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雀寿司
ひさびさに詩を書きました!
新作の詩もこちらに投稿していこうおもいます。
【雀寿司】
今はもう 廃れてしまったけれど
ここには昔 雀寿司のお店があったのだよ
職人は 若水に両手を浸し
熱い酢飯を小鮒の腹に ぎゅうぎゅうと詰めたものだ
和漢混合文で書かれた 軍記を吟じるように
弾むように 調子よく 次々と
小さなお寿司が 並んでいくのを
飽かず見ていたことを 私は未だ覚えている
甘辛いたれが 刷毛で塗られた雀寿司
実になんともうまそうに 飴色に輝いていたが
死んだ魚は濁った瞳で 私を睨みつけていた
脈打つように 尾っぽをわなわな震わせながら
幼い私はその寿司を ひとつそっとポッケにしまった
それから あららぎが生い茂る森に連れていき
土を掘って 埋葬してやったのだ
fin
続きます!




