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戦士と呼べない者


 宮殿都市エールの庭園で、赤龍王との経緯を話すアイネ。

 それを聞き入るイル。時折、バアルが頷いたり補足を入れていた。


「……というわけです」


 アイネが説明を終えると、白い巫女の衣装を着たイルがため息をつく。

「つまり、二人で仲良く逃げ出したというわけね?」


 長い髪を長めの水引で結んでいるイルの問いに、すかさず答えるアイネ。

「いや、ただ、めんどくさかっただけですね」


 アイネの答えに益々落胆した、イルが首を左右に振ると、巫女の長い水引が揺れた。


「同じだわ。もぉ~~なんで、いつも、こうも、やる気が無いのかなぁ。私なら、赤龍王を倒して、世界を征服して、ハーレムでも建てるのになあ」


 アイネの目の前にグーで拳を突き出すイル。


「ハーレム……そいつは凄いですね」

 両手を上げて参ったと言い、それからバアルの方を向いたアイネ。


「そういうわけで、一緒に赤龍王を倒すというバアルの要望には面倒なので……すみません」


 バアルは全然納得がいかない。

「面倒だから? アイネの力と俺が協力すれば、赤龍王はきっと倒せる!」


「う~~ん」

 悩むアイネの代わりに答える声があった。


「戦う覚悟が無い。そんな者は戦士とは呼べないからな」


 一人の老人がこちらに近づいてきた。

「まったく、テンプル騎士団の団長ともあろう者が、戦う覚悟が出来ていないとはな……」


 イルがすかさず老人の言葉を修正する。

「元団長ですよ。あの頃は少し格好良かったのですが、あんまりにグータラなので、今はフリーです」

 イルの率直な言葉を聞いた老人が笑った。


「えーと、この人は誰です?」

 バアルが老人を指差す。


「この方は我が国の王様です~~! よろしく転生勇者さん!」

 軽いノリでイルが答える。


「へぇ~~王様なんですか。エールの……え、ええ!?」


 バアルは目の前の老人が、この国の王だと途中で認識し、想像してもいなかった状況に焦りながら、竜の国の正式な礼をする。


「し、失礼しました、エール王。俺、いや私は勇者で名はバアルと申します」


 エール王は構わないと、手振りで答える。

「バアル、盛大に負けたそうだな。赤龍王に」

 正式な礼のまま、エール王に答えるバアル。

「はい。そこでどうしてもアイネ殿の力を借りたいと、お願いしていました」


 視線をアイネに移すエール王。

「アイネはどうするのだ?」

 アイネが答えようと口を開く。

「めんどくさ……」


 ガス。アイネの頭を、持っていた杖でイルが殴った。

「痛いです」

 頭を押さえて座り込んだアイネ。代わりにイルが回答した。


「少し考えさせます」

「そうか。それもよかろう。イルがアイネの欠けている部分を補ってやれ」

「はい!」

 王の言葉に元気に答えるイル。


「私は別に欠けてなんかいないです」

 アイネは不満そうだが、イルは任せといてと胸を張る。


 その時、宮殿に警報が響きわたった。


「どうしたのじゃ?」


 エール王の言葉に反応するようにその場の四人、王、イル、アイネ、バアルの頭に直接に声が響いた。


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