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第8話 幼馴染の悩み事 2

ストーカー。それは所謂変質者。法律では犯罪とされている行為。年に2万件は発生するというこの事件であるが、そうそう身近で起きることはない。

しかし、現に目の前で起こっている。それも被害者は幼稚園から一緒の仲がめっちゃいい幼馴染の女の子。そして僕男の子。


許せねえよなぁ!!!


「まあまあ、宗ちゃん落ち着いて」

「今すぐ現れるよくそ野郎……この手でぶっ潰す」

「不審者だから! 真っ向からやってもさ」

「俺が合気道と空手やってたこと知ってんだろ」


ははは、よくもまあ俺の幼馴染さんに手を出してくれちゃってますねえ! いいぜ? やるぜ? これでも友達に企業の御曹司的サムシングいるんだよ。やろうと思えば色々できるんだぜああん!?


「ほら、人前だから、ね?」

「ぬ……それもそうか」


よくよく考えたらここ人前だったわ。やっべえ、殺意ムキムキMAXにするところだった。相模大原の制服着たまま殺気はさすがにやべえ。しかも俺生徒会だし。


冷静に考えれば警察に届け出ればいいんじゃね? そうじゃん。え? 警察に2回くらいもう届け出たけど解決してない? さいですか。


「それで、これはお願いなんだけど……ストーカーがいなくなるまで、宗ちゃん一緒に登下校してくれない?」

「あ~、なるほど。流石に一人で行き帰りは怖いわな」

「うん。駅までの道で何回か車用のミラーで後ろにつけてきてる人の姿見えてから怖くて……」


なるほど、そういうことならいいだろう。仮に現れても身を挺して守ればいいし。合気道と空手やってたしな。


「ただ、今は挨拶週間で早くに行かないとだから、合わせてもらうことになるぞ?」

「それでも大丈夫!」

「おっけ。了解した」

「ありがとねー。じゃあ、この話はいったん置いといて夜ご飯のこと考えよっか!」


あまりにも俺がキレたから話題にしたくなくなったのだろう。夏帆は強引に話題を夜ご飯の方へと向かわせていった。


  〇 〇 〇


夕方。特に部活動には入ってないはずの氷雨が帰ってきた。俺よりも遅いことが珍しいので何をしてたか聞いてみると、バレー部の助っ人をしていたそうな。運動神経いいからな……たまーに色々なところに助っ人しに行くよなお前。


「え、おにいと夏帆ねえ二人っきりで家でなにを……まさか!」

「何を想像してるんだお前は……っ!」

「そんなチョップあたりますか……って! う、結構重い」

「白羽取りすんな! あと、本当に変な事してねーからな!?」


なんかものすごーく誤解と偏見に満ちた回答を自分の中で形成させた氷雨にチョップをしようとしたら、フツーに白羽取りされた。チッ、これだから運動神経がいいのは。とにかくなんもしていないことをアピールしていると、氷雨は机の上に置かれている勉強道具に注目。どうやら、勉強を教えてもらいに家に来たと思っているようだ。


「えー、つまんな~い」

「つまんないってなんだよ!?」

「さぁ……とりあえず部屋に荷物置いてきちゃお。夏帆ねえとたまにはおしゃべりしたいし」

「逃げたな」

「逃げるが勝ちです」


思春期の妹の思考回路が読めない……なぜか残念そうな顔をした氷雨は、俺から逃げるようにして自分の部屋に行くと、数分後に部屋着に着替えて帰ってきた。今夜お好み焼きなのにそんな漂白剤100回ぶっかけたみたいな白色のやつ着てきていいのか?


その後、最近はあまり来ていなかった夏帆がキッチンでお好み焼きのもとを作っているのを見た氷雨が何かを話しかけている。それに対して夏帆は泊ってくんだ~と言いたげに母さんの部屋にあった服を引っ張って見せる。


そして、原因を聞いて一言。


「鍵忘れたんですか!? 夏帆ねえが!? 珍しい!」


それな。


「明日槍の雨が降りますよ!」

「そこまでかよ」

「そこまでですよ!」

「そうですか」

「っていうか、よかったね。今日が金曜日で。明日授業なら教科書とかが大変だったじゃん」

「うん、ホントそーだよぉ……」


教科書については俺が貸せばなんとかなるとはおもうけどな、と思ったけどそこは我慢。しかし、夏帆が忘れ物はあまりにも珍しいようで、「ねえ、おにい?」とさっきから氷雨は俺に同意を求めてくる。確かに夏帆はしっかり者だからあんまそういうのとは無縁に思える。

でも、やはりストーカーにつけられてるのが精神的に応えているのだろう。じゃないとあの夏帆がアラームかけ間違えたり、鍵を忘れたりはしないはずだ。指さし確認大事だよって昔よく言ってたし。


「え、夏帆ねえストーカーされてるんですか!?」

「おう。それについてはこうこうこういうわけで」


「……マジ?」


マジ。


「えっ、うそ」


ほんと。その相談込みでうちに泊まることになったんだっちゅーの。


「え、許せない」


それな。


「許せない……私の夏帆ねえに!」


いや、お前のではないぞ?



「お、おい氷雨……笑顔、怖い」

「大丈夫ですよ、大っぴらにキレると近所迷惑なので、感情押し殺して静かにキレてるだけだから」

「いや、だからそれが怖いんだって。オーラが”ぶっころ”って言ってるのよ」


なんか、テレビで一発屋の芸人が言っていた「いっけなーい、殺意殺意」モードになった妹の笑顔が怖い。ニコッと表情は笑っているけど、中から抑えきれない怒りの感情が表に出てきて渦巻いている。多分そのオーラだけでそこら辺の野良犬15匹くらい殺せそう。


「もう、そこまで怒らなくたっていいよ~。多分宗ちゃんいてくれればそのうち諦めてくれるだろうし」

「おにい、責任重大ですね!」

「からかうなっての」

「ふふっ、頼りにしてるよー」


結局、数分静かにキレていた氷雨は夏帆の料理を手伝うために台所へと駆けて行った。まだ出来上がるまでに時間はありそうだから、その間に俺は風呂掃除でもすることに。


ちなみに、夕食のお好み焼きは絶品だった。

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