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探し物は転生勇者


 大陸南より下、封印の島。太古に封印された魔王が住む闇の世界


 そのレイスの薄暗い森の中を、二人の人間が歩いている。

 一人は黒い槍を持った大柄で赤髪の男。

 もう一人は銀髪の少女だった。


 少女はこの暗き湿った場所にそぐわない姿。可憐さを持っていた。


 年齢は十六、七才で高校性に見える。肩につくくらいの銀糸のような髪、細くて長身の美少女。

 紅を基調にし、竜の刺繍が施されたコタルディを着ている。ブラウスの形や短い丈のスカートが若さと可愛らしさを醸し出す。少女の蒼き瞳は、強い意思と戦いのエナジィ(闘気)を湛えていた。


 もう一人、赤髪の男は百九十センチを越える強靱な身体を持ち、銀色の鎧に身を包み、大きな盾を背負っている。鎧には対魔法用に、殆どの面に術式が書き込まれていた。身体から放たれる力への意思、紅いエナジィは歴戦の騎士の力を伝えてくる。


「なあ、一度エールに戻ったらどうだ? アナト」

 男の問いにも立ち止らず、銀髪の少女アナトが答えた。


「あんたこそ、さっさと家に帰ったら? まだ夕食には間に合うかもよ? ダゴン」

 少女はツンとしたまま、銀色の鎧を着ているダゴンをチラリと見た。


「はぁ~~」

 ため息をついたダゴン。

「最近冷たいなぁ~~俺はアナトの手伝いをしてるのにさ」


 アナトは歩調も変えず、関心なさそうに呟く。

「へーー手伝いだったの?……まったく気が付かなかったよ」


「二年前か? 初めてアナトを見た時は不味そうな子供だと思ったけど、最近大人になったな」

 ダゴンが嬉しそうに言ったが、アナトは身震いする格好をして答えた。

「大人って……それマジで言ってるの? ダゴン今夜からあんたは、あたしから五百メートル離れて寝てよ!」


「はぁあ? 何を興奮してるんだ? 夜の見張りはどうすんだよ。おまえ寝ると起きないしさ。この前なんか、ドラゴンゾンビに踏まれそうになったろ」

 キッと顔を向けて、それに続くダゴンの言葉を止めたアナト。


「これからは歩く時も十メートル以上離れて!」


 そう言うと足を速めるアナト。置きざりになったダゴンが焦って追いかけてくる。

「ええっ? ちょっと待ってくれよ! お~~いアナト!……なんかまずい事言ったか!?」


 アナトは心の中で大きなため息をついた。


(なぜだろう……ダゴンに大人になったって言われると、自分が女の子だと意識してドキドキしちゃう。もう二年も経つのか……この世界を訪れてから。確かに最初は貧弱な中学生だったけど、現代では高二か。背も伸びたし、スタイルが良くなったと思いたい。ついでに筋肉と体重も増えちゃったけど)


「おーーい! アナトーー! 待てよーーーー!」

「うっさい! も~~百メートル離れろ! ダゴンの馬鹿!」

 ダゴンの後ろから迫ってくる声に、少し赤らめた顔を見られないよう、全力疾走に移るアナト。必死に追いかけるダゴンの声。


「あまえさっき言ってたより、離れる距離が増えているぞ!」

 ガン。

 アナトがダゴンに後へ足で石を蹴った。

 頭に石が命中したダゴンが思わず反り返る。


「ばか! あぶないぞアナト! 何するんだこら!」

 ダゴンは怒ったが、アナトはまたため息をつく。

「ダゴン……あのさ」

 アナトが言いかけた言葉を遮り、ダゴンが続けた。

「アナトがご機嫌ナナメなのは……バアルの事でだろ?」


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