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第18話 『彼女と歩く未来への道』

 

 元カノの麗華から「やり直したい」と告げられた日の帰り道、俺の心は静かな決意に満ちていた。


 紗良という、かけがえのない存在が、どれほど大切で特別なのかを改めて痛感した瞬間だった。


 麗華とのやりとりが完全に終わり、心の中にあった未練や迷いが完全に消え去った今、俺は紗良に本気で向き合いたいという強い気持ちを抱いていた。


「これからは全力で彼女に色々なことを伝えていこう」





 ******




 その翌日、放課後のいつもの帰り道。


「ちょっと寄り道してかない?」


「うん、いいけどどこに?」


「そこの公園とかどう?」


「……ん!いいよ!」


「なんでなんとも言えない微妙な反応なんだ?」


 俺がそう聞くと彼女は慌てて両手を振って否定した。


「いや!そういう訳じゃなくて!なんか柊斗がそうやって公園とか行こうって提案してくるのがなんだか意外で……」


 そんなやり取りをしながらいつもの帰り道から少しだけ外れた道沿いにある公園の、ベンチへと座った。


 そして俺は隣に座った紗良へとそっと声をかけた。


「紗良、ちょっと話があるんだけど……いいかな?」


「ん? なに?どうしたの?」


 紗良はいつもの明るい笑顔で俺を見つめ返してくれる。この笑顔に俺はどれだけ救われただろうか。

 そんなことを改めて思う。彼女の笑顔を見ているとこちらの気持ちも包まれて温かくなれる。


 俺はそんな彼女の真っ直ぐな笑顔に対して、少し緊張しながらも、しっかりと彼女の目を見つめて言った。


「……俺、紗良とこれからもずっと一緒にいたい。これまで紗良にはたくさん支えてもらって、俺のことを心から大事にしてくれて、ほんとにありがとう。……紗良がいなかったら、今の俺はいないんだ」


 紗良の目が驚いたように見開かれる。


 俺が思い切って自分の気持ちを口にしたことが、彼女には少し意外だったのかもしれない。


 けれど、俺には今しかないと思った。

 これからは彼女の隣で、全力で彼女のことを支えていきたいと心から思っているのだから。

 そして全力で気持ちを伝えて行きたいと思っているのだから。紗良が俺にそうしてくれたように。


「紗良が……俺にとって、どれだけ大切な存在か、わかってほしい」


 そう言って真剣な眼差しを向けると、紗良は少し赤くなった顔を伏せて小さく頷いた。

 そしてそれでも、こちらをもう一度見ると、全てを包み込むような笑顔をうかべ、


「……うん、わかってるよ」


 と言った。

 そして彼女は俺の目を真っ直ぐに見つめてこう続けた。


「ウチも、ずっと柊斗と一緒にいたいって思ってるよ。……いつも一緒にいてくれて、ありのままのウチを、そして自分を大事にしてくれて、ほんとにありがとうね。ウチも柊斗がいてくれるから、毎日がすごく楽しい」


 紗良の言葉に胸が熱くなる。

 彼女も同じ気持ちでいてくれると知り、心から安心すると同時に、温かい気持ちがこみ上げてくる。


「……ずっと一緒にいようね」


 紗良は、俺が差し出した手をぎゅっと握り返し、はっきりとそう言ってくれた。その言葉が、どれだけ俺を幸せにしてくれたことか。


 そのまま二人で帰り道を歩きながら、俺たちはこれからのことについて話を始めた。


 紗良は、何気ない話題でも楽しそうに笑い、俺も自然と笑顔になる。

 今までの俺なら、将来について話すことはどこか漠然としていて、自分には関係ないとさえ思っていたが、今は違う。

 隣に紗良がいる未来が、確かなものとして心に浮かんでいる。


 ふと、紗良が言った。


「ねえ、柊斗くん。卒業したら、どうする?」


 その言葉に、未来のビジョンが少しずつ現実味を帯びてきた。


「そうだな……まだ具体的に決まってないけど、どこにいても、俺は紗良の隣にいたい」


 紗良はその言葉に、少し照れくさそうに笑って「私も、同じだよ」と小さな声で返してくれた。

 未来のことはまだ不確かだけれど、彼女と一緒にいる限り、どんなことでも乗り越えられる気がしてくる。


 家に着くころには夕日が沈みかけ、空が淡いオレンジ色に染まっていた。

 紗良は夕焼けを見上げて「きれいだね」とつぶやく。

 俺も同じように空を見上げ、その景色がこれから始まる新しい日々を象徴しているような気がしてならなかった。


「紗良と一緒に、これからもこうしていろんな景色を見たい」


 素直にそう言うと、紗良は微笑みながら「うん、私も」と返してくれた。

 その言葉を聞いた瞬間、俺たちの絆がさらに深まったのを感じた。


 未来がどうなるかはまだ分からないけれど、紗良と一緒に歩んでいく道があることが、今の俺にとって何よりも幸せなことだ。

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