9.合流
こんのすけは数日経ってからやっと姿を見せた。
広間では本丸の九振りに相対して、こんのすけと見知らぬ刀剣男士が座っている。
「強襲調査について情報を寄越せとの要求でしたので、先行調査を担当していたこの大太刀、面影を合流させます。戦力の増強にもなります。協力して任務にあたってください。この本丸のあらましは面影に説明済みです」
こんのすけの前に、宙に浮く操作パネルが現れた。
「次の任務です。第一部隊の出陣先は」
と言いかけたこんのすけを陸奥守がさえぎる。
「よぉし! 今夜は歓迎会じゃ」
「ま、待ってください。次の任務を」
「今日の調査が明日明後日になるくらい、どうということもないじゃろう!」
陸奥守に続けて前田が言う。
「こんのすけも今日のところは休んで、明日からその分も頑張りましょうよ。油揚げも用意しますよ。甘辛く煮たものと、出汁で煮含めたもの、どちらが良いですか?」
「う、ぐ……、両方、おねがいします……」
こんのすけは簡単に折れた。
九振りはバタバタと立ち歩き始め、面影はそれにつられて立ち上がった。
所在なさげにしている面影に、安定と陸奥守が声をかける。
「僕たちずっと心配してたんだよ。先行調査中に連絡がつかなくなったって聞いてさ」
「政府に回収されるまでにどれくらいかかったか知らんが、放浪は大変じゃったろう。今晩くらいはゆっくりしとうせ」
だが面影は困ったように黙っている。
「どういた?」
陸奥守が尋ねると、面影は困った顔のまま話し始めた。
「私は、……いずれ分かることだから言うが、先行調査に当たっていた本人ではない。政府に回収されたばかりの一振り目の情報から複製された二振り目だ。放浪の記憶は持っているが、私自身は顕現されたばかりだ。気遣いは痛み入る。だが、すぐにも調査に」
「ほうかぁ! じゃあ遠慮なく酒を注げるのう!」
明るく笑い飛ばす陸奥守に面影は困惑した。
「いや、私は、一刻も早く任務を……」
陸奥守は遠慮なく面影の背を叩いた。
「いんや。これからは協力して任務に当たるんじゃ。まんずお互いを知って仲良うなった方がええ。その方が能が上がるき」
「面影とやら。急いてはことを仕損じる。本丸での交流も任務のうちだと心得るといい。それに、調査を始める前にお前さんには聞きたいことが山ほどあるからな」
そう言う則宗の後ろから加州が出てきた。
「ほらそこ、新人をいじめないの。ねぇあんた、この頭の黄色いじじいがしつこかったら俺に言いなよね。代わりにとっちめてやるからさ」
「なんだ、僕だけ悪しざまに!」
憤慨する則宗をよそに、陸奥守と加州は話し合いを始めた。
「誰か、面影に本丸での生活を教えてやる者が必要じゃのう」
「陸奥守でいいじゃん」
「わしゃ、大雑把で細かいことには気ぃが回らん。それに、面影はどうも生真面目な性分じゃ。もっと気性の合う者の方がええ」
「ん~、じゃあ、前田か堀川かな」
「これから宴会の準備じゃき、堀川は厨に欲しいのう」
加州は前田に向かって手招きした。
「ねえ、前田。面影がここでの生活に慣れるまで世話係を頼める?」
「はい、お任せください。あ、でも油揚げの用意が……」
「それはこっちに任せて。甘辛煮と出汁で煮含めたの、だよね」
と料理は堀川が引き受けた。
前田が面影を連れて本丸の案内と説明をしている間に、他の者は厨に詰めたり宴会の準備をし始めた。