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アイネが恐れる者

 

 フードを脱いだ二人の身体を、分厚い防寒着の代わりに、暖かい春の風が包み込む。


「アイネ、ここがエールなのか?」


 エール王宮都市は、ゴース大陸の北に位置すると言われているが、険しい山々に閉められた石門により、外との交流は殆どいない。


「そうですよバアル。ここがエールです。悠久の都と呼ばれています」

「なるほど。確かに暮らしやすそうな国だな」


 二人は赤龍王から逃れる為に、強制離脱の魔法で飛んだ。

 それからアイネの故郷である宮殿都市エールへと、歩いて移動したのだ。


 強制離脱の魔法は任意の場所に飛べる分けでは無く、事前に詠唱者が持つ場所の記憶の一カ所だけに戻る魔法だ。


 アイネはエールを設定していたのだが、エールは閉ざされたの国のために、直接にエール移動は禁止されていて、移動先は手前の山中と決められていた。


「……元に戻ったってきいたのだけど……あの娘はどこかしら?」

 ソワソワ仕始めるアイネに、バアルが尋ねた。


「どうしたの? なにか気がかりでも?」

「えーと、今は会いたくない娘がいるの。バアルには関係ないですけどね」


「アイネが身構えるなんて……赤龍王の前でも堂々としていたのに」

「ある意味、赤龍王とか、ネームドモンスターより手が悪いのですよ」

「ええ!?」


 バアルが驚いて身構える。


「そいつはどこに? 俺は赤龍王との戦いで、深い痛手を負っているので、出来れば強いモンスターとの戦いは回避したいけど、命の恩人であるアイネの為なら一緒に戦うよ」


 男気を見せるバアルに、アイネは頭のてっぺんをボリボリと掻いて首を振った。

「あの娘の標的は私だけですから……あっ!」


 アイネが声をあげた時、バアルの後ろから大きな声がした。


「アイネ~~! やっと帰ってきたね。騎士団長をメンドクサイとか言って脱走したあげく、三年も音信不通。私はその間にアーシラトに、キノコにされていたのよ。覚悟は出来ているよね!?」


 大きな声を出しながら小走りで近づいてくる少女。

 純白のその姿は巫女のようだが。


「うわーー出た! イル!」

 ピョン。条件反射で少し跳ねたアイネは、逃げようとするが、巫女イルは後ろから捕まえ、アイネを羽交い絞めにする。


「うぁああ! まって! ちょっとだけ待ちなさい! 落ち着いて! わたしの話を聞いてちょうだい!」

「話? ええ、聞くわよ。これから、ねっちりとね……うふ」


 目が笑ってない巫女のイルは、非常に楽しそうだった。


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