現れた騎士
アーシラトの着ている服は、ジプシーレッド色のドレス。
そのの肩口にから出ている腕には、大きな火傷の跡があった。
「みなよ。この傷跡を。エールの巫女のエナジィでついた傷は簡単には治らない。直すには巫女と勇者のエナジィが必要だ。二人を殺すことで私のプライドも癒す事になるのさ」
右手を高く掲げたアーシラト。
空中に力の循環が廻り初め、空を覆い隠す程の巨大な魔法陣が現れた。
空中の魔法陣に闇の軍勢、灰色の兵士達が現れた。
ドスン、ドスン、ドスン、空中から落下した兵士達が、地上に降りたつ音があたりに響き続ける。
絶対の自信を見せる魔女アーシラト。
「人間のエナジィを使って、塵から造り上げた灰色の兵士達。百くらいあれば足りるか。まだ覚醒していない勇者と、呪いでキノコに姿を変えられた巫女相手ならな」
ドスン、ドスン、ドスン、地上に降り立つ灰色の兵士の数は増え続ける。
ナメコはアーシラトの力を再び目にして、自分がキノコに替えられた事を思い出した。
「逃げて……アナト」
「何を言っているのナメコ?」
「元々、あんたには関係ない事なの。胸のムーンストーンを使って……それであんたは、ここから外へ飛べる」
「あたしだけ逃げろって言うの? ナメコはどうするの!」
「わたしはここでお終りみたい。でもアナト、あなたは帰れる。早く自分の世界へ飛んで!」
あたしは金色に輝く胸のネックレスの石を見た。
「イルを見捨てるのか。まあいい。勇者のエナジィは少し待つとするか」
ほおづえをつきながら、魔女アーシラトが呟くのを聞いて、あたしは決心した。
ムーンストーンを握りしめ前方に突き出す。
「……ムーンストーン、あたしに力を頂戴!」
ガシャン、金色に輝く石はガラスのように粉々に砕けた、
同時にあたしの前に金色のゲートが開かれた。
「……やっと出番か?」
「ええ、一緒に戦って頂戴。ダゴン」
黒き槍グングニルを右手に構え、左手にはイージスの盾を持つ赤髪の男が立った。
頭の兜はインペリアルヘルム。超重装備で固めた銀色に輝くその姿。
「馬鹿者が。自分で逃げるべきゲートを使って外の者を呼び出すとは。三人まとめて殺してエナジーを奪ってやる」
アーシラトが恐怖をまき散らす妖力を体にまとい、あたしを見た。