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新しい仲間


牢屋に一日宿泊、昨日はキノコの街にお泊まり……予定が大幅に狂っている。

 同時にムッスっとした顔のままのあたし。たまりかけてダゴンが諭しにかかかる。


「あのさ、そろそろ怒るの止めたらどうなんだ?」

 ダゴンがさっさと先を歩くあたしに声をかけた。

「大食らいなんで……先に行かないと」

「ふぅう、おまえって結構執念深いな」


「ええ、簡単には忘れませんよ、騎士様」

 キノコの国で捕まったあたしは、王様の命令で釈放してもらった。

 たしかにそれはダゴンのおかげだが、ひどい目にもあった。


「まったく、犯罪者のくせに生意気だな」

 あたしの前をチョコマカと歩く、キノコ人があたしに言った。


 キノコの国であたしが見たキノコ人は、みんな白っぽい色だった。

 でも目の前を行くキノコ人は桃色で、大きさもかなり小さい。

 あたしはキノコ人に負けないように、大きな声で返した。


「キノコに言われたくないわね」

 桃色キノコが立ち止まり、あたしを振り向いた。

「キノコじゃないわ、人間の娘よ、わたしの名前は巫女イル……いえ、今のは無し。好きに呼びなさい人間の娘」


「じゃあ……ナメコ」

「……どうゆう冗談かしら? ナメコって……あたしは桃色だしネバネバしてないし」

「何でも良いって言ったじゃない!」

「だからキノコから離れなさいよ!」

 ジッと目の前の小さなキノコを見るあたし。

「……やっぱりナメコがぴったり」

「……もういいわ! 好きに呼びなさい」


 あたしがキノコの国で捕まったせいで、旅の行程が遅れてしまった。


「悪の計画を止める為に、現代から来た勇者」……キノコの王様はあたし達に道案内をつけてくれた。

 それがこの生意気なキノコ人。


「ああ、面倒くさい、なんでわたしが世間知らずの人間の小娘の世話なんか」

 どうやら女の子らしいナメコ。道案内としては優秀なようだ。

 ナメコのおかげで旅の遅れは取り戻せそうだが、あたしのテンションは下がり放題。


「なんでこんな破壊的に口が悪いの? キノコのくせに……」

 あたしの小さな呟きを聞き逃さなかったナメコ。

「食べても不味そうな、人間に言われたくないし」

「なんですって!」


 見かねたダゴンが仲に入る。


「あ~~もう、おまえらいい加減にしろよ。言い合いする力が残っているなら先へ進め」

 クルリ、あたしとナメコがダゴンを振り向いた。

「うるさいわね! 脳筋は黙っていて!」

「はぁい、分りましたよ」

 女の子二人にはさまれて、諦め気味にダゴンはため息をついた。


「……それでナメコ、転移の神殿は近いのか? こんな道はオレ通った事ないぞ」

「あんたもナメコ呼び?」小さなキノコは振り返らず、歩いたままでダゴンに応えた。


「無駄に馬鹿デカイだけの人間に、真の森の道なんか分る筈ない……あと半日くらい」

「良かった。助かるよ」


 トテ、トテ、急ぎ足で進むナメコが、チラリと後ろのあたしを見た。

「良くないんじゃない? エールに行っても、何のあてもないんでしょう?」


 ナメコの言葉は確信をついていた。

 そうなのだエールに着いてからの事は何も決まってない。

 痛いところをつかれたあたしは、逆ギレ気味に返事をした。


「なによ、さっきから……エールに行けばなんとかなるわよ」

 ナメコがまたチラリとあたしを見た。

「ここからは、崖沿いに歩くから気をつけなよ」


 まもなく大きな一枚岩で出来た赤い崖の上に出た。

 所々枯れ草に覆われて足下が見えない。


 崖の高さはかなりあって、落ちたらただでは済まないのは一目で分った。


「エールは大きな街だ。本当に情報が無くて大丈夫?」

 ナメコにまた痛いところを突かれ、あたしが大きな声で反論する。


「だから! 大丈夫だって! ナメコだって何にも知らないでしょう?」

「あんたよりは事情は多少知っている……あ!」

「そうか……知っているのか……って、ええ!?なんでナメコが知っているのよ!」


「待ってアナト、動かないで……」

 立ち止まりあたしを振り向いたナメコは、諭すような口調に変った。


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