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2つの詩 : オートフィクションとカーネーション
【オートフィクション】
罪を背負って 海を渡り
皮をかぶって 別人になり
箱に入って 夜を待つ
知られたくない過去は
思い出したくない記憶
隠し 埋めて 踏みつけながら
オートフィクションの 命を生きる
fin
◇
【カーネーション】
「お疲れさま」の目配せととともに
とうとう息を引き取った
ふわふわと生きていた
いつも二日酔いみたいに
おぼつかない足取りで
夢のなかにいたいのだった
この世界は まるで地獄のようで
瞼をあげるのが いつも怖いのだった
苦しくて苦しくて でも苦しいのを認めると
正気を保てなくなりそうで
へらへらしながら 「死んだほうがマシだね」と
酔ったフリしてた
「ようこそ天国へ ずっと待っていたよ」
大人の天使が 門を開けた
「さあ 君のために カーネーションの絨毯
身を沈めて おやすみ」
fin




