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キノコの町


 王様が言葉をかけようとした時に、素直に答えた。


「そんなにカッコいいものでない、ちょっと異世界にあこがれてて、望んだというより、成り行きでここに来てしまって……それより、なんか食べさせて……イタ!」


 ガン、再びの突然あたしの頭に衝撃が来襲。床にまた頭をぶつける。

 クラクラと倒れ込むのを、片手で押さえながら笑顔をつくるダゴン。


「王様、事は急を要しています。敵は大魔王ツクヨミ。しかも企みは魔女アーシラトです」

 玉座から勢い立ち上がった、キノコの王様は動揺を隠せなかった。


「大魔王ツクヨミ、しかも魔女アーシラトじゃと! 分った、出来るだけの事はしよう。望みの食料、旅の装備、そして森の道案内を使わす!」

 態度が急変した王様に意味が分からないあたし。


「アーシラト? どっかで聞いた?……あたしそんなのと戦わないよ……イタ!」

 あたしの頭に衝撃が来襲。床にまた頭をぶつける。

「なにすんの! ダゴン!」


 文句はスルーで王様に聞こえないよう、あたしの耳元にダゴンがささやいた。

「大魔王ツクヨミと魔女アーシラトと言えば、恐怖の代名詞、大抵の奴はびびる」


 ダゴンに余計なことをしないように、ガッチリと捕まれ、王様の方へ向けられて礼をさせられた。

 あたしは人形じゃないよ! ひょっこりひょうたん島じゃあるまいし!


「勇者アナトはこの世界に来て間もない為に、この地の礼儀と常識が分っておりません。しかし王様の配慮にはこうして感謝しております」

 おーーーい、文句を言おうとしたあたしに、力をますます込めるダゴン。


「常識ががないだと! イテテ、首が痛いよダゴン! 起きたままで、寝違ったらどうするんの!」

 頭を下に伏せたあたしの文句は、大きな部屋の高い玉座にいる王様には届かなかったみたい。

「あい分かった。できるだけ協力をしよう」

 キノコの王様の言葉で、解放されたあたしは……キノコの国の城下街へ。



「良かったろ? オレの機転で牢屋から出られたし、罪も許してもらえて」

 ちょっと自慢げな赤毛の大男に、洗剤と冷たい水でブロンズ像のように洗われ、起きたまま寝違えて首が痛いあたしは、この国で覚えた言葉を感謝として伝えた。


「はい、了解しました! 洗います!… じゃ、また後で!」


 立派な騎士さんは置き去りに、城下街をを散策する事にする。

 このままでは、荒れ狂うあたしの心は怒りで眠れそうもないからだ。


「なによなによ! あたしは女子なんだから、もう優しい扱いしてくれてもいいじゃない!」


 ブツブツ文句を言いながら、城下街特有の細く入り組んだ道を歩く。


 キノコの国は、石で組み上げられた巨大な城壁都市だった。

 世界遺産に出てくる、ジャングルに置かれた巨大な都市と良く似ている。


 建てられた年代が古いことを示すように、街中に延びた植物の蔦も世界遺産と一緒だ。城のすぐ側にある城下街は、敵から攻めづらいように、道を細めて通れる人数を制限。わざと道をクネクネと曲げて、分かりづらく繋げてある。

 初めて訪れた人には分かりづらく、迷ってしまう構造だ。


「大きな城下街だね。お城も立派だし。すごいなぁ。こんな巨石文明は現代にはないよね。それにしてもわかりづらい」


 そうゆうわけで、初めて来たあたしは、当然迷っていた。


 それでもあたしは街歩きを楽しんでいた。だって、世界遺産をタダで見学出来るんだよ?

 それも無人の遺産ではなく、今、繁栄している街を見れるなんて、そうそうないでしょう?


「うぁあ~キノコ人が一杯いるよ」


 街にはたくさんのお店があり、キノコ人も一杯歩いている。

 姿はキノコなのだが、妙に人間ぽいところもあり、言葉もあたしと同じ。


「なんでキノコなのに、あたしと同じ言葉を使って、人間と同じように生活しているんだろう」


 あたしは疑問を持ちながらも、大きなキノコ人の町歩きを大いに楽しんだ。


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