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5つの夜の詩

これらの詩は、2022年5月26日に枝折しおりさんとTwitter上で連歌をした際にできた句から連想を広げ、作ったものです。


その時の連歌を、「後書き」のスペースに載せています。併せてお楽しみください。


Twitterで詠み合う模様を観てくださったみなさまと、枝折さんに、感謝を込めて。


【嘘だらけの着信音】



光る画面 着信音


真理子だけじゃなく、

真理子のスマホ自身にも

もう誰が誰だかわかんないんだってさ


「無視は、なしね?」


そのLINEの送り主さえ

もう誰なのか わかんないんだって


fin





【黒猫はバーにいる】



寂れたバーのカウンター

一匹の黒猫が 背中を丸めて

ちびりちびりと ラフロイグを舐める


常連の黒馬が尋ねた


「あんたは毎晩、ここで何を待ってるんだい?」


黒猫は答える ものうげなみどりの瞳を光らせて


「俺は 永久とわを待っている」


店の客はみんなわらった


「馬鹿げているぜ

こんな店に永久とわが来るはず あるもんか

酒場にいるのは 刹那せつなだけに決まってらあ」


fin





【月と夜のしとね



月と夜がまくらを並べて

しとねをともに 同衾どうきんした


そうして生まれたのがぼくってわけだ


その日は 夜中よるじゅう大変だったらしい


月だけならまだしも 夜まで姿をくらませたとなれば

この町はもう 昼のままでいるしかない


おまけに そのシーツの中で

月と夜が 上になったり下になったり

横に揺れたり 縦に揺れたり したもんだから

お空はしっちゃかめっちゃかだったって


シスターは よくぼくに その日のことを話すのさ


ぼくは どんな顔すりゃいいか 

わかんなくって 真っ赤になるよ


fin




【女神の慟哭どうこく



女神がきながら

メタモルフォーゼした夜

もとの彼女の名残を残すものは 

純白のころも ただ一枚だった


重たい翼 飛べぬ蝶に 

姿を変えた彼女をよそに


豊かなドレープに肌を擦りつけながら

僕は思い出を噛み締めていた



fin





【若いふたりは】



シガーが薫る ワンルーム

ガラステーブル 缶のもの


名も知らぬ 男と女が

魚のように しなやかに 蛇のように 狡猾こうかつ

言葉ダイアログなき 予定調和の遊戯


 

燃ゆる 燃ゆる

昼が夜になるまで


わななくスマホに 水を掛けられても

画面を伏せれば また燃ゆる


若いふたりの再熱

尽きぬほむら 造作もないこと


fin


【ゆにしお短歌20220526】

参加者は、枝折さん、ゆにおの2名です。


ゆ : 野良猫や 月夜のしとね 甘い息

枝 : 拾われしあとは 昼すら夜に

ゆ : 日々是嘘色ひびこれ うそいろ 着信音

枝 : 審判の 朝来たるまでは 耳塞ぎ

ゆ : 残された ワイシャツ 煙草 空蝉うつせみ

枝 : 強き女に 成れぬまま


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