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2つの詩 : 女の運命
【そこに女がいたならば】
そこに若い女がいるというだけで
何か物語が始まりそうな気がするね
いや増さる恋心か はたまた才女の賛嘆か
あるいは暗黒惨憺たる残酷劇か
きみならどれに三嘆するだろう
いつも無風の凪を気取っている その心を
震わせてみたい 慄かせてみたい 揺らしてみたい
情話に頬を赤らめるきみが見たい
その冷たい瞳に 好奇心の火が灯るのが見たいから
きみが好むように 若い女の運命をさだめよう
fin
◇
【なにものなのか おのののか】
おのののかっていたよね
あるときパタッと 見なくなったのね
なにものなのか おのののか
実は彼女は 法皇の落胤だって話
あ これは極秘ね
でも王朝の没落で その後ろ盾を失ってしまって
だから 消されてしまったんですって
そうよ 応仁の乱以降のことね 当然ね
もちろん高貴なひとだから
口過ぎに困ってるなんてことまでは
聞かないけれど
ねえ 誰にも秘密よ
物陰から口拍子が聞こえるけれど
この部屋には 私たち以外いないよね?
今はまるで朽ちていくのを待つだけみたいな毎日ね きっと
どこかで巻き返すことはできるのか できないのか おのののか
fin
 




