はしないでくれよ?」


「何言ってんの! 絶対かっこよくするから任せて!」


 私はドン!と胸を張った。

 こうして、私たちは服屋さんの中へと足を踏み入れた。




 ******


 


 店内は明るくて開放的で、棚には最新のトレンドアイテムがずらりと並んでいる。

 私はその中から「これは!」と思う服を次々と選び、柊斗に渡していった。


「まずはこれ着てみて! 似合うかどうか分からないけど、挑戦してみよ!」


 渡したのは派手な柄シャツと、奇抜なデザインのパンツ。

 それを受け取った柊斗は眉をひそめる。


「いや、どう見てもこれ、俺に似合わないだろ……」


「いいから! 試してみて!」


 私は笑いながら柊斗を半ば強引に試着室に押し込んだ。


 そして数分後。


「出来たぞ……」


 と、ボソッと試着室の中からそんな声が聞こえてきた。いかにも自信がなさそうな声だ。

 まぁ……正直なことを言ってしまえば最初の服は柊斗に似合うと思って私は選んでないからなぁ。なんか楽しそう!っていう私の私情でしかない感じで彼に服を押し付けてしまったから。


「見せて見せて!」


 まぁともかく、見せてくれ!柊斗!


「……笑うなよ?」


「絶対笑わないから!」


 やばい、もう既に笑いそうだ。あんなもの似合わないに決まっている。

 試着室のカーテンがそっと開き、そこから姿を現した柊斗。主張の激しい柄シャツと、濃い赤色の色物のズボン。主張が激しすぎるが故に、着こなせてしまえばオシャレ超上級者……?なのかもしれないけど、柊斗に関してはもちろんそんなことはなく……。

 なんだか芸人のようだった。

 私は堪えきれず吹き出してしまった。


「ちょっと、柊斗、似合わなさすぎ!」


 全身柄物に身を包んだ柊斗は、鏡の前で固まっている。


「お、おいっ、笑わないって言っただろ!?」


「だ、だって……似合わなさ過ぎっ……ぷふふ、はははは!」


「笑いすぎだろ……」


 少し呆れながらも、満更でもなさそうな表情をうかべる柊斗。彼女が喜んでくれてるならまぁいいか……とか思ってくれてるのだろうか。優しすぎか。


「……なんだこれ。本当に俺が着るべき服か?」


「いや、ないない! これはさすがに笑っちゃうよね!」


 お腹を抱えて笑う私に、柊斗も思わず苦笑いを浮かべる。


「おい、改めてそんなに笑わなくてもいいだろ!」


「だって、こんなに面白いの初めてだもん!」


 冗談交じりのやり取りに、二人の雰囲気が一層明るくなる。


「でも、そろそろ本気で選ぼうかな」


 ひとしきり大笑いした後、私は改めて真剣な気持ちで棚を見回した。


「柊斗には、シンプルで清潔感のある感じが似合うと思うんだよね」


 そう言いながら、無地のシャツや落ち着いた色味の細身のパンツを選び出す。


「さっきと真逆じゃないか」


「だ、だって、ぷふ、やばい思い出しただけで笑えて来た」


「わ、笑いすぎだよ……」


「はは、ごめんごめん!」


 いったん頭から柄シャツ色目のズボン柊斗を無理やり引き剥がし柊斗の服選びに私は集中した。


「これなら絶対似合う! 試してみて!」


 柊斗はまた変なのを選んでくると思ってたのか、意外とまともなチョイスに少し驚いた様子だった。


「お、おお、これならいいかも」


「じゃあお願いします!」


「分かった」


 柊斗はそう呟きながら、再び試着室に向かった。


 数分後、カーテンが開いて、そこに立っていたのは、見違えるように垢抜けた柊斗だった。


「え、めっちゃいいじゃん!」


 思わず声が出てしまうほど、彼は今までとは全然違う雰囲気を纏っていた。

 清潔感があって、それでいてカジュアルすぎないスタイルが、彼の素朴な魅力を引き立てている。


「本当に?」


「本当に本当に! ね、鏡見てみて!」


柊斗が鏡を見て「……なんか、俺じゃないみたい」と呟く。

 すると、たまたまそこを通りかかったいた店員さんも「すごくお似合いですね!」と褒めてくれた。

 営業的なお世辞なのかもわからないけど、柊斗は「え、そ、そうですか、あざます」とか言っていた。

 ……まぁ良かったね!

 いや、でもお世辞では無いだろう。これはカッコよすぎる!


「紗良が選んでくれたおかげだな」


「でしょ? ほら、信じてよかったでしょ!」


 私は満足げに笑いながら、もう少しアクセサリーなんかも合わせたらどうかな、なんて考えを巡らせていた。



 


******



 


 紗良が「これで柊斗、もっとオシャレに見えるよ!」と言って微笑む。

 その姿を見て、俺は胸がじんと熱くなるのを感じた。


「ありがとう、紗良。俺、こんなに服で変わるなんて思わなかった」


「うん! これからもっといろいろ挑戦してみてね!」


 こうして新しい服を購入し、そこら辺をブラブラしてひとしきり楽しんだ後、俺たちは帰ることにした。


 夕焼けの街を歩きながら、紗良が楽しそうに話している。


「今日は本当に楽しかった! 柊斗の新しい一面も見れたし、これからも一緒にオシャレ楽しもうね!」


「俺も……紗良のおかげでオシャレって少し分かった気がするよ。そしてオシャレって楽しいって少し思えた」


「ほんと……!?そう言ってくれるとめちゃくちゃうれしい!じゃあ、次はもっといろいろ教えてあげる!」


 紗良の明るい声が、まるで夕日に溶け込むように響いていた。

 はぁ……こうやって二人で二人の好きなことをできる、そして共有できるって幸せだな、そんなことをしみじみと思いながら、俺たちの休日は過ぎていくのだった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


次から物語もクライマックスへと入ります!あと数話になると思いますが、最後まで引き続き応援の方をよろしくお願いします!

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