島流し
島流の唄です
罪を犯した男が 絶海の孤島に 流された
そこで彼を 待ち受けていたのは
生の卵を 累々(るいるい)と積み上げる刑だった
ぐらぐら ガッシャン
卵の山は ふとした揺れで 崩れて割れた
島で暮らす女たちは 男のために 手仕事をしていた
ブーゲンビリアを 束ねて 編んで 首輪と手綱をこしらえる
むらさき色の輪っかにつながれ
男はまるで 家畜のように
女たちのあとをついて ずりずりと 歩いた
水に浮かんだ 蓮の葉の上を
「オホホ まるで なよ竹だが」
「オホホ ほんまにこれが 人を何人も殺めた男だろうけ」
「オホホ オッホォ なんて無様なこと」
男のはらわたが カッカと熱く煮え繰り返った
身体を巡る 恥辱のことばに 心のなかで 「にゃあにゃあ! 猫ちゃんだにゃあ!」と
喃語を唱えて 対抗した
刺々しい言葉は 柔らかな響きに
くるまれ やがて 消えていった
男は まるで貝のように口を閉ざし続けた
水面だけをじっと見つめながら
「おまい なぜ 人を殺めた?」
「金が欲しかったのかえ? 金なら うちらも 欲しいがね」
「おめこが したかったのけ?」
「だったら 殺めること なかろうに」
「女が怖いか? 生きた女の おめこが怖いか?
ヒャッ ヒャッ ヒャッ!」
女たちは ぺちゃくちゃ訊いた
男は 貝のままでいた
やがて 女たちのおしゃべりは
夕餉にこさえる
炒めた卵と うどん粉を かまどでこんがり焼く料理の 話題に移った
fin
また書いたら、載せにきますね〜




