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あたしの非常事態


 あたしが夢の世界ゴースに来てもう四日が経った。


「もう少しで暗き森を抜けるぞ。そしたらすぐ神殿だ」

「ゼイゼイ……はあ、やっとですか」

「随分と疲労が溜まっているようだな……」

「そんな事は無いよ……まだ……大丈夫」


 息も絶え絶えのあたしを見ていたダゴン。

「今日は早めに休んで明日の朝に早くに立とう」


 心は先に進みたかったけど、身体はありがたいと思っていた。

 あたしの身体は心と関係なく、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

 まったくあたしの身体は正直者だ。


「アナトはここで少し休んでいろ」


 ダゴンはキャンプの準備の為に、たき火用の枝を集めに行く。

 その姿をあたしは最後まで見ていない、なぜならその後あたしは眠ってしまったから。


 木の枝を両手で抱えて帰ってきたダゴンは、疲れ切ったあたしを見て呟いた。


「まあ十五歳にしては頑張っているかな」

 ダゴンが背負い袋から、毛布を取り出してあたしにかけてくれた。


 最近はあたし専用の毛布になっている、これは多少臭うがとっても暖かい。

 爆水中のあたしは、ムニャムニャと寝言でダゴンにお礼を言った。


 ダゴンは「フフ」と笑い、集めてきた木の枝を重ねて火をつけた。

 漆黒に染まる森の中に、小さいが暖かい光が漏れ始めた、


……夜に覚めた……


 ダゴンはたき火の前に座っているが、どうやら眠っているようだ。


 ここしばらくの。ダゴンと一緒の生活。

 起きている時も、眠る時も、ご飯を食べる時も一緒。

 一人っ子でお父さんが長期出張で、あたしは男の人とこんなに一緒にいる事なんてなかった。


 ダゴンはあたしを女の子とは見てない


 でもあたしはそうはいかない、中学女子には大いに気になる。

 ダゴンの目の前で、着替えや身体を洗う事なんて出来ない。

 小川を見つければ顔と手くらいは洗うけど、ダゴンと一緒だとそれ以上はムリ。


「クンクン、三日間も汗をかきっぱなしというのは、女の子として如何なものか……フゥウ」

 あたしの大きなため息で目覚めたダゴン。


「うん? 自分の匂いを嗅いでいるのか? コボルトにマーキングでもされたか?」

 マーキング、縄張りを持つ動物がする行い、犬が電柱にするアレ。


「失礼な……でも自分の汗でマーキングしているのと変らないかも……」

「そうか? オレは全然感じないが……どれどれ」


 クンクンとあたしの匂いを嗅ぎ始めたダゴン。


「なにをするのよ! ダゴンやめて!」


 ダゴンに怒りのローキックを浴びせるが、あたしの細い脚では蚊に刺された程も感じない。


「うーん、どちらかと言えばコボルトの方が臭う」

「ダゴン、それ本気で言っているの!?」

「うん、アナトの方が臭いが少ない」

「ダゴン、ちょっとこっち見て」

「なんだアナト」

「ほら、ここよ」


 バシッ、身をかがめたダゴンの顔に今度はグーで全力パンチをおみまいする。


「イテテ、アナト何するんだ!」

「フン、知らない!」

 なんであたしが怒っているのか、理解出来ないダゴンは鼻を押さえながら首を傾げた。


「オレはアナトが怒る事をなにか言ったか?」

 プリプリ怒りながら、あたしはダゴンをキッと見た。


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