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魔王ラシャプ


 俺を部屋に置き去りで部屋型エレベータを出ていく、大魔王と獣王。

 俺の限られた視界でもこの地下フロアーが巨大なのは見て取れる。

 湖が港が見え船がつながれており、そこから先には巨大なロケットが鎮座していたから。

 世界観がぶち壊しだが、元々母がハイファンタジーの定義など知っているわけもない。


「じゃあ、状況を教えて……えっと、ラシャプでいいんだよね」

 大魔王である母が側近の魔王に聞いた。

「ええ、構いません。先ほどどおりで。僕も貴方をツクヨミと呼びます。さて、現状ですがツクヨミが発端になった戦争ですが、もちろん行われません」

(ええ!)動けない俺はカメラ固定な状態なので三人の足しか見えないが、気にしていたゴース公国とジパングの戦いが行われないと、断言するラシャプに驚く。


「情報はツクヨミの娘であるアーシラトの策であり、あなたがゴースの兵士に害を与えた事実などないのですから」

 大きく頷いた獣王アスタルト。

「それは確かなのだろうな? むやみに血が流れるのは感心せん」

 ふっ、かすかに笑ったラシャプは大丈夫と再び答えた。

 大魔王であるツクヨミも安心したようだ。


「面白い事ならじゃんじゃん魔力を使いたいけど、戦争はちょっと嫌ね」

(お、なんかいい事言っているじゃないか)動けない俺が少し感心しているとそれを打ち砕く大魔王の言葉。

「戦うなら一方的な殺戮がいいわね。敵の中心にメテオを大量に打ち込んで一瞬で消し去るとか、自分が傷つくのは趣味じゃないの」


 まったく転生前も敵だと認識した人間には容赦がなかった母親。

 今、神のごとき魔力を持ったがあまりにも危険な存在になっている……だけど、だからこそ……俺の思いはラシャプが言葉にした。


「あなたの神のごとき魔力があるから事を大きくできる。実際に二千人の他国の兵士を滅するなど簡単でしょう? そこをついたあなたの娘アーシラトの虚言の布石がうまくいきました」

 ここまでの話で分かった事と謎が出来た。

(まず戦争になるような嘘を広げた。でも実際に戦いは望んでいない。ではなんの為に?)


「おや、ちょっと待ってください大魔王、獣王」

 俺の視線に気づいたラシャプが動けない俺のそばに近づいてきた。


「大魔王の息子、いや転生勇者と呼ぼうか。最近ご活躍だそうですね。良い事です。その毒はあと一時間くらいで切れます」

 ふぅ、それは良かったと安堵した俺。姉に関しては大魔王との契約に死亡特典を付けかねない。

 体は動かないが目の力が強くなったのを見た魔王ラシャプは、穏やかな笑みのままで俺の空いている左耳に囁いた。


「おまえの母親である大魔王ツクヨミ。転生してしまったから親子関係は希薄になると思うが」

(何を言いたい)俺は身体を動かそうと全身に力を入れる、すると左手の小指が少し動いた。

「ほう、さすが転生勇者。そして大魔王の血も貢献しているのかな……ならばいいか、よく聞け!」

 ラシャプは予想より早く毒から開放されそうな俺を見て口調を変えた。

「僕がおまえのような虫けらの人間や獣の王など下賤なものと話している理由はわかるかい?」

 俺は母や姉に感じた恐怖を今目の前の魔王からも感じた。

「恐怖だよ。おまえの母ツクヨミの神のごとき魔力。アストラルボディを持つ姉の高い妖力と策謀。かなり落ちるがおまえ転生勇者の竜力」


(なに!?)俺は警戒心が高まり左手全体に意識が通じ始めた。

「意識で手が動くのかい。素晴らしい……でものね、この世界はもともと僕のものなんだよ。大魔王ラシャプ・ナイトオブ・テーラーのものだ」

 転生世界の統治者であった大魔王ラシャプは俺のもとから立ちあ上がり、ツクヨミとアスタルトに向いて声を高めた。


「さあ始めましょう。この世界の改変を!」



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