5つの小さな詩
これらの詩は2022年5月23日に、雨の粥さん、小冨百さんと一緒に連歌を詠み合った時の歌のイメージから、空想を広げて作ったものです。
当時の連歌を、「あとがき」のスペースに載せています。そちらも併せてお楽しみください。
お二人に、感謝を込めて。
① 【人魚の溜まり場】
紅い傘をさして 驟雨の中をいく
溢れ出す水たまりから 聴こえてくるのは
人魚たちの歌声
ぬるぬる てらてら 艶めく尾ひれが 輪になって
「イラッシャイヨ」と私を誘う
fin
◇
② 【真夜中のマネキン】
深夜。吐息。
マロニエ通り。
月影。陰影。
マネキンの横貌。
その眼が見るのは、天の国。
ショウウインドウの内側で、
人目を忍びて、祈りを捧ぐ。
fin
◇
③ 【前世の記憶】
淡くてやわい 記憶の中で
咲いているのはアマリリス
黄色と碧の光の珠に照らされて
みみずが踊る 肥沃な土を
私は素手で 掘り返していた
指先を真っ黒にし 額に水玉を浮かべて
きっと何かを探していたんだ
fin
◇
④ 【海の底には天国が】
もぐらの船員 エッサホイサ
土のお船で 出航だ
沈むあぶくに 揺らぐヒゲ
潜水探検 エッサホイサ
海の底には 古代の文明
光も翳も届かぬ国にゃ
顔のない王 首なし大臣
ミイラの棺桶 空の音
fin
◇
⑤ 【リリスの葬送】
さよなら、リリス
蛇に咬まれて 恍惚のままに死んだ
もう二度と 動かないきみ
真珠の肌は 赤く剥かれてしまった
僕はきみの寝台を
むらさき色の竜胆で埋めよう
花に埋もれて、溺れて、沈んで
きみは夜の女神になる
fin
◇
【完】
出典元として、当時の連歌を以下に記します。
(雨)=雨の粥さん/(小)=小冨百さん/(ゆ)=ゆにお
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【小冨連歌20220523】(Twitter上にて)
小 : 濡れ場色 水溜の中 人魚の巣
雨 : 月影揺れる マネキンの顔
ゆ : 覗き込む あなたを海に 引き込んで
ゆ : 土の船 もぐらの船員 旅立ちや
雨 : 翳なき国の聲、金字塔
小 : 私のお墓は どこでしょう
雨 : 薄れゆく 記憶の浪よ アマリリス
小 : 赫い身 リリス さらばかな
ゆ : 花に埋もれる 夜の女神よ