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3つの詩 : 中華なイパネマ

【落ちうおの懇願】


「どうか後生でございます、わたくしどもにぶたのカツレツをお恵みください」


町中華の暖簾の前に、直立した川魚たちが立っていた。

店主は言った。


「帰った、帰った。うちは中華だ。トンカツなんて置いてない」


「しかし、カツ丼ならあるでしょう」

「町中華にはなぜか大抵、カツ丼、親子丼、オムライスがあるのを

わたくしどもは知っています」


川魚たちの抗議を、店主は退けた。

ぶんぶんお玉を振り回して。


「帰れ帰れ、うおどもめ。

丘も町も中華屋も、川魚の来るところではない。

そもそもお前たちは死んでいる。

水のない場所でエラ呼吸ができるものか!」


この世にあらざるうおたちよ、死者の世界へ帰れ!


死を見抜かれた途端、

川魚たちはバタバタと卒倒した。

息絶える前にひと言、ふた言と、エラを震わせ懇願する。


「どうかこのことは内密に。わたくしどもがトンを欲したことを、

どうぞどうぞ口固め、よろしくお願いいたします」


そしてぶくぶく膨れていって、やがて次々瓦斯ガス爆発した。


飛び散ったはらわたで

中華屋の軒先はぐちゃぐちゃになった。


fin




【中華屋都々逸】


落ちたサカナを

ウツボに詰め込み

今日も店主はうつし世 生きる


石部金吉いしべきんきち」 そう笑われても

今日も店主は サカナを捌く


苦衷くちゅうを抱え しかめっつらでも

暇乞いとまごいせず 糸作り


細切りサカナを 油で揚げて

甘酢あんだよ 中華風


ルーをかけたらフィッシュカリー

厨房の熱に涙も乾き 

涙痕るいこん累々(るいるい)

いくすじの 痕がついても 確定申告

うつし世生きる 店主だよ




八宝飯はっぽうはん


リアス式海岸が生み出す

温暖な気候に

はぐくまれた食材で わたしは祝いの菓子をこしらえる


古々ここまい小米こまい

ココ椰子やしの果汁で柔らかに炊き上げ

蜜漬けのあんず山査子さんざし茴香ういきょう大蒜にんにくを飾りつけ

甘くとろみのある餡を なみなみとかける


ノースリーブの腋下えきかから

のこんの色香漂う こまっしゃくれた天帝

彼女との内謁ないえつに 

この八宝飯を献上した


「あら! 白木耳しろきくらげが入っていないわ」


微罪がわたしを 裁く

次次回までは膝栗毛ひざくりげで 天帝の元に来るように

それが白木耳の 罰だった


fin

お読みくださり、ありがとうございます!

また書きます〜^_^

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