表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/158

イルの衰弱

 

 つむじ風が起り五匹のイビルアイが現れた。

 イビルアイは魔法生物で大きな目玉だけの姿をしている。

 攻撃魔法が得意で遠距離から魔法を打つ。


 一匹のイビルアイが、氷のヤリの魔法で疲れがみえるイルを狙った。


「そっちに行ったよイル!」

 モンスターを双剣で切り捨てたアイネが叫んだ。


 疲労と怯えで身体がうまく動かないイルは、アイネの注意にも緩慢にしか反応しない。


「まずい、気がついてない」

 バアルがイルを見て声を出す、魔法の照準を合わせたイビルアイ。

 バアルの風のフルーレは、イビルアイの周りの空気を刃に変え、その身をバラバラに切断する。


 イルの元へはしるバアル。

「大丈夫かイル――くっそ、まだくるか」

 イルを目指して氷のヤリが飛ぶ、氷のヤリが命中……鮮血が滴り落ちる。

 バアルが追いつき、傷ついた者を見て驚きの声を出す。


「アーシラト……おまえ」

 意外な光景だった。

 イルを庇ったアーシラトの右腕に、氷のヤリが突き刺さっていた。

 振るえるイルは、膝をついたまま動けない。

 イルは白き巫女のエナジィを殆ど無くしていた。


 不気味な笑いが聞こえる、三匹のイビアイは動けないイルと、傷ついたアーシラトに照準を合わせる。


「やらせません!」アイネの双剣オリオンが六つの軌道を描く。

 まるで天使のように軽やかにまった後、二匹のイビルアイが切り裂かれた。


 残った一匹にバアルの必殺の声。

『真竜空斬』

 レイピアに風の渦が巻き付き、それと同時に横に振り払うバアル。

 鋭い風の刃がイビルアイを横一線に切り裂いた。


 前線で戦っていたアイネが駆けこんでくる。

「早くアーシラトを回復しなさい……どいて! イル!」

 ビック、アイネの大きな声に反応し後ずされるイル。

 震え怯え本来の役目である回復ができない巫女。


 アイネの右手に力の循環が浮かび上がり、魔法陣を描き出した。

 回転を始める魔方陣。


『この者に癒やしを ラ・ヒール』


 アイネの魔法が、アーシラトを回復させていく。

 血が止まり傷が塞がり始めたアーシラトを見てホッとするアイネは、イルを見て珍しく険しい顔で大きな声を出す。

「……イルなにやっているの!?」

 ビクッ、一瞬、動いて何も言わないイル。


「あなたは……足手まといだよ。それに……」

 さらに続くアイネの厳しい言葉に、アーシラトがアイネを制した。

「私なら大丈夫だから――イルはよくやっているわよ」


 過去に戦ったアーシラトに庇われたイル。

 傷ついたアーシラトの右腕を見て、イルは震えながら聞いた。


「なぜ、わたしを庇うの」


 アーシラトは黙って、無事な左手でイルを自分の胸に引き寄せる。

 我慢していたものが、アーシラトの意外な行動で露出する。

 イルがアーシラトの胸で泣き始めた。


「わたし……みんなのように強くないの。足手まといでごめんね」

 イル髪の毛を撫でながら、アーシラトは少しきつい目でアイネを見た。

 アーシラトの瞳から視線を逸らしたアイネ。


「仕方ないここでキャンプをしましょう……みんなの回復には時間が掛かりそうだし」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ