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詩 : 安楽死(ユータナジー)
夕立ちに湿らされた土のように
その肌は ひやりとしていた
余命いくばくの重圧に 耐え切れず
安楽死を望んだ お前
哀しいし悔しいけれど
誰もそれを 責められない
それは お前の選択であり
挑戦だったから
自死にも 寛容が望ましい時代に
ただその死を赦し
粛々と弔いの支度をする
「現実が 歪んで捩れて とぐろを巻いて
やがてあたしを 喰い殺しにくるの」
お前は 蒼ざめた顔で慄きながら……
雨は上がり 月が出た
冷たい月が お前の冷えた肌を 冷酷に照らす
紫電に染まった 歯茎の色彩
お前が 死人である証
fin




