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とある日の昼休み、学校の廊下。凍り付く私の前に立っているのはあの”星ひかり”。同世代アイドルの中で間違いなく一番の売れっ子。そんな人が、私の正体をドンピシャで当ててきた。


あまりの不意打ちに私は一瞬視界がホワイトアウトしかける。真正面からの160km/hストレートには滅法弱いんですよ私。忍者だから。


いや、落ち着け私。”本当の私”のことを知っている人はただ者じゃあない。なので急速に警戒を強める。


「……何者ですか」

「警戒しないで。敵対意思はないし、その点もしっかり説明するわ。ただ――ここで話すのはお互いリスクがあるわ。移動しましょ」


いつも通りの優しい声の奥底に鋭い刃のような、冷酷な部分を聞いたような気がした私は、大人しくついていくことにした。というか、私の正体を言い当てた人をそのままにしておくわけにもいきませんしね。情報屋にとって、姿がバレるというのはかなり致命的なことですし。


そんなこ戸を考えながらついて行き、辿り着いたのは体育館裏。ヤンキーでもいるのかと思ったけど、誰もいなかった。

というか何気に初めて体育館裏きたかも。


「さて、ここなら大丈夫そうね。5年間この学校に通ってて初めて来た場所だし」

「奇遇ですね、私も初めてですよ」

「だったら大丈夫そうね。じゃあ、早速本題に入りましょうカ」

「ええ。ですがその前にまずは何者か名乗っていただいても? おそらく、私と同じ”ちょっと普通じゃない”口なんでしょうけど」


とりあえず、会話の主導権は渡したくない。なんでかって? 怖いから。相手の正体がわからないほどこの世で怖いことはない。私も正体がわからないから裏社会で恐れられている部分が大きい。

だから、私はまず正体が知りたい。話はそれから!


それはひかり先輩もわかってくれているのだろう。こくりと頷いた彼女は、私に向かってブレザーのポケットから一枚の名刺のようなものを取り出してきた。


「……ってこれ、WSSじゃないですか!」

「ええ。私は星ひかり。WSSの特殊派遣員をしている、ちょっと普通じゃない高校生よ」

「いやいやいや、そもそも同年代一の売れっ子アイドルな時点で普通じゃないと思いますが……」


う、うん。それは今は置いといて。WSS……World surveillance system、この名を裏社会で聞かない日はない。英語で分かりにくいので要約すると、アメリカやイギリス、日本を中心に作られた政府による裏社会の監視機構だ。具体的には、国家転覆を世界規模で狙う極左組織の殲滅に始まり、麻薬密輸して大勢にばら撒く893さんたちやその手伝いをした情報屋たちをとっちめるということをしている。


しかし……いくら調べても1㎜も情報が出てこない天下のWSSが私に何の用だろうか。なんか悪いことやった?


「いいえ、その逆。氷雨ちゃん、この前のライブで私のこと暗殺しようとしてた人から助けてくれたでしょ? そのお礼が言いたかったのよ」

「え!? アレ気づいてたんですか!?」

「ええ。というか、元々あのライブに乗じて今私の班が追ってる中東のテロ組織の構成員を一網打尽にしようとしていたくらいだし」


えっ……。


あれ? これもしかしなくても私WSSの邪魔したことにならない?


要約すると、私はひかり先輩を暗殺しようとしていた人たちのことを独自で調査してホークたちまで使ってとっちめた。一方のひかり先輩率いWSSは、ひかり先輩を囮に暗殺者たちをとっちめて、最終的には拷問とか色々しておそらく情報を聞き出そうとしていた、と。


「じゃあ、あのえぐい動きしていた青年とスナイパーライフル持ち込んでた小さい女の子は氷雨ちゃんのお仲間?」

「え、ええ……すいません」

「いいえ、謝ることじゃないわ。そもそも私がWSSってことも知らないだろうし。それに私みたいな”ただの使い捨ての囮”を助けようとしてくれた結果だから」


そう言ってひかり先輩はこちらに眩しい笑顔を見せてくれる。口ぶり的にちょっと訳アリっぽいけど、それよりも笑顔から発せられる光が眩しすぎる。下手したら太陽よりも太陽してるんじゃなかろうか。


「ちなみに、倒した暗殺者は?」

「あー……それはそのー……あの二人に処理も頼んでしまいまして~……。今頃アスファルトになってるか横須賀港のどこかに沈んでるかと」


今からホークたちに連絡して「あいつら生きてる?」って聞きたいけど、既にライブから3日くらい経ってるんですよねぇ……。それに私、処理してもらうときってだいたい「活かしておいて」って言いませんからねぇ。その日のうちに南無阿弥陀仏ってると思う。


「わかったわ。

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