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地図にない国


「ハァハァ、なんとかなるかと思ったけど……甘かったみたい」


 気持ちだけでは、何ともならない事もあると初めて知った。

 気持ちは前に進むのに、身体は進む事をどんどん拒んでいく。

 転移の神殿を目指して暗き森の中を歩き始めて三日。


 歩くのに慣れるところか、筋肉痛になり疲労も溜まっていく。

 あたしの進む速度は遅くなる一方。

 そんなあたしのペースに合わせてくれているダゴン。


 大きな袋、大盾と黒い鎗を背負い、金色の重そうな鎧を着ている、

 あたしなら、ダゴンの持ち物は、一つも持てそうもない。

 それを軽々と運ぶダゴンを恨めしそうに見る。


「こういう時、脳筋はいいわね」

「何か言ったか?」

 視線を感じたダゴンが、あたしに再度確認してきた。


「おまえがバアルを探す為に、エールに行きたいというから近道をしているんだぞ」

「はいはい、分っているわよ。でも身体中が痛いの。腿なんかパンパンだし」


 エールにたどりつくため、ダゴンに頼み込んで進んでいる。


「まあ頑張れ。神殿まで行けばジャンプの魔法で一気にエールまで飛べるはず……たぶんな」


 大陸にはいくつかの移動用の転移の神殿があり、ジャンプの魔法で瞬間移動出来るらしい。


「ダゴン、一つ気になる事があるんだけど?」

「なんだ?」

「転移の神殿に行けば、ジャンプでエールに飛べるはずだ……そう言っていたわよね。なんか語尾にあやふやな言葉が続くじゃない? 神殿へ行けば飛べるはずだ……つまりたどり着いても、飛べるかどうか分らないって事?」

「そうだ、転移の神殿には守り人がいて、おまえをチェックする。もし資格がないと判断されれば、ジャンプは出来ない」


「え~そんなあ……その資格って?」

「この夢の世界では怪我や病気でも体力は減らない。食事もほとんど取る必要が無い。心が主な世界なんだ」

「う~ん、そのわりにはお腹が空くけど」

「それはお前が肉体に縛られているからだ」

「でもダゴンだって一杯食べるわよね」

「……でだ、ゴースでは心の持ちようで強くも弱くもなる。心の強さをエナジィと呼ぶ」


「ふ~ん、そのエナジィの強さが資格になるの?」

「そうだ。ただしエナジィは強さだけではなく色も関係ある」

「色って?」


「戦士には力の色、農民には実りの色、そして勇者には正義の色がある」

「あたしのエナジィが勇者の色ならいいのね」

「そうだ、おまえが勇者なら正義の色を持っているはず」


「でもエナジィって何? あたしはそんなもの見た事ないわ」

「やっぱり、闘気ともいうが……アナトはエナジィが感じられないのか?」


 ダゴンが赤い髪をガシガシと掻きむしって、大きなため息をつく。


「アナト……今すぐに訓練が必要だな。この鎧や腕に付けたリングはかなりのレアな装備だ。そしてお前が背負う剣は特別なもの。それだけ見ればおまえが勇者らしい事は分る。だがエナジィを持たない状態ではこの世界で戦えない」


 あたしの世界ではエナジィなんかない。急にそれが大事だと言われてもぴんとこない。


「はあ、そんなもんですかね」


 うかない返事に頭を抱えたダゴンは、ふとあたしの胸の黒い石と金色の石を目にした。


「アナト、珍しい物を持っているな」

「ダゴンはこれが何か知っているの?」

「黒い方は闇の国レイスで採れるダークベリルだな。金色のはゴッドパレスでエナジィを集約したムーンストーン」


「レイス? ゴッドパレス?」

「このゴース大陸には地図にない国がある」

「地図にない国? なんでそんなのがあるの?」

「地上に存在しないからさ。無いものは地図に書けないだろう?」


「はぁあ? よく意味が分らない。だって存在するんでしょう?」

「なんて言ったらいいのかな? 現代の世界ではそうゆう所は無いのか? 存在していると言われるけど、行くことが出来ない場所」

「うーーん、天国と地獄の事かなあ」


「そうか現代でもあるんだな。戻ってきた者もいる、でもそれが何処にあるのか、どうやったら行けるのかは分っていない」


 ダゴンの言葉にあたしは首を傾げた。


「天国と地獄は生きたままでは行けないよね……でもそういえば、生きたまま地獄を旅した人の物語があったかも」

「物語? じゃあ空想なのか?」


「そうも断言出来ないけど……ここでは地獄と天国は何処にあると言われているの?」

「次元の狭間、いくつもの世界が交わる場所に存在すると信じられている」

「もしかしたら現代と異世界は、その次元の狭間で繫がっているのかもね」


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