2.見切り発車の連載
「そもそも主婦っていう立場だけで満足できないんですか?」
スマホの画面には通話相手の顔がなんだかまるーく映し出されていた。
いつもの後輩(元)女子だ、大学時代のサークルの。
「だから何年かそれでもがいたんだって、無理だったんだもん」
「だもんじゃないですよ、いい大人が」
「だよねー、ねぇ、どうしたらいいかなー」
私は牛乳をかけて食べるタイプのチョコシリアルをそのままボリボリ食べながら、ローテーブルに上半身を預けていた。
「あ、どうしたらいいかなーって言ってるけど、別に解決策を求めてるわけじゃないからね」
「知ってます」
「自分で考えてるだけだから」
ニュースでは今日も深刻な現場の状況が伝えられている。
「人に迷惑はかけたくないの」
「知ってます」
「人に迷惑をかけないギリギリのラインで自己実現したいの」
「知ってます」
TVの画面がコマーシャルに変わり、野菜を炒めて混ぜるだけのタレが今まさにかけられているところだった。
「あ、この前初めて、なめ茸作った」
「なめ茸?」
「ほしちゃんの料理動画見て。瓶のなめ茸しか食べたことなかったから」
「へー、主婦してるじゃないですか」
「うん……でも」
うなだれていた身体を起こす。
「やっぱり、女の子やりたい!!!人に迷惑かけない範囲でやりたい!!!」
「イッター(痛)」
私はとにかく『可愛い女の子やオトナ女子』の写真や動画や世界観を繰り返し繰り返し見て摂取する、という行動に出た。
すると段々何かが分かってきたような気がした。
それはいかに「見せ方」が大事かということだった。