麒麟児の戦法
48体もの分身に、アイネは防御をギリギリまで抑え、真帆の詠唱に力を注ぐ。
「超高速の魔法詠唱……戦闘中にそんな事をしたら……」
連座で詠唱を続ける姿に驚くアーシラト。
「確実にロストするわね。アイネのエナジィ。でも、なんで発動しないの?」
複数の呪文を唱えているのに、魔法が発動しない事と心配をアナトが呟いた。
アイネの魔法の詠唱は全て終わった――周りの温度が急激に下がりはじめた。
『鋭き氷の壁 ラ・フリーズバイト』
目の前に氷の壁が多数出現して、48体のアインが氷の中に、閉じ込められる。
詠唱なしで続けてアイネが叫ぶ。
『光の散弾 ラ・フォースビット』
凍りついたアイン達へ光の光弾が打ち込まれ、氷の壁が砕けて、四十八のアインが弾きだされる。
エナジィを大量に失い、一体の実体に戻っていくアイン。
(もう少し、もう少しだけ……動いて私の体)
ほぼ全部のエナジィを使い切り、アイネは力が入らない自分の身体に喝を入れた。
そして、再び叫ぶ。
『舞え ラ・ウィングドライブ』
自分に飛行の魔法を唱えたアイネは、ふわりと空中に浮かんだ。
高度を確保した瞬間……アインに向かって加速し、アインが身構える前にアイネの三度目の詠唱が始まっていた。
『光の槍 ラ・ホーリーランス』
アイネの双剣に光が集まり、槍のように真っ直ぐに、アインの身体を貫いた。
「ふふ」
アインは突きぬかれた、自分の胸を見てアイネに言った。
「詠唱を一気に行い、魔法の詠唱時間を置かずに、連続魔法……見事だ……覚悟は出来たようだな……それでいい……立派な騎士」
嬉しそうに笑ったアインが宣告する。
「……私の。……私の負けだ……」
ゆっくり倒れ込みながら。
倒れ込み動かなくなった鉄のアインを見てイルが呟く。
「アイネは勝ったの?」
走り出したイル、他の四人もアイネへ向かう。
蒸気のようのエナジィが洩れ、一帯に立ち込める。
アインの形が蒸発し崩れ始める
闇の王が手を叩いて、アイネを称賛した。
「素晴らしいよ! 超高速で連続の魔法詠唱とわね。アインとバアルの戦いを見て、この世界ではエナジィが、実態に近い肉体を造り出せる事を理解した」
闇の王ラシャプが続ける。
「エナジィはかなりの時間、空間に留めて置けると気づいた。魔法を連続で放つために、君は戦闘中に詠唱して魔法発動の、エナジィを徐々に残した。アインに気が付かれないように。無意識で透明なエナジィを……ね。置いてあったエナジィと、今造り出したエナジィと合わせ、三連続での超高速の詠唱を完成させた。才能と自分の身を危険にさらす戦う意思が、有ったから出来たわけだ――君は英雄候補だね。最大のライバルは大魔王だけど、侮りがたい」
魔王ラシャプがアイネに最大の賛辞を贈り、注意を喚起すした。