3つの詩 : 鋼の植物群
自作の小説「月夜に開く鋼鉄の花」(https://ncode.syosetu.com/n5788hr/)からイメージが膨らみ
書いた詩、3つです。
短いのでサクッと読めます。スキマ時間にどうぞ〜
【鋼鉄の水中花】
「花が開くのを見守るだけの カンタンなお仕事!」
夏峰の奥の溶鉱炉
真っ赤な鉛と 軽トラック8杯分の花びら
溶かされ混ざり 固められ
しずくのかたちの巨大なつぼみ
二人の肉体労働者が 月の光を浴びながら
夜通し 開花を見守っていた
花びらと花びらが 擦れ合う
不快な金属音 背筋をぞわぞわさせながら
生きる日銭を稼ぐために
見守っていた 働いていた
fin
◇
【鋭い芝生】
真っ白なシーツの上に
真っ白なワンピースの女の子たちが
寝そべっている
女の子は全部で5人
まるで
芝生の上に誂えられた
純白のベッド
僕は5人の女の子たちと
かわるがわる交わった
草は鋭く尖り 時に布を突き破り
僕たちの肌を 切り裂いたけれど
僕らは構わず 腰を擦り付け合う
てん・てん・てん
白い四角に
紅い染み 鮮やかな血液
「処女の血? 怪我の血?」
僕が尋ねると 5人ともが云った
「処女の血よ」
fin
◇
【心臓のジャム】
ユスラウメの小枝を手折り
あなたの心臓に突き刺した
「これであなたは私のもの」って
舞い上がったのも 束の間
夜には 「こんなのホントの両想いじゃない」
って痛いほど 突き刺さる
抜き取った心臓は たしかに脈打っているけれど
胸いっぱいに詰まっているのは
私じゃない あの子のことばかり
ジャムにしようと 煮込んでみるけど
溢れ出るのは あの子のことばかり
甘酸っぱい初恋の香りと味に
あまりに腹が立って
怒りに任せてトーストを投げた
白い壁が ジャム色に染まった
fin
お読み下さりありがとうございます。
まだまだ続きます〜次回をお楽しみに!